麻生太郎首相(自民党総裁)は31日、党本部で記者会見し、衆院選に向けたマニフェスト(政権公約)を発表した。経済成長戦略を掲げ、「2010年度後半に年率2%の成長を実現する」「10年で家庭の手取りを100万円増やし、国民所得を世界トップクラスに引き上げる」と明記した。各党のマニフェストはほぼ出そろい、18日公示-30日投票の衆院選に向けた本格論戦がスタートする。【野原大輔】
自民党は、子ども手当支給や高速道路無料化などを盛り込んだ民主党に対抗し、幼児教育無償化を3年間で段階的に実施するほか、低所得者の授業料無償化なども盛り込んでおり、生活支援を競い合う形となった。
自民党はマニフェストを「安心」「活力」「責任」の三つに分類。成長戦略は活力分野の冒頭部分に表記した。民主党は「中小企業の法人税率を11%に引き下げ」などを掲げているが、自民党は「成長政策が欠如したまま、お金を配ることだけに着目している」(麻生首相)と対抗心をむき出しにしている。活力分野ではまた、道州制導入を17年を念頭に目指すことや、国と地方の代表者が協議する機関の設置の法制化も盛り込んだ。
安心分野では、11年度までに消費税率引き上げの道筋を示す法制上の措置を講じ、「堅固で持続可能な『中福祉・中負担』の社会保障制度を構築する」としている。民主党は消費税率引き上げを凍結しており、自民党は財源問題への取り組みを強調している。
また、子育て支援の強化を打ち出し、幼児教育の無償化や返済義務のない奨学金制度の創設を打ち出した。育児のため離職した女性の再就職に積極的に取り組む企業の支援制度創設も盛り込んだ。民主党は中学卒業まで月2万6000円の子ども手当や公立高校の授業料無償化などをうたっている。
責任分野では、北朝鮮のミサイルや核への脅威などから、安全保障体制の強化を強調した。集団的自衛権の一部行使を念頭に「同盟国の米国に向かう弾道ミサイルの迎撃などが可能になるよう、必要な安全保障上の手当てを行う」などと明記。安全保障分野の具体策を示していないとされる民主党との違いを鮮明にしている。
一方、自民党はマニフェストに盛り込んだ政策の実現に必要となる財源について、具体的に示していない。31日の記者会見に同席した自民党の園田博之政調会長代理は「(当分の間は)国債発行はやむを得ないのではないか」と述べており、選挙戦での主要争点となりそうだ。
毎日新聞 2009年7月31日 20時07分(最終更新 7月31日 23時52分)