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世迷言

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☆★☆★2009年08月02日付

 老朽化や廃業、転業などで取り壊された工場などの空き地がサラ地となったまま放置されている。放置されているわけではないのだが、売れずに残っている。そんな光景を見て愚考した▼当方がまだ小中学生時代のことだから、これといった産業もなく、なんとか暮らしていたというのが家庭生活のレベルだった。だから遊休地も多く、自然の広場として子どもたちの遊び場になっていた。テレビもゲーム機もない時代、子どもたちの遊びといえばもっぱら野外での集団ゲームなのだ▼その広場でのチャンバラごっこやバッタ(メンコ)、騎馬戦、タガ回し(文字通り桶のタガや自転車のリムを回す)、S字回戦(Sの字を書いて敵を引っ張り込む)、陣取り、釘ぶち(五寸釘を地面に刺す)、ビー玉、おはじき、竹馬、缶蹴り、ガッコ乗り、馬ッコ乗りなどなど、それなりに工夫をこらした遊びに夢中になり「どこでのっつお♂zえて(我を忘れて)遊んでだんだれ」と怒られたもの▼そうした広場も経済成長に伴って次々と消えていき、やがて当然のように野外の遊びも減っていった。年寄りが当時のそんな遊びや光景を懐かしんでもせんのないことかもしれないが、これからの子どもたちにあのような楽しみを与えることはできないかと考えて、ふと、そのための広場が用意され出したのではと思ったのだった▼空き地の所有者には迷惑な話だが、こうした広場を活用すれば、日本の精神的再生は可能になり、すると少子化にも歯止めがかかると思うのは妄想だろうか。

☆★☆★2009年08月01日付

 昨日は久しぶりに快晴だったが、風が冷たく上着が欲しいほどだった。七月末にこの調子だから農作物などへの低温被害が心配で、「寒さの夏はオロオロ歩き」とならぬよう祈るばかり▼長梅雨だ。四国ではやっと明けたが昨年より二十五日も遅かったという。東北南部にいたってはいつになるのか。かっては「梅雨明け宣言」をしたものが、近年は「明けたと見られる」と控えめになったのは、気象予報というものがそれだけ難しいということなのだろう。今年は特に難しそうで、予報がはずれるのはザラ。気象庁も頭を痛めているだろう▼低温被害は農作物にだけ及ぶわけではない。海水浴場にとってこれは致命的である。関係者は気をもんでいるだろう。書き入れ時の本日と明日を海水浴日和にするために小欄の念力をもって見事に夏本番にしてやろう▼むろんそんな念力を備えているわけではない。ただこれまでの経験だと、「寒い」と書くと次の日は暑くなり、暑いと書くと一転して寒くなることが往々にしてあったからだ。気象がいやがらせをしているわけでもあるまいが、にわか予報官をあざわらうような仕打ちをされるのである▼よって、このデンをもってして「冷夏か?」と書けばどんでん返しに暑い夏になりそうな気がするのである。などと与太話をしても笑われるばかりだが、例年なら西の方から徐々に明ける梅雨が、今年は四国から先ほぼ同時に明けそうに思えてならない。その根拠は?「希望的観測」というやつである。

☆★☆★2009年07月31日付

 二十歳をもって大人とするか、十八歳をもって「元服」とするか、大袈裟にいえば日本の歴史的転換が問われている。社会構造が変われば価値観も変わるのだろうが、いずれにしても子どもを大人にするのは大変だ▼法相の諮問機関である法制審議会に設けられた民法部会が、十八歳をもって成人とするという最終報告をまとめたのがそれである。これは国民投票法が原則十八歳を投票年齢としたことから、同部会がその整合性を求める形で検討してきた▼結果、成人を十八歳とするのが適当という見解がまとまったもの。ただし民法の改正に至るまでには曲折が予想され、最後は国会の判断に委ねられることになりそう。十八歳を成人とする国は世界全体の七割に及び、それが趨勢といえばそれまでだが、しかしにわかに判断できかねる問題があることも事実▼たとえば親の同意なしに高額商品を買ったり、不動産取引ができるようになると、一家を破滅に追いやるような事態や、悪徳商法の横行などが想定される。馬券の購入も十八歳で解禁となれば、家庭争議の種にもなりやすい。自力で学資を稼ぐのが当然といった成熟国家ならともかく、二十歳までスネかじりするのが「伝統」の国ではたして自立は早まるだろうか▼十八歳から酒もたばこも許されるというのは除外されそうだが、筋は筋としても改正が実は改悪となる可能性が少なからずあるのなら、現状維持でいいのではないかというのが保守頑迷の意見である。

☆★☆★2009年07月30日付

 日本人の平均寿命は八十三歳(07年時点)で、世界一を維持した。長寿国というのはそれだけ暮らしやすいことを意味する。何より戦争がなく、衣食住が安定しているということを抜きには考えられないからだ▼現に長い内戦に苦しんだアフリカのシェラレオネのそれは四十一歳。不惑を過ぎたらこの世にバイバイなのだ。ただし首位維持も女性のおかげで、こちらは八十三歳だが、男性は七十九歳と世界三位に後退している。こうなると男性が傘寿を迎えられるのはラッキーとなってくる▼どうしてこう差がついたのか。小欄の観察では、それは人生の楽しみ方の相違という気がする。団体旅行といえば、昔は男性が主体だった。だが、現代はどんなツアーも圧倒的に女性上位で、男性はわずかに数人がのこのことついていっている始末。多分世上では「亭主元気で留守(番)がいい」ということになっているのでは?▼なにせ定年離婚という言葉もあるくらいだ。カアチャンのご機嫌をとるためには「お前行っておいで」となるのか。まったく科学的根拠を欠く推論だが、実際同級生たちの集まりを見ると、女性たちの若いこと。男性が例外なくしょぼくれているのに、向こうはまだ一花も二花も咲かせたいといった趣きがある。この差こそ寿命の差だろう▼国際化という一面も見逃せない。テレビや映画で世界のセレブを見て「自分もああなりたい」と化粧品を買う女性と、現実にうちひしがれてコップ酒で憂さを晴らす男性とのその違い。世の男性諸君、これでは差が広がるばかりですぞ。

☆★☆★2009年07月29日付

 九州や山口県における豪雨被害を見ると一時間に100_以上の降雨量に達している。これで被害が出ない方がおかしく、実際多くの犠牲者を出し、家屋や道路の被害もまた甚大だった▼なんでこんな「モンスター豪雨」(勝手な造語だが)が降るのか、それが天災というものだと言われればそれまでだが、これが地球温暖化との関係があるのかどうか、大いに気になるところである。先日はテレビでグリーンランドの氷床が溶けていくさまを見た。明らかに気温が上がっている証拠だ▼その結果の問題点や逆に新たな経済効果などが報じられていたが、厚い氷の壁が崩れ落ちていく光景は、いわば万年氷の世界に異常が起きていることを物語り、不気味なものを感じさせられた。県下でもっとも降雪の少ない当地だが、もし冬季に一度も降雪がなかったら誰もが不安を感じるようなものである。ただ地球温暖化は、高炭素化のみによってもたらされるのだろうか▼その点が小欄の抱く疑問である。確かにすさまじいエネルギーの消費によって温室効果ガスが地球を覆いつつあることは間違いあるまい。しかし地球が生まれてこの方気候というものは暑さに傾いたり寒さに傾いたりしてきたはずである。そうしたサイクルというものは人知を超えたものがあろう▼むろん温室効果ガスの排出を抑える努力は必要だ。少なくとも原因の一つとして挙げられている以上、真剣に取り組むべきだが、同時に気候の変化というものを科学的に検証することも大事であり、その研究がこれから熱を帯びてくるだろう。

☆★☆★2009年07月27日付

 昨日投票が行われた住田町長選挙では、過去二期連続無投票当選をしていた現職の多田欣一氏が、手堅い支持で三選を果たした。若手新人候補との激しい舌戦を制した勝利を祝福し、競争選挙になったこと自体も高く評価したい▼過去二回の無投票当選では、ある意味全幅の負託を受けた点で、今回とは違った重みがあると思う。そうではあるものの、長い前哨戦と五日間にわたった選挙けんぱ戦を通じ、犬馬の労もいとわず活動してくれた支持者の有り難みというものは、競争選挙ならではのものがあるだろう▼勝利の喜びは、支持者とともに十分に分かち合ってほしい。同時に、相手候補の主張の中に、施策に反映できるものがないかどうか。吟味してもらうことができるならば、競争選挙の意義がさらに深まることになろう▼急速な人口減下にある同町にあっては、ホッと息つくひまもない課題が山積している。国政には大きなうねりが生じ、県財政も厳しさを増す中での町政の舵取りはますます難しくなる。三選後、改めて表明することになる「自立」の旗印とともに、課題によっては広域協調との調整も求められよう▼初陣の新人候補が、敢然として最後まで自分の主張をかかげた勇気も賞賛に値する。三国志の英雄・劉備は「大業をなすには、何よりももと人をもって本となす」と言った。改めて両陣営の健闘をたたえ、人材を基本とした“住み田い町”のいっそうの展開に期待したい。

☆★☆★2009年07月26日付

 いただいたワインを一口含んだらかなりの甘口。人間が甘いから反対の辛口が好きで、これはかなわんと見回したら、これまたいただいたウオッカが残っていた。これをブレンドして辛口にしようと試みたのだが…▼妙な味がした。ワインでもなくかといってウオッカでもない。カクテルにはうといので、ウオッカベースのそれはないかとネットで調べると四十六ものレシピが載っていた。有名な「スクリュードライバー」以外はすべて初見で、この二つの組み合わせは見つからなかった▼なぜなのかと考えてみて思い当たった。ナポレオン以来露仏は敵同士なのである。フランス人はウオッカに「ノン」といい、ロシア人はワインに「ニエット」というのは当然だろう。だが、実は違った。レシピを読み進むとウオッカとブランデーという組み合わせがあるのである。要するに蒸留酒と醸造酒とでは肌が合わないのだろうか▼確かに日本酒と焼酎をブレンドするという例を寡聞にして知らない。ビールで始めて日本酒に代え、時にはワインもやって二次会では焼酎やウイスキーの水割りにするという「胃内ブレンド」はするが、それはあくまで時系列的なもので、最初から許されるのは焼酎のビール割りぐらいなものだろうか▼新しい味を求めるこの小実験はかくして失敗に終わったが、そんなことでくじけてはいけない。今度は日本酒とワイン、ウオッカという実験をしてみよう。またも酒の話で済みません。

☆★☆★2009年07月25日付

 クリントン米国務長官が北朝鮮を非難して「子どもがダダをこねているようなもの」と評し、その軍事力についても「何ら脅威ではない」として度重なるミサイル発射なども、単なる示威行動と片づけた▼つまり世界の関心を引き、今後予想される六カ国会議などの外交交渉を有利に導くためだろうとの解釈だが、そう見透かされては北とて面白くない。クリントン長官を「そこいらにいるおばさんと同じだ」と悪態をつき、六カ国協議などには応じてやるものかと強気だ▼しかし国連の安保理決議による制裁措置がこれからジワジワと効いてくることは明らかで、それでなくとも苦しい自国経済は国民の憤懣をいっそう募らせているだけに、何らかの形でそのはけ口を求めるようになるだろう。ガス抜きの常套手段は外部の脅威をあおり国民の目をそらすことにある。このためこれからどのような示威行動に出るか注目する必要がある▼米国にとって確かに北の脅威は取るに足らないものかもしれないが、核弾頭のまぎれもない射程距離にある日本、韓国両国には大いなる脅威になり得る。事実ミサイルの照準は両国に向けられており、ある意味で両国は人質に取られているに等しい▼こんな想定はしない方がいいかもしれないが、もし米国が北に対して軍事行動に出るようなことがあれば、北は「日韓に核をぶち込む。それでもいいか」というカードをちらつかせるだろう。その時日本はどうするか?こういう安全保障を真剣に考えるときだ。

☆★☆★2009年07月24日付

 日銀は、個人の資金需要が落ち込んでいると発表したが、需要そのものが落ち込んだのではなく、借りること、使うことをためらわせるものがあるからで、それはズバリ先行きに対する不安だろう▼消費が上向くのは、景気がよく収入が増えるという前提があってのことだが、その景気をよくするのは消費財、生産財が売れることだから、それはニワトリとタマゴの関係にある。どちらが先かといえば、消費者が財布のヒモをゆるめることが先だろう。しかし先行きに不安があれば、「待てよ」と思いとどまる▼バブルがはじけて、土地神話が崩れ日本経済全体が金余り現象から一転して金欠状態となった。手痛いヤケドを負ってみると、「あつものに懲りてナマスを吹く」ようになるのは自然で、以後政府が景気回復のためにどんな財政出動をしようと本復せず、不況の長いトンネルをいまだ抜け出せずにいる▼世界に冠たる貯蓄民族ができあがるにはそれなりの理由がある。それは他人に迷惑をかけたくない、お世話になりたくないというモラルがしみついているからだろう。後藤新平がいみじくも言った「人のお世話にならぬやう」の精神が民族の原点にあるためだ。長い鎖国が自前経済を培ったこととそれは無縁であるまい▼少子高齢化、年金の破綻、雇用の不安定等々明るい材料がさっぱりない状況では、誰が太平の春を謳歌できるだろうか。おまけに政治が足を引っ張っている。来るべき総選挙が明るい道筋をつけられるかどうか、それが景気回復を占うカギの一つであることは疑いない。

☆★☆★2009年07月23日付

 四十六年ぶりという皆既日食を見ようと、昨日は日本列島がこの天体ショーに釘付けとなったが、誰かの嫉妬に遭ってお天道様は姿を見せなかった。天の岩戸をこじ開ける役者が不在だったようだ▼この日の天気予報は沖縄、九州から主に日本海側は晴れ、関西以東は曇り空とあって、半ば観測は諦めていたが天気は気まぐれ。もしやとビデオカメラを据え付け、準備だけは整えていた。そろそろ日食が始まるというのでテレビをつけ、各地の生中継に注目すると…▼なんとしたことか。国内で最も長く皆既日食が見られる場所として人気を集め、島民の三倍以上が訪れた鹿児島県トカラ列島の悪石島の様子がおかしい。この日のために大枚をはたいてテント村に泊まり込んでいたツアー客たちが吹き荒れる雨と風の中を右往左往しているではないか。第一陣など十九日に到着し、この日を待ちかまえていたのに、ああ無情、ホテルのスイートルーム料金でテント暮らしを余儀なくされるハメとなったのだ▼もう一つの適地とされた屋久島も同様雨にたたられ、ただ真昼の暗黒だけを体験するだけに終わったよう。国内外で中継された中で皆既日食と金環食を満喫できたのは中国の成都、重慶その他、海上では硫黄島、そして太平洋での観測クルージングなどで、日本列島はさんざん▼四十六年前に体験しているのだからまあいいさ、とカメラを片づけ、テレビ観測に切り替えたが、それにしてもこの好機をカメラに収めるはずだった人々は、腹の虫が治まらずにいるだろう。


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