骨内の腫瘍(しゅよう)が大きくなり骨を破壊するがん、骨肉腫。私の場合、腫瘍から出た血が骨内にできた空洞にたまっていた。
1月30日の手術は、左大たい骨の骨盤寄り先端から病巣部を、周囲の筋肉ごと取って人工関節に置き換えるもの。抗がん剤を投与するためのカテーテル(細い管)も胸から心臓近くの静脈に入れることになった。
その前日、「人工関節が外れるから、今後、あぐらを組めない。椅子の方がいい」と担当医に言われた。畳派の生活を変えねばならない。左脚が悪者に思えてくるが、これまで自分の体を支えてきてくれたと思うと、やり切れない。
午前8時半に手術室に入り、病室に戻ったのは午後9時半。全身麻酔のため手術の記憶はない。大たい骨を約20センチ切除し、体温は38度台。体を動かそうとすると、左脚がきしむように痛み、身動きがとれなかった。
それでも、山を越えたと思うと安心した。担当医も「見えるがんは退治した。これからは見えないがんを化学療法で退治します」と話した。
手術の2日後、息を継ぐのもしんどくなってきた。肺から空気が漏れていたのだ。<社会部・佐々木雅彦(43)>
毎日新聞 2009年8月4日 地方版