(改行と修正をいれました.8/1 11:00)
待ち合わせ場所に来た彼女を見て,内心私はすごく安心しました.
彼女のプロフィール写真の映りが悪いだけで,
どこにでもいる普通の女性だったということに.
それどころか,写真とは違ってメガネをかけていて,
そのメガネ顔が私の嗜好にピッタリはまりました.
(今ではもう,彼女がどんな顔してても関係なく愛おしいんですが.)
目つきや言葉遣いも自然で,
最初に店に入るまでのやりとりの段階で,
この前に結婚相談所を介して会った別の女性とは,
やはり縁がなかったのだなあと感じていました.
彼女に会う約2か月前,
別の街で私は結婚相談所を通じてはじめて女性と会っていました.
土曜の昼下がりに待ち合わせて,
喫茶店でコーヒー飲んで別れたのですが,
喫茶店選びからウェイターとのやり取り,
お会計の済ませ方にいたるまで
一挙手一投足を試されている感じでした.
まるで「全部自分でてきるけど,相手がどこまでできるか見ちゃえ」
というような感じでした.
しっかりしている女性だな,という感じはうけましたが,
1時間くらい話しても親しみらしき感情は湧いてきませんでした.
彼女は隣町から車で来ていた(地方は車がないと不便)ので,
酒は飲まず食事しながら会話.
料理を決めるときの彼女の態度も,
相手を試そうとする感じはまったくなく,
それでいてきちんと私に主導権を握らせてくれるのです.
お互いの自己紹介を中心に,かなり打ち解けて話をしました.
初対面の女性にはなかなかできない
「実はリラックマがすごく好きなんです」なんて話も,
彼女の持ち物のなかにリラックマがいたので自然にできたし,
私が上機嫌になると主張する,
「コンタクトレンズで『ホントの私』なんて言って
メガネをダサく言うのはコンタクトレンズ屋の陰謀.
私は真っ向から立ち向かう.」といった馬鹿話も,
引かずに聞いてくれて,私のテンションはあがりっぱなしでした.
しかも,いまだ自分以外にお目にかかったことがなかった
「食べるときだけ左,他はだいたい右利き」
という利き手の話を聞いて,
まるで分裂したまま生き別れた自分の片割れを見つけたかのような思いでした.
実際,彼女ほど私と考え方の近い女性を今まで知りませんでした.
「今は職場が近いから車は持っていない.必要なら軽を買う.」
「共働きで収入を維持するよりも,節制を覚えることのほうが先だと思う.」
「家はボロい公共住宅で十分.引越しだってどこにでもついて行く.」
「子供は自立さえしてくれればいい.親の都合で子供に生き方を押し付けない.」
普通,こんなことを初対面の人間に言っても言い争いになるだけなのですが,
彼女とはあれこれ話してもことごとく意気投合できたのです.
(これらについてはその後も何度も話し合っているので,
どうやらその場限りで私にペースを合わせたわけでもないようなのです.)
結局最初に店で3時間話し,河岸を変えることに.
私はこの時点でおひらきになるかと思っていたけど,
前日の友人の忠告「こちらからは別れを切り出さない」に従うことに.
この先はまったく想定外だったので,
近くのモスバーガーで続きを話すことに.
そしたら,そのモスバーガーでも閉店30分前になって
私達以外の客が帰るまでずっと話し込んでしまっていました….
私の最終のバスの時間も過ぎてしまっていたこともあり,
彼女の車に乗せてもらい,家の近くまで送ってもらいました.
私は車を降りて彼女を見送りながら,
「この人と結婚することになると思う…」
と既に予感していました….
次に彼女にあったのは,4日後の水曜日でした.
当初の予定では仕事の都合で約半月後になるはずでしたが,
前回の帰り際にそれではさびしいので前倒しを申し出たのでした.
平日だったので,私の仕事場の近くの洒落た中華料理店で軽いディナー.
私は前回に引き続き彼女と話すのが楽しくて,
とりとめもない会話をしていました.
しかしその店の閉店時間が近くなった頃,
突然彼女が悲しそうな顔で言ったのです.
「お願いだから,突然連絡が途絶えるような終わり方はしないでくださいね」って….
私は動揺しました.
これからどんどん会う機会を増やして,
お互いを知り合わなきゃと思っていたのに,彼女には
「このまま『良い友達』としてフェードアウトされちゃうかもしれない」
と捉えられていたなんて….
とりあえず私は彼女に気を許していることをわかってもらうため,
「じゃあ,もう少し話そうか.うちに来てみない?」
と誘ったのでした.
彼女は少し驚いていましたが,
私に対する警戒心を取り払ってくれたのかOKしてくれました.
今こうして書いていると,私に下心がアリアリのようにも見えるのですが,
私の中では素の自分をさらけ出すためのステップのひとつ
としてしか考えていなかったのです.
「あなたには私の部屋を見られても構わない」
そんな意思表示だったのです.
その点において,私の思考はまさに草食系男子そのものだったのではないかと思います.
私の家で,私は彼女の先ほどの言動についてフォローを求めていました.
彼女は,
今まで会った男の人は2,3回会ったところで音信不通になる人ばかりだった,
今回はすごく気が合ってすごく嬉しかったけど,
このまままた理由もわからないまま
連絡が取れなくなることがすごく怖かった,と言うのです.
私は彼女への思いをどうやって証明すればいいかわからず,
きっと困った顔をしたんだと思います.
私が考え付いたのは,彼女をしっかり見つめること.
だから私はとびきりの勇気で,
向かい合って彼女の肩を抱いた…のだと思います.
不意に唇にやわらかいものが押し当てられ,一瞬何が起きたのかわかりませんでした.
―ああ,証明はこうすればよかったのか.
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