和歌山県九度山町で生まれ育った鉄田憲男さん(55歳)は、奈良の地方銀行に就職してはじめて奈良にやってきました。「奈良の人は、寺社仏閣が近くにあるのがあたりまえ。幼い頃に遠足で嫌というほど何度も連れて行かれ、その魅力や価値に気づかない」と嘆きます。遷都1300年祭を控え、県民に「もてなしの心」を持ってもらうにはどうしたらいいか・・・そんなときに見つけたのが「ブログ」という手段でした。「文章ならば得意だし、いろいろ考えていることもある」とのめり込み、一日およそ600人が訪れる人気ブログに成長しました。ブログをきっかけに、遷都1300年祭に向けて盛り上がりつつあるNPO活動の審査会の審査委員を頼まれたり、県庁が立ち上げた「うまいものづくりプロジェクト」に参加したり、人とのつながりは、大きく広がっていきます。「来た人みんなに、奈良を好きになって帰ってもらいたい」・・・鉄田さんの情報発信は大きな目標に向かって、こつこつと続いていきます。
今、校庭の芝生化が全国で注目されています。その普及拡大の一翼を担っているのが「鳥取方式」と呼ばれる新たな芝生化です。日本で芝生と言えば綺麗な庭園や競技場を想像します。芝生が傷むからとの理由で立ち入り禁止や利用制限があるのが常です。一般人にとっては敷居が高く、こうした状況が「芝生は高価で維持管理が大変」という芝生に対する固定観念を日本人の中に自然に植え付けてきたのかも知れません。そんな日本の常識に風穴を開ける人物が現れました。鳥取市在住のニュージーランド人ニール・スミス氏です。彼は6年前にNPO法人を立ち上げ、鳥取県が管理していた2万平方mの牧草地を借り受け、地域住民と芝生専門の大学教授の力を借りながら、安価で維持管理が容易な新たな芝生化のスタイルを確立しました。そして全国の校庭を芝生化しようと踏み出したのです。「校庭は土であるべき」という声や行政の壁にぶつかりながらも、彼は地道に賛同者を増やし、全国各地に鳥取方式による校庭の芝生化が広まりつつあります。ニール氏の情熱と気概、校庭の芝生化が地域住民や子どもたちの心身両面に何をもたらしたのか?各地の事例を元に探っていきます。
世界的な大不況。自動車産業が盛んな愛知県三河地方も一気に景気が悪くなりました。こうしたなか三河地方にある岡崎市では地元の会社を中心に異業種が一体となった地域ブランド「サムライ日本プロジェクト」が注目されています。仕掛け人は長髪で派手な服装、一見ヤンキーにも見える男・安藤竜二さん(38歳)です。岡崎市は徳川家康生誕の地として栄え、八丁味噌、花火、和ろうそくといった伝統地場産業が残っています。「地域に埋もれた昔からある名産品を世に送り出し、地域を元気にしよう。」安藤さんは三河地方の名産品を、三河らしくサムライを意識したデザインの「サムロック」というブランド商品へと新装し、全国へ発信しています。地場産業の衰退、不況、そして病。人それぞれ様々な悩みを抱えながらも、前に進もうと奮闘する現代のサムライたちを追います。
不登校や引きこもり、障害などで学べなかった人たちが勉強をやり直そうと集う高知市の自主夜間中学校。全国で唯一の公設民営の夜間中学校です。運営するのは鍼灸師の山下實さん54歳。「学びたい心・・・。それが入学資格」と、学ぶ意欲のある人に門戸を広げています。山下さんのモットー、それは生徒と同じ目線で考え、考えを否定しないことです。生徒の苦しみや悩みが少しでも共有できるからだといいます。これまでに延べ200人が卒業しました。卒業生は、山下さんを本当の父親のように慕っています。現在、夜間中学に通うのは小学生から53歳の社会人まで16人。ネットでいじめにあい不登校になった子、校内暴力で教師から匙を投げられた子もいます。生徒の心に寄り添う山下さんの努力と情熱、そして、自ら学び、学ぶ楽しさを知り、生きる力をつけようとする生徒たちの姿を追います。
山形名物の「玉こんにゃく」。その玉こんにゃくを使った商品を開発し、移動販売しているグループがいます。その名も「みちのく屋台こんにゃく道場」。メンバーは、全員が20代。調理から販売、営業まで、自分ができることを一生懸命にこなします。彼らを支えているのは養護学校の寄宿舎で指導員をしていた齋藤淳さん36歳。一般企業に就職してもなじめない卒業生のために働く場所をつくりたいと学校を退職して「こんにゃく道場」を立ち上げたのです。齋藤さんが移動販売にこだわったのは「地域住民と日々接することで社会の一員として自他共に認められる」「お客様とのやりとりで礼儀作法や接客マナーなど社会で生きるための力が養える」そして「住民が彼らを目にする機会が増え、同じ障害を持つ人たちに夢や希望を与えられる」この3つが大きな狙いです。自立に向け挑戦する知的障害者たちと、それを支える齋藤さんの「玉こんにゃく」に夢乗せた取り組みを見つめます。
かつての日本を代表する馬産地、岩手。その地でホースセラピーという新たな馬事文化の花を咲かせようと奮闘している人がいます。それが、今回の主人公・渡邉史朗さんです。渡邉さんは、30数年前に盛岡市で焼き鳥店を開業。経営に成功した渡邉さんは、その後、数多くの競走馬を所有する岩手競馬でも有名な馬主になりました。しかし、持ち馬の骨折を見たこと等により馬主をやめると、しばらく馬と無縁の日々を送ります。・・・渡邉さんが心筋梗塞で倒れたのは7年前。病で、生きる力を失いかけていた渡邉さんは、ふと「乗馬を始めてみよう」と思いたちました。馬に癒され、再び前へ進み始めた渡邉さんは、今、滝沢村「馬っこぱーく・いわて」の園長として、自らが体験したホースセラピーの普及に取り組んでいます。番組では渡邉さんと、自立への道を歩もうとする一人の若者の交流を通して、ホースセラピーの魅力に迫ります。
地域の世代間交流、さらには家族同士の交流も希薄になっている現代。石川県に、障がい者スポーツの一つ「電動車椅子サッカー」に情熱を注ぐ、車椅子のお母さんがいます。城下由香里さんは生まれ付き骨がもろく折れやすい病気があり、車椅子で生活しています。でも「電動車椅子サッカー」と出会い、家族や仲間とより強く心をつないできました。由香里さんは、電動車椅子サッカーを通して、家族やチームの仲間と一緒に、思いやりやいたわりの心を育んでいます。由香里さんにとって、どんな時も、家族と電動車椅子サッカーで出会った仲間達が心の支え。毎週日曜日、仲間や家族と一緒に、電動車椅子サッカーの全国大会を目指してがんばっています!そして、障がい者、健常者を問わず、様々な人たちとの新しい輪が大きく広がりました。お母さんとして、選手として、明るさと元気と勇気を心のパスに乗せて送り続ける城下由香里さんの人間力に迫ります!
全長15メートルのクジラがあげる、白い噴気。その迫力は、海の生き物の生命力を感じさせます。北海道・室蘭市の笹森琴絵さんは、荒れた海の上で、数キロ向こうにいるクジラやイルカを見つけることができる海洋生物調査員です。その腕前を買われ、国内外の調査に参加し活躍していますが、この世界に入ったのは意外なきっかけでした。彼女は15年前に病気で職を失い、順調だった人生が暗転しました。思い悩む彼女を救ったのが、故郷の海で出会ったイルカやクジラでした。厳しい海でたくましく生きる姿に力をもらったのです。元気になった笹森さんは今、イルカやクジラの魅力を伝え、彼らの暮らす海を守るのが使命と、海の環境教育に取り組んでいます。シャチ、ニタリクジラ、カマイルカなどを追いながら活動する笹森さんを通して、人と野生動物の魅力ある関係を探ります。
島根県出雲市湖陵町にある使われなくなった幼稚園。しかし中から聞こえてくるのは、子供たちの元気な声。2007年6月。元プロボクサーの長澤誠二さん(42歳)は、保護者や子供たちと一緒に廃園を改装し、アマチュアボクシングジム「大池ボクシングジム」を作りました。今では小学生から社会人までおよそ40人以上が通っています。「ボクシングには人を惹き付ける何かがある。ボクシングを通して人間として成長してほしい」。ジムには様々な問題を抱えた子供たちもやってきます。「不登校」「非行」など青春期独特の心の病。長澤さんは、そんな子供たちに対して正面から真剣に向き合ってボクシングを教えます。次第にボクシングにはまっていく子供たち。問題を乗り越えていこうとしています。かつてボクシングで夢を諦めた長澤さんは、ボクシングで新たな夢を見つけようとしています。子供たちの成長を通して長澤さんのボクシング、教育に対する思いに迫ります。