北見市のコースター走行中停止報道の愚



北海道北見市所有の遊園地「北見ファミリーランド」で6月24日、ジェットコースター「クレイジーマウス」(4人乗り)が走行中に停止するトラブルがあったことが、6日わかった。小学生2人が乗っていたが、けがはなかった。車輪(直径約20センチ、幅約5センチ)を覆う厚さ約5ミリのウレタンゴムが一部剥離(はくり)して車軸付近に挟まり、ブレーキがかかった状態になったという。

市観光・コンベンション課の山田孝雄課長は「けが人がなく、公表するか悩んだ。今後は利用者に安心してもらうためにも公表し、安全確認に努めたい」と話した。
朝日新聞より引用

「公表するか悩んだ」という北見市の課長もダメなら、報道した側もダメ!です。

社会保険庁による年金問題もあり、公務員の問題が大きくクローズアップされています。私は全ての公務員がダメとはいいませんが、ダメな公務員が多いとこの記事を読み再確認しました。

北見市の山田課長さん、自分達のことだけ考えるのではなく、他の施設への影響を考えなさい!そう叱責してあげたいですね。本当に困ったものです。

私はジェットコースターを知り尽くしていますが、このような「不具合」を公表する必要はないと考えます。月次で関連団体へ提出する報告書に掲載すればよいことです。
なぜならば、ローラー(車輪)のウレタンの剥離は想定の範囲内であるからです。なお且つ、列車と違いジェットコースターは上下と横の3つのローラーでレールを「つかまえて」います。

ですから、ローラーの一部が剥離しただけで事故につながる可能性は非常に小さいと言えるのです。実際にこのジェットコースターでも、乗客が安全に脱出できる場所に停車しています。

もう一つ。「公表するか悩んだ」とは何を意味しているのでしょう。そうです。事前に公表する基準を設けていない、ということを意味します。指導監督団体が取り決めた「公表基準」をご存知ないのかも知れません。
ディズニーランドやユニバーサルスタジオ・ジャパンの責任者が「公表するか悩んだ」と言った瞬間・・・降格人事でしょう。

この北見市がこのような「不具合」を公表し、全国紙が報道する。これで、全国の遊園地は「ウレタンの剥離」などによる走行中の停止を全て公表せざるを得ないことになるかもしれません。「北見市」が公表したことを他の「民間施設」が公表しなかったら「業務上の瑕疵(問題)」として、マスコミにたたかれる恐れがあるからです。

困ったものです。
ディズニーランドでは、不具合によってコースターなどが走行中停止することは「よく起きること」です。というより、小さな不具合を検知したらすぐさま「止める」ように設計されています。
安全のために意図的に「止まりやすく」しているのです。ユニバーサルスタジオ・ジャパンのコースターも同じでしょう。

この報道記事を読んだ人が、ディズニーランドやユニバーサルスタジオ・ジャパンのコースターの走行中停止に遭遇した時、「新聞に報道されて然るべき」と考える可能性もあります。

北見市のこの対応は今後の遊園地の運営に大きな影響を及ぼすことになるかも知れません。

さて、報道する方にはより大きな問題が潜んでいます。
第一に、知識不足です。故障、不具合、事故の区別がついていません。朝日新聞(アサヒ・コム)には写真まで載っているのですから、もう少しジェットコースターの構造や安全性などについての言及が欲しかったと思います。

このような、新聞記者の知識不足や原因を追求する姿勢は残念ではありますが、ある意味仕方のないことであると私は考えます。
年金問題もそうですが、日本政府も知って欲しいことしか「発表」しません。都合の悪い事は隠しています。そしてマスメディアは、発表通りに報道します。いわゆる「発表報道」であり、「調査報道」にはなっていません。これは記者クラブ制度の弊害であり、新聞記者の魂である「真実の追究」を行う能力を著しく低下させているものと言わざるを得ません。

最後に

こんなことがある企業のホームページ(トップページ)で公表されています。

「協力企業作業員の負傷について 」
平成19年6月26日午前9時36分頃、1・2号機サービス建屋1階の作業服着替所において、協力企業作業員が空調ダクトの換気口(壁面より突出、設置箇所:高さ約1.6m)に頭部をぶつけて負傷したため、業務車にて病院に搬送しました。
診察の結果、「頭部切創」と診断されました。
なお、本人は診察後、事務所に戻りました。
当該作業員に放射性物質による汚染はありません。

東京電力福島第二原子力発電所のホームページ

皆さんはこのプレスリリースを読みどのように感じましたか。

私には「ばかげている」としか思えません。これは労働災害に分類される事象です。

この原子力発電所の所長は「小さなことでも情報公開する」とおっしゃられていましたが、私はこれには異議を唱えたいと思います。
必要な情報、つまり原子力発電の「安全性」に影響を与える情報だけ公表すべきである、私はそう考えます。

ただ、私は原子力発電所関係者の気持ちは痛いほど分かります。ディズニーランドやユニバーサルスタジオ・ジャパン同様にマスコミにたたかれ、周辺住民の一部やいわゆる「ウオッチャー」という人たちから「重箱の隅」をつくがごとくの要求を突きつけられ続けた結果が、このような「つまらないこと」まで公表せざるを得なくなった理由であると容易に推察できるからです。

北見市はどういうつもりで「公表」したのかは分かりませんが、もしそれが自分たちの「保身」であるとすれば・・・

公務員であるだけに「他に与える影響」をもう少し考えて欲しかった、残念でたまりません。

                   

                                                    2007年07月07日