2008-10-21
■実生活でも使えるディベートテクニック
今週の土曜日にワタクシが学生時代に所属していた組織のディベート大会があり、後輩の指導・試合のジャッジ(判定員)としての活動などで動き回っておるのですが、ディベートのテクニックというか、基礎的な考え方というのは、一般生活でも役立つものが結構あります。今回はそういうものを書いていきたいと思います。
主張には論証で
発言を通して主張する場面があります。会社では「研究開発費にお金を使うべきだ」「新卒採用に力を」といった戦略的なものや、個人的な「本社に転勤させてください」「内勤にしてください」といったもの。あるいは家庭内で親に「車買って」みたいなおねだりや、「カレーライス食べたい」みたいな願望に関する主張。様々な場面があることでしょう。
そういった主張には論証をつけると説得力が増します。
「論証」を構成する文字を分けてみると、論理と証明。主張には論理と証明をつけるとうまくいきます。話が正しいという筋道と、話が正しいという証拠の両方があるといいのです。
具体的にどういうことかというと、例えば、仲間3人で何を食べるかという相談をしたとします。何となく中華を食べる空気になっていたとします。そこでワタクシは「今日は中華を食べたくない」という主張をします。その際に「昨日の夜も中華食ったから、今日も中華はイヤなんだよねー」と付け加えるのが論理です。「連続で中華はイヤだよね」という前提を使った論理です。
また、その際に携帯で撮った食事風景をみんなに見せたとします。コッテリとした料理が並んでいる写真です。これが証拠です。「昨日の夜も中華食ったから……」という話の裏づけとなるわけですね。あるいは「この前、食あたりで入院したじゃん」なんかもそうですね。中華が続くとヤバイということを支える事実です。
話の筋道があって、証明をした。それに伴った主張もある。こうなると、周りとしては「じゃ、中華はやめようか」という話になります。主張・論理・証明は三点セットなのです。
三点セットは欠けてはいけない
逆に言うと、この三点セットのうち、どれかがないと、話の正当性が弱くなります。突っ込む余地が出てきます。
主張がない場合
主張がなければ「……で、どうしたいのよ!」という話になります。論理がある。証拠は出てきた。しかし何をしたいのかわからない。これだと聞かされる側はたまりません。
ましてデータなんかは、基本的には無謬性です。それ単体では意味を持ちません。日本の人口というデータだって、比べる対象が中国・インドでしたら「日本の人口は少ない」となりますが、韓国や台湾、香港と比べれば「日本の人口は多い」となりますよね。同じデータでも、比べる対象が違うと、データから導き出せる答えも変わる。つまりデータっていうのは、それとセットする主張によって意味合いが決まるわけなんです。
だから、主張がないというのは、データなんかが宙ぶらりんで、それがどういう意味合いなのかわからない。結論が出てこない。そういう消化不良な結果を招きます。
論理がない場合
「中華はイヤだ」と主張し、昨晩の料理写真を出したとしても、それだけじゃ何のことかわかりません。これまた「で?」という話。何でそういう主張につながるのか。何故そういう写真が出てきたのか。周りは意味がわかりません。主張と証明の間がリンクしないのです。唐突過ぎて意味が通じないのです。
……もっとも、これを「理解しろ!」という妙な文化が日本にはありますがね。「空気を読め!」というヤツです。
証明がない場合
証明がない場合、論理の信憑性が低下します。「昨日の夜も中華食ったから……」と言われても、「本当?」というケースもままあるでしょう。証拠がなければ、いくらでもウソつけますからね。ウソをついてないという証明が必要なわけです。
不動産屋さんで賃貸物件を契約するときに、お金払えますと言う。会社員で定期収入があると言う。「会社員だから家賃が払える」というのは論理なわけですが、それは証明されていない。前年度の納税証明書や、会社への在籍確認を経て、初めてその人の「家賃が払える」という論理が信用されるわけです。証明がないと、論理に対する信用がなく、従って主張も信用されません。
論証を崩せば、主張も崩れる
逆に人の主張を崩す立場になった場合、主張を崩したい場合は、主張そのものを崩す必要はありません。その主張の裏付けである論証、つまり論理か証明のいずれかを崩せば十分です。
例えば先ほどの食事の話ですと、「昨日の夜も中華食った」から今日はイヤだという話なわけですが、しょっちゅう連続で中華を食べているヤツには、この論理は通用しないわけです。「連続がイヤだって言うけど、しょっちゅう連続してんじゃねえか」と。連続がイヤという論理なので、連続している事実を突きつければ、連続を理由に中華を否定する根拠がなくなるわけですね。
あるいは料理写真が昨日のものではないと。1週間前のものであったと。こういう場合もガタガタになります。この場合、ウソの証拠を使った。偽装証明をしたわけで、論理に対する信用がなくなります。「ウソだろ」「インチキだろ」ということになります。
不動産屋さんの賃貸契約のケースで、AさんはB社にいると言った。B社に電話かけたら、Aなんてヤツはうちの会社にいないと言った。この場合、本当に家賃を払えるかどうか疑わしくなりますよね。証明が破綻すれば、主張も破綻します。
主張を構成する論証は何か。その論理と証明は正しいのか。また、その論理と証明に弱点はないのか。こういう視点で考えると、何かとスッキリするのではないかと思います。
主張の巧拙を決める3要素
ディベートでもプレゼンテーションでも、基本的にはこの3要素です。
話が筋道だっていて、正しいという証拠を伴い、尚且つ聞いていてわかりやすい。こういう主張が理想です。
結起承結
そのための構成は、日本風に言えば結起承結です。最初に結論を言います。そしてそれを受けた話をつなげ、最後にもう一度結論で締める。こういう構成がいいです。
日本では「起承転結」といいますが、何かを主張するのに転はあまり必要ありません。転はおもしろい話をするとき、聞かせるとき、読ませるときに必要な要素であって、何かを相手に伝えるとき、伝えることが明確な場合は、あまり必要な要素ではありません。小説なんかの物語にいい手法であって、大学のレポートや論文、ビジネス文書に適したものではありません。
端的にまとめることが要求されるものの場合、最初に結論がある方がわかりやすく、相手にも喜ばれます。メールやブログでも、タイトルである程度内容がわかる方がラクですよね。そういうことです。
AREAの法則
欧米チックに、もっとカッチョ良くいうと「AREAの法則」となります。
- Assertion----主張
- Reason-------理由
- Evidence-----証拠
- Assertion----主張
最初に主張、言いたいことをガツンと言い、それの理由を述べ、その理由に付随する証拠を出すと。そしてもう1回主張で締めるという方法。
プロポーズ
新システム導入
おこづかい値上げ
など、このメソッドは、暮らしのほとんどの場面で使えます。主張の後に「何故?」という部分を解消する理由・証拠を付け加える。これが基本。このメソッドを使えば話がシンプルになりますし、単純明快でいいのです。
以上、簡単に実生活でも使えるディベートテクニックをご紹介しました。是非お役立てくださいね。
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