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  • 裁判員裁判・弁護側冒頭陳述要旨  

     東京地裁で3日開かれた裁判員裁判初公判で、弁護側による冒頭陳述要旨は次の通り。

     【起訴内容について】

     (1)争わない。

     (2)殺意の内容はナイフで刺す行為で死ぬかもしれないと認識していたにすぎない。

     (3)殺意の程度については被害者が死ぬことまでは望んでいなかった。

     【被告の人物像】

     年齢 犯行時71歳

     出身 東京都足立区梅田

     家族 1994年離婚し、犯行時独居

     住居 本人所有

     学歴 小学校卒

     職歴 工員、運転手、古新聞回収

     職業 犯行時無職で生活保護

     趣味嗜好 競馬(平日の公営競馬)飲酒

     健康 白内障、疥癬(伝染性皮膚病)

     【紛争の概要】

     (1)被害者と被害者の家族は長年バイクなどを複数台所有し(斜め向かいにある被告方との間の)幅約2・3メートルしかない道路を一部ふさいでいた。

     (2)被害者は道路にはみ出して植木鉢を置き、道路の一部の通行を邪魔していた。

     (3)被害者は植木の水やりの際、耳障りな騒音を立て、注意してもやめなかった。

     (4)被害者は使用するスクーターを方向転換するため、被告方の庭に無断で入ることがしばしばあった。

     (5)被害者はスクーターを方向転換する際、被告が猫よけのため庭に置いたペットボトルを倒したり、つぶしたことが何度かあったが、直そうともしなかった。

     【被告と被害者の過去のやりとり】

     被害者は被告の抗議や注意に対しても謝ることなく、逆に怒鳴り返した。近所の人からは、被告が被害者に言い負かされて逃げて帰ったとうわさされたこともある。ここ数年は被害者となるべく顔を合わさないようにしていた。

     【犯行までの行動】

     (1)被告は事件前日、深夜まで酒を飲んだ。

     (2)当日も競馬場に行く予定で出掛けようとした。

     (3)被害者が玄関先の植木の手入れをしており、顔を合わせたくないので被害者が家に入るのを待った。

     【被害者の犯行誘発行為】

     (1)被害者がいなくなっただろうと外をのぞいたら、目が合ってしまったので被告は外へ出て「ペットボトル倒したら直しておいてくれ」と注意した。

     (2)被害者は謝らず、逆に怒鳴り返した。

     (3)両者怒鳴り合いとなった後、被告は被害者が謝罪しないことに腹を立て、自宅に引き返してナイフを持ち出し、被害者に見せた。

     (4)被害者がひるまずに被告の肩などにつかみかかろうとしたため、被告は「刺すしかない」と思い、被害者の左胸上部辺りを刺した。その後は被害者も抵抗し、被告も興奮してナイフで数カ所の刺し傷などを負わせた。被害者の背中から心臓の肺動脈付近を刺したことは明確な記憶がない。

     (5)被告は「人が死ぬかもしれない行為を行っているという認識はあったが、被害者に死んでほしい」とは思わなかった。

     【犯行直後の状況】

     (1)被害者ともみ合いになり、背中から倒れて指やひじにけがをした。

     (2)被害者は近所の家の前まで逃げ「殺される」「人殺し」と叫んだ。

     (3)被害者の声を聞いて、被告は「取り返しのつかないことをしてしまった」と思った。

     (4)検察官の主張するように被害者を追いかけてはいない。

     【犯行後の経緯】

     (1)被告は出頭しようと考えた。

     (2)逮捕された後の家の後始末を頼む人間が必要と考え、競馬仲間に会いに競馬場へ行ったが、誰とも会えなかった。

     (3)小学校の友人を訪ね、友人と警察署に向かう途中に逮捕された。

     【量刑上考慮すべき事情】

     (1)被害者側に主に原因がある紛争が事件の発端で、被害者は犯行を誘発する言動をした。

     (2)犯行は突発的で計画的ではなかった。被告は被害者の死を望んでおらず、執拗にとどめを刺すような行為もしていない。

     (3)警察に任意出頭しようとし、逮捕後は素直に事実を認めている。

     (4)遺族に対する被害弁償の意思があり、反省している。

      【共同通信】
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