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社説:衆院選・民主マニフェスト 「脱官僚」の約束は重い

 有権者への重い「約束」である。次期衆院選に向け民主党はマニフェスト(政権公約)を発表した。鳩山由紀夫代表が掲げる「脱官僚」政治の実現に向け、事務次官会議の廃止に踏み込むなど政権構想を打ち出した。五つの政策重点分野を掲げ、実現の工程表と同時に、財源対策の内訳を示した。

 政権交代が現実味を帯びるなか、党公約は「鳩山政権」実現の際の指針となるだけに、極めて重要だ。政治を変える意気込みが伝わる一方で消費税に関する記述がほとんどないうえ、外交・安全保障も具体性に乏しく説得力を欠く。さらに国民に説明を尽くすべきである。

 公約の目玉は、政治主導に向け政府と与党を一元化する構想だ。首相直属の国家戦略局を設け予算の大枠を決めると同時に、行政の無駄を見直す刷新会議の新設を約束した。

 各省次官が政策を事前調整し、閣議の形骸(けいがい)化をもたらす事務次官会議の見直しは評価できる。だが、複数の閣僚が政策を調整するという「閣僚委員会」のイメージはあいまいだ。次官会議も、別会議への衣替えで官僚が権限温存を図るおそれがある。新構想の具体像とスケジュールをより、明確にすべきである。

 重点政策は「子ども手当」の満額支給や農家への戸別所得補償をともに11年度実施に当初予定より前倒しした。高校生の授業料支援、高速道路の無料化などアメがふんだんにちりばめられた。重点政策を複雑な税控除ではなく手当の給付で行う方向をいちがいに「バラマキ」と批判すべきではあるまい。

 だが、新規施策の財源16・8兆円をムダ削減や埋蔵金の活用などでひねり出すとの説明には、より裏付けが必要だ。特に消費税に関しては、最低保障年金構想の財源として記すにとどまり、鳩山代表の「4年間引き上げしない」方針すら記されなかった。これで責任政党とは言い難い。

 外交・安保も不満が残る。日米地位協定改定を従来の「着手」との表現から「提起」に改めるなど、対米関係の安定に配慮した「現実路線」を反映した。しかし、各論はほとんどふれずじまいである。従来外交の発想転換が求められる中、鳩山外交が何を志向しているか、これでは不明だ。

 とはいえ、全般にメリハリに気を配り、子ども手当に伴う各種控除の廃止も明記するなど、03年衆院選に始まったマニフェスト選挙の成長を示す内容であることは評価したい。それにしても、自民党の公約作りは遅い。他党の政策を「ぶれた」と批判ばかりしておらず、早急に所見を国民の前に示すべきである。

毎日新聞 2009年7月28日 0時06分

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