殊勝な麻生首相“おわび”で遊説本格スタート

　麻生太郎首相（６８）が１日、衆院選に向けた本格的な地方遊説を、新潟県から開始した。解散後初の地方での街頭に立った首相は、自身の失言癖や衆院解散前の自民党内の混乱について「私の力不足」と聴衆に頭を下げる異例の“おわび”からスタートさせたが、民主党のマニフェスト（政権公約）については財源の裏付けや安全保障について「打ち出の小づちはない」など猛攻撃。「（選挙後の首相が）麻生太郎になるか、だれになるかではない」ともして、「党首力」でなく、政策で勝負する意気込みをあらわにした。

　全国行脚初日はおわびの連続だった。第一声となった新潟市中央区の演説で「私の一連の発言や力不足から自民党内の結束力に乱れが出た。政治や自民党に不信を招いた。心からおわびしなければなりません」と陳謝。候補者とともにペコリと頭を下げると、静まり返っていた約２０００人（党発表）の聴衆からパラパラと拍手が出た。

　７月３０日に東京都内で商店街などを視察後、急きょ街頭演説を行った首相だが、本格的な地方遊説はこの日が初。新潟県内４か所でマイクを握ったが、決戦を目前に謝ってばかりはいられない。自らの実績をアピールしつつ、民主党をこき下ろした。

　インド洋での海上自衛隊による給油活動に関し「以前は憲法違反で、今は対応すると言っている。肝心な話がコロコロ変わる政党」と批判。子ども手当などの政策の財源の裏付けを「打ち出の小づちみたいなものはない。奥様方、亭主の財布を揺さぶったらお金が出てくる？　出てこないでしょうが」と指摘した。

　また、演説に先立ち、横田めぐみさん（失そう当時１３歳）が北朝鮮工作員に拉致されたとされる新潟市の現場を視察。現職首相が拉致現場を訪れるのは初で、県警幹部の説明を受けながら約２０分歩いた。

　新潟が地方遊説の最初の地となったのは、安全保障政策を重視する姿勢を示すことが狙い。拉致現場視察は、官邸が要望したという。一方で、新潟県連は応援依頼が極端に少ないとされる首相側に、解散前から応援を依頼していた。ただ、妙な脚光を浴びる形となり「別にトップバッターでなくてもよかったんだけど…」（県連幹部）の声も上がった。

　失言はなかったが、勘違い発言は出た。３か所目の演説で、太平洋戦争の終戦年「昭和２０年」と言うところを「昭和２４年」とポロリ。すかさず言い直したため、気づいた聴衆は少なかったが、うっかりぶりは相変わらずだった。

　演説の終盤、鬼の形相で「国民生活を守るのは、どの政党かが問われている選挙。（選挙後の首相が）麻生太郎になるか、誰になるかではない。落ち着いて比較してもらいたい」と訴えた首相。内閣支持率の低迷を踏まえたのか、なりふり構わず自民党への支持を求めた首相の思いは有権者に届くか。

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