安保防衛懇:集団的自衛権見直しを提言、武器輸出三原則も

2009年8月4日 11時7分 更新:8月4日 12時36分

安全保障と防衛力に関する懇談会で勝俣恒久座長(左)から報告書を受け取る麻生太郎首相=首相官邸で2009年8月4日午前9時15分、藤井太郎撮影
安全保障と防衛力に関する懇談会で勝俣恒久座長(左)から報告書を受け取る麻生太郎首相=首相官邸で2009年8月4日午前9時15分、藤井太郎撮影

 政府の「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・勝俣恒久東京電力会長)は4日、年末に改定される「防衛計画の大綱」(防衛大綱)に向けた報告書をまとめ、麻生太郎首相に提出した。日本を飛び越えて米国へ向かう北朝鮮の弾道ミサイルの迎撃などを可能とするため、憲法で禁じられている集団的自衛権の解釈の見直しを提言。海外への武器輸出を禁じた武器輸出三原則の緩和も求めた。報告書を受けて政府は大綱の改定を進めるが、そのまま反映されるかどうかは不透明だ。

 報告書は、大きな柱の一つに、北朝鮮の弾道ミサイルに対する防衛策を設けた。米国へ向かうミサイルの迎撃以外に、ミサイル警戒に当たる米艦船が攻撃を受けた際に、自衛隊が防護することも認めるよう求めた。

 小泉内閣時代に報告書をまとめた前回の安保・防衛懇(04年)よりも踏み込み、集団的自衛権行使の必要性を明確に打ち出した。敵基地攻撃能力の保有についても、米国と役割分担を協議する前提で、「検討する必要がある」と明記した。

 武器輸出三原則に関しては、「日本の安全保障上の要請に適合する」場合は緩和すべきだと指摘。F35戦闘機などを念頭に、世界で進む共同開発から取り残されるリスクが高い点に懸念を示した。

 日本が持つべき戦略として、現大綱で打ち出した部隊や装備に多様な機能を持たせる「多機能弾力的防衛力」に加え、新たに「多層協力的安全保障戦略」という概念を提示した。日本の安全▽脅威の発現の防止▽国際システムの維持・構築--との3目標を、日本自身の努力や国際社会の協力などと連携させて達成するとしている。

 防衛力の役割としては、「存在による抑止」(静的抑止)から「運用による抑止」(動的抑止)を重視すべきだと提起した。

 安保・防衛懇は、北岡伸一東大大学院教授▽田中明彦同教授▽中西寛京大公共政策大学院教授ら6委員で構成。加藤良三前駐米大使ら3人が専門委員を務める。【仙石恭】

 ◆安保・防衛懇報告書の骨子

・弾道ミサイルに対応するため、集団的自衛権の憲法解釈見直し

・武器輸出三原則を修正し国際共同開発などを容認

・敵基地攻撃能力保有を検討

・日本の安全保障を確保するため「多層協力的安全保障戦略」が必要

・「存在による抑止」に加え「運用による抑止」を重視

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