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きょうのコラム「時鐘」 2009年8月4日
香りや臭いは、失われた記憶を呼び戻す。宇宙飛行士の若田さんの「ハッチが開いた後、草の香りがシャトルの中に入ってきた」との話が印象深い。色々な香りの記憶がよみがえった人も多いだろう
熱くやけた夏の砂浜のにおい。日照り続きで乾いた土に雨が降る瞬間に広がる地表の香り。あるいは、夏の日の雨の冷気には、ふと遠い日の記憶がよみがえる。信州の小諸市駅前にはリンゴの香りが漂っていた。近くに城があり「小諸なる古城のほとり」の詩が浮かんだ 九州や北海道では、強い硫黄のにおいで、観光客を迎える温泉地もある。都市の持つ香りは「街の財産」だろう。目に見える景観はだれもが厳しく採点するが、見えない香りも都市の印象を決める大切な要素である 外国へ行くと空港で、その国の臭いが機内に入りこむ。中国や中近東は強烈だ。日本の臭いは日本人には分からないが、魚の臭いがすると言う外国人が多い。人間の欠点同様、自分の臭いは自分では分からない 物ごとに慣れて最初の感動が薄まると嗅覚も弱くなる。宇宙の土産話のエキスは地球の足元にあったように思える。 |