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きょうの社説 2009年8月1日
◎石川こども芸術祭 心強い「文化立県」の担い手
金沢市内で1、2日に開催される「石川こども芸術祭」は、地域の文化のすそ野の広が
りをあらためて実感させる舞台である。財団法人石川県芸術文化協会の加盟団体は、設立時の15から43団体へと3倍近くに増えたが、団体の広がりとともに、それぞれの分野で次の世代が着実に育ってくるのは心強い。芸術祭のメーンとなる「こども伝統芸能劇場」の出演団体は、能や日本舞踊、ダンス、 YOSAKOIソーランなど幅広く、和洋のジャンルを超えた発表の場は児童、生徒にとって大きな刺激になるだろう。夏休みはスポーツ大会なども目白押しだが、文化の継承に取り組む子どもたちの地道な努力は貴重である。このなかから「文化立県」の担い手が誕生することを期待したい。 箏曲や日舞、民謡、太鼓、三味線などへの子どもたちの関心は、身近に指導者がいたり 、家族や親類に愛好者がいるなど、伝統芸能に触れられる環境が他の地域以上に整っていることが大きいだろう。子どもたちが実際に取り組めば、伝統的な世界がもつ独特の空気を肌で感じることができ、文化を大切にする心、ひいては郷土を愛する心も養われるはずである。周囲も子どもたちの体験を通して伝統芸能への理解が深まっていくに違いない。 義務教育で和楽器が取り入れられるなど、邦楽に触れる機会は少しずつ増えてきた。学 校現場にとどまらず、地域のなかで子どもたちが伝統芸能に関心を持てるような場を広げていく必要がある。芸が上達する条件の一つは身近にお手本がいることであり、県芸術文化協会の加盟団体も子どもたちの意欲や向上心が高まるよう精進を重ねてほしい。 県が発表した2009年版「石川100の指標」では、華道や茶道をたしなむ人の割合 が全国1位になったのをはじめ、美術や音楽に親しむ割合など、文化に関する多くの項目が5指に入っている。これらの指標は石川が「文化立県」であることの何よりの証明であり、子どもたちにもそうした郷土の豊かさを折に触れて伝えていきたい。
◎ゲリラ豪雨への備え 予測精度の向上も急務
7月に九州北部や中国地方を襲ったゲリラ豪雨では、不意を突かれたかたちで犠牲者が
増え、被害が拡大した。地球温暖化などの影響でこうした異常気象はますます増えることが予想され、発生時に被害を最小限に食い止める備えとともに、ゲリラ豪雨などの予測精度を高めることが急務の課題である。国土交通省の気象分科会も気象業務の強化を提言しているが、気象庁をはじめ官民の関係機関は技術力を結集し、異常気象に対応しうる観測体制を整えてほしい。今年は5千人を超える死者・行方不明者を出した伊勢湾台風から50年の節目にあたり 、この半世紀を振り返れば、飛躍的に進歩した台風予測が被害の軽減を可能にしたことが分かる。発生から進路、速度などが把握でき、暴風圏までほぼ特定できる今日の台風予測は、気象技術の象徴といえ、これからはゲリラ豪雨対策などに観測の重心を移す必要がある。 ゲリラ豪雨は積乱雲が急激に発達して起きるため、雲の動きも含めて予測が困難とされ てきたが、地震に比べれば技術的に可能性は高いだろう。実際、気象庁の気象研究所は、金沢市の浅野川水害や神戸市で川が増水し子どもら5人が死亡した昨年7月28日のデータで、当時は予測不能だった強い雨の降る区域を1〜5時間前に予測することに成功している。 これは衛星利用測位システム(GPS)のデータから大気中の水蒸気量を割り出す仕組 みで、GPS用衛星からの電波は大気中の水蒸気が多いほど地表に到達する時間が長くなることに着目したものだ。既存の技術を組み合わせることで観測精度が高まることの一例であり、応用可能な技術はまだまだ他にあるのではないか。 「竜巻注意情報」の発表も昨年3月から始まった。多数の負傷者や建物被害を出した7 月の群馬県館林市の竜巻では情報発表が間に合わず、これまでの的中率も9%程度にとどまっているが、データの解析能力を高めれば竜巻自体をとらえることが期待されている。予算や人材を重点的に投入し、観測体制を強化してほしい。
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