職場の安全衛生活動の事例       

明るくやりがいのある職場づくり!

高知県 職員厚生課

経 緯

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高知県では、職員の安全衛生及び健康管理を総括させるため、職員安全衛生管理者(総務部長)を置き、県の安全衛生に関する事項を総合的に調査審議する機関として、高知県安全衛生委員会を設置しています。本庁及び出先機関には、法令に基づき総括安全衛生管理者、安全管理者、安全衛生推進者、衛生管理者、衛生推進者、産業医、作業主任者を置き、職場安全衛生委員会、 又は職場衛生委員会を設置しています。

安全衛生をさらに推進するため、県独自の機関として、県内を7地区に分け地区安全衛生委員会を設置し、地区内の安全衛生について、調査審議を行うとともに、メンタルヘルス研修、健康教育、安全運転講習会、地区安全衛生委員会委員による職場巡視などを 独自に実施しています。また、産業医としての専門的な立場から検討や意見交換を行うため産業医連絡会を開催しています。

内 容

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POINT
・生活習慣病ハイリスク者に対する継続的な個別保健指導を導入

・心 の健康診断で、心身両面の健康管理、組織管理

・時間をかけて、スムーズな庁舎内全面禁煙の導入

<項目INDEX>

○個別保健指導の取り組み

○メンタルヘルス対策〜心の健康診断〜

○庁舎内全面禁煙の取り組み

 

1 個別保健指導の取り組み

(1)保健指導モデル事業(平成13年度〜15年度)

 県職員を取り巻く環境が大きく変化する中で、職員の心身両面にわたる健康管理施策の充実が求められています。平成13年度〜15年度にかけて、保健指導モデル事業を実施しました。

 特定所属(モデル所属)を指定し、全ての職員に個人面談を実施することにより、生活習慣病予備軍への対応やメンタルヘルスの早期発見など職員の健康づくりを推進 します。また、管理監督的立場の職員を健康管理推進員に指名し、職場のメンタルヘルス相談のキーパーソンとしての役割を担ってもらいます。

保健指導モデル事業

事業内容

◆健康管理推進員の育成
   職員を健康管理推進員に指名し、職員の健康管理に必要な研修を実施する。
◆個人面談等の実施
   モデル所属の全ての職員に対して、職員厚生課(旧職員健康課)健康管理スタッフが面接のうえ、個人カルテを作成し、生活指導、保健指導等を行う。

 

健康管理推進員の役割
  1 健康診断等の受診促進
   所属職員に対して各種健康診断の受診を促すとともに、職員厚生課の指示があった場合は、個人面談や精密検査への受診を促す。
2 メンタルヘルスへの対応 
   職場内のコミュニケーションを図り、メンタルヘルス不適応の早期発見に努めるとともに、メンタルヘルス相談については職員厚生課と緊密に連携を図り、病気の予防に努める。
3 職場環境の改善
   職場環境の把握に努め、その課題改善を図る。

 

 健康管理推進員研修

 保健指導モデル事業の推進の役割を担う健康管理推進員は、2日間にわたる研修を受講し、その職責を認識し、職員の健康管理に積極的に取り組み、健康で快適な職場づくりを 目指します。

健康管理推進員研修カリキュラム
 

第1日目

午前

◆講義『産業医からみた健康診断と職場の健康管理』

 産業医(庁内診療所所長)

◆解説『職員の健康管理対策の現状について』

 職員健康課職員

午後

◆講義『職場における心の健康づくり』

 メンタルヘルス相談専門医

 

第2日目

午前

◆講義『職場のメンタルヘルス対策と管理者の役割』

 外部講師(産業カウンセラー)

午後

◆演習『傾聴技法の演習〜上手な話の聴き方〜』

 外部講師(産業カウンセラー)

 アシスタント1名

 

 保健指導モデル事業の実施結果

 3ヶ年の事業の結果、対象職員638名に対して、622名の面談を実施しました。その結果を要医療、要精密、治療中、経過観察、生活指導、産業医連絡及びメンタル対応の区分に分けて、指導を行います。 

面接の実施結果

年度 対象者 面談者 実施率
平成13年度 278 277 99.6%
平成14年度 188 182 96.8%
平成15年度 172 163 94.8%
638 622 97.5%

 

モデル事業実施のまとめ

効果

 健康管理推進員の全面的な協力で、ほぼ全ての職員に面談を行うことができた。
 面談を実施することで、その後のフォローが続けて行いやすくなる。
 庁内診療所を利用した場合は、事後管理を効率的に行える。
 所属長からのメンタルヘルス相談が増加した。

課題

 要医療、要精密者が医療のルートにのった場合でも、ハイリスク者はフォローの継続が望ましい。
健康管理意識や生活習慣を変えてもらうことは短期間では難しい。
 
今後の保健指導
   ハイリスク者への個別フォローの充実(継続、出向く、記録、管理者の協力など)
 ハイリスク者以外については、結果に応じた保健指導の検討(集団指導、自己学習など)
 庁内診療所との連携を密にした保健指導の取り組みをさらにすすめていく

 

(2)個別保健指導事業(平成16年度〜)

 保健指導モデル事業の結果を受けて、平成16年度からは個別保健指導事業を実施しています。

 健康診断実施後の保健指導の充実を図るために、生活習慣病のリスクの高い者を選定し、生活習慣の改善等をねらいに継続的な個別保健指導を所属長等と連携し行います。

 ア 対象者

 産業医が前回の健康診断の結果から必要と判断した者

 

 イ 実施内容

 職員厚生課の産業医及び保健師が、対象者と個別に面談して保健指導を継続的に行います。面談回数は概ね2〜3回です。

 

 ウ 実施の流れ

  ◇対象者の選定

  ◇所属長及び対象者に個別保健指導の実施通知

  ◇面談実施日程の調整

  ◇面談場所の調整

    (本庁・高知地区は庁内診療所、その他の出先機関は当該所属で確保)

  ◇面談実施

  ◇面談の状況を所属長に報告

 

 エ 保健指導は、個人別に記録し、職員の健康管理のみに活用します。

 資料1 個人記録表 

 

 

2 メンタルヘルス対策〜心の健康診断〜

(1)高知県では、メンタルヘルス対策 として、“健康保持と増進”、“早期発見・早期対応”及び“職場復帰と再発予防”として、一次予防から三次予防までの対策を体系的に実施しています。

資料2 メンタルヘルス対策体系図

 

(2)メンタルヘルス事業

 メンタルヘルス相談、ストレスチェック、メンタルヘルス研修などを実施しています。

 

◇相談
  メンタルヘルス相談 日時:毎週月曜日

担当:外部専門医

カウンセリング相談 日時:第1・2・3木曜日

担当:外部産業カウンセラー(臨床心理士)

 
出前相談 出先機関で相談事例が生じたときに実施します。
 
職員厚生課スタッフによる健康相談 産業医、保健師が電話、メール、面談などをいつでも受け付けます。
地共済健康ダイヤル 24時間、電話相談を受け付けます。
 
◇ストレスチェック
  職業性ストレス簡易調査 庁内イントラネットに職業性ストレス簡易調査票をリンクしているので、手軽に自分のストレス状態を自己チェックすることができます。

 メンタルヘルス研修事業は、管理監督者、班長・チーフ、一般職員などを対象に実施しています。研修の枠組みは毎年度見直しますが、ここでは、平成18年度の内容を紹介します。

 その他、地区及び職場安全衛生委員会においても、研修会を行っています。 

研修名 対象者 内容
段階別研修

 

基礎研修 主にメンタルヘルス研修を初めて受講する者 ☆『メンタルヘルスの基礎知識』

  メンタルヘルス相談 専門医

☆『メンタルヘルス対策』

  職員厚生課職員

班長・チーフ研修

 

平成17年度班長・チーフ研修を未受講の班長・チーフ ☆『職場のコミュニケーションづくり〜直属上司のメンタルヘルスケアへの関わり〜』

 メンタルヘルス相談 専門医

管理監督者研修 全所属の管理監督者 ☆『メンタルヘルスの基礎知識〜一人ひとりが健康で、やりがいを持って働ける職場をめざして〜』

☆『心の健康診断結果報告 管理監督者の役割』

 (財)社会経済生産性本部

 メンタル・ヘルス研究所主任研究員

セルフケア研修 主に本庁地区の職員・管理監督者 《講義と実技》

○ストレスコーピング

○リラクゼーション

講師:外部講師(臨床心理士)

 

(3)心の健康診断〜明るくやりがいのある職場づくり〜

 心と体は健康の両輪です。体の健康診断と同じように、心も定期的に健康診断が必要です。

 職員の心身両面における健康管理の一環として、平成15年度に初めて、平成18年度に2回目の「心の健康診断(JMI健康調査)」を実施しました。

 心の健康度についての診断・チェックを行うことにより、自分の心の状態を知り、結果に基づくアドバイスを通じて心の健康づくりに役立てていきます。

 また、健康について考える場合、個人への アプローチだけでなく、職員の働く場である組織の健康度にも目を向ける必要があります。JMI健康調査では、県庁の組織についての健康度の診断も合わせて行います。

 結果を所属長に返し、組織の相談も行うことから、所属長の意識も変わります。職場のストレスをゼロにすることよりも、ストレスがあっても職場が明るく、楽しければ耐えられる“明るくやりがいのある職場づくり”に役立てます。  

 【JMI健康調査】  

診断 個人の診断  個人診断結果は、直接本人に送付されます。

 4つの領域(身体領域・精神領域・性格領域・職場領域)について、400余のチェック項目に回答し、コンピュータ処理による分析や診断を行い、それに基づく心の健康づくりに必要とされるコメントやアドバイスを行います。

 診断結果にもとづき、自分自身の心身の状態を把握し、各自が心と体の健康づくりに積極的に活かします。

組織の診断  所属長対象報告会、部長・副部長対象報告会で、各所属毎の組織の診断結果を 報告し、所属の個別相談(組織の診断結果に対する改善方法等)及びフォローを行います。
効果  平成15年度の実施結果からは、次のような効果が見られました。

○診断結果により職員に「気づき」が芽生え、自分の能力の強みを自覚することで自分の魅力をさらにアップさせ、弱みを自覚することで弱みをカバーでき、予防に繋がる。

○所属の管理者の「気づき」により、楽しくやりがいのある職場づくりに役立った。

○組織の健康度が明らかになり、組織の健康度アップの必要性が課題としてでてきた。それにより職員が志を持ちやりがい感を持って仕事ができるよう関係各課の取り組みが始まった。

 

(4)職場復帰支援制度

 心が不健康な状態になったことにより療養中の職員の職場復帰への不安を軽減し、職場への適応性の回復を促すとともに、所属の受け入れ態勢を整え、円滑な職場復帰が図られるよう支援することを目的として、職場復帰支援プログラムを平成17年1月から実施しています。

 なお、支援プログラムは、休暇、休職中に実施するもので、公務災害、通勤災害の適応がないため、傷害保険に加入することとしています。

 資料3 職場復帰支援制度実施の流れ

 

(5)過重勤務者に対してストレス度の問診

 過重労働による健康障害防止対策として、平成13年12月から、特殊健康診断として実施し、疾病の予防を図り、健康の確保を目指しています。

 現在は、月100時間を超える時間外勤務を実施した職員、又は、月80時間を超える時間外勤務を2ヶ月連続して実施した職員を対象に産業医の面接指導を行い、必要に応じて二次検診を行っています 。対象者には、「過重勤務者検診問診票」(資料4)を配付し、ストレス度についてもチェックをしています。

 

 

3 庁舎内全面禁煙の取り組み

(1)庁舎内全面禁煙

 平成9年4月に「高知県職員喫煙対策実施要綱」を制定し、禁煙タイムの設定などの取り組みを行い、平成17年11月15日からは庁舎内全面禁煙を実施しています。

 全面禁煙の試行、啓発活動、禁煙講座、アンケートなどを実施し、時間を掛けて取り組んだことで、スムーズな導入が図れました。

 庁舎内全面禁煙については、次の@〜Cの理由から実施に取り組みました。
  @公共施設での禁煙が大きな流れとなっていること。(人事院のガイドラインでも公務職場はできる限り全面禁煙を推奨している。)
A公務職場が率先して全面禁煙に取り組むことにより、民間事業所の取り組みが進むことが期待できること。
Bタバコの健康に及ぼす影響を考えたとき、禁煙が望ましいこと。(吸いにくい環境になることにより、禁煙成功者が多くでている。禁煙を考えている人とには良いきっかけとなる。)
C平成17年2月27日、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の発効(日本もこの条約を批准。今後、たばこ規制の取り組みが進められる。)

 

取り組みの流れ
  平成9年4月 「高知県職員喫煙対策実施要綱」の制定

 禁煙タイムの設定、会議中の禁煙、食堂・休養室・トイレ・廊下等での禁煙

平成11年9月1日 空間分煙開始

 指定された場所(喫煙コーナー等)以外での禁煙

平成16年3月15日 公用車内の禁煙開始
平成16年5月31日〜6月6日 庁舎内全面禁煙の試行、アンケート調査実施
平成16年7〜8月 各庁舎を訪問、庁舎外喫煙場所について協議
平成16年7〜9月 啓発用メールを全所属に送信(全5回)

禁煙に関する健康講座の開催

庁内診療所に禁煙外来を開設

禁煙支援のホームページを作成

平成16年11月15日〜 専用の喫煙室がある庁舎は分煙(庁舎外と併用)

その他の庁舎では、庁舎内全面禁煙を実施

平成17年3月〜 分煙の庁舎で庁舎内禁煙推進デーの実施(毎週1回)

 

平成17年4月11日〜4月15日 庁舎内全面禁煙の試行を実施

※アンケート調査結果  前回:( )

 ▽全面禁煙にするべきである、全面禁煙もやむを得ない

               ・・・ 60%(41%)

 ▽分煙を進めるべき ・・・ 40%(59%)

資料5 庁舎内全面禁煙に関するアンケート

平成17年5月26日 庁舎内全面禁煙の試行結果への対応について通知
平成17年5月31日〜6月6日 禁煙推進週間の実施
平成17年5月31日〜 禁煙サポート事業の実施
平成17年6月3日〜6月22日 各分煙庁舎を訪問、課題の改善について協議
平成17年7月19日 庁舎内全面禁煙の実施について承認(県安全衛生委員会)
平成17年8月5日〜 庁舎外喫煙場所の問題点等再確認
平成17年10月7日 庁舎内全面禁煙の実施時期を11月15日に決定
平成17年11月15日 庁舎内全面禁煙の開始

資料6 高知県職員喫煙対策実施要綱

資料7 庁舎内全面禁煙のお知らせ(掲示例)

 

(2)禁煙サポートの取り組み

 平成17年度は、喫煙者の禁煙を支援するため、次の禁煙サポートを実施しました。 

@庁内診療所禁煙外来による禁煙サポート事業
  禁煙指導及びニコチンパッチの処方
A禁煙マラソンによる禁煙サポート
  インターネットのメールを使ってのサポート

 その他、「禁煙宣言書」、「禁煙支援のお願いカード」、禁煙のコスト 計算をする取り組みなど、工夫を凝らして事業を展開しています。

 

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問合先 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
総務部職員厚生課
п@088-823-9775