クリスマス(『あしゅから元気!』バージョン)
書いた人:しおしお
「クリスマス〜?」
「そうだよ。クリスマス」
アスカの疑問符から会話は始まった。
二学期が終わろうとしているこの時期。
冬休みの定番イベントとしてクリスマス、正月が待っていた。
アスカとシンジは冬休みの計画を話していた。
日本に来てはじめての年の瀬。
クリスマスは日本人にとって、馴染みが薄そうに思えていた為なのか、意外そうな顔をしてみせた。
「にゅにゅ? 日本人さんは、クリスマスをいわうの〜?」
「え? うん。そうだよ」
「にゅ〜。じゃあ、あしゅかちゃんと一緒に教会行くんだね〜」
「へ? 教会?」
「そうだよ〜。ちゃんとミサに出てから、家でいわうの〜」
「う〜ん。そこまではしないかも」
「え〜、しないの〜?」
アスカは寂しそうな表情を見せながら、シンジを見上げる。
「じゃあ、アスカと一緒に教会行こうか?」
「わ〜い。うれしいの〜」
一転してアスカはピョンピョン飛び跳ねながら喜びを表現していた。
そんな姿を見ていると、シンジはアスカがクリスマスに対してなにか思い入れがあるのでは無いかと思い始めていた。
そしてあっという間に12月24日の夜になっていた。
シンジとアスカは連れ立って近所の教会を訪れることにした。
教会は既に人で埋め尽くされていた。
「人がいっぱいいるの〜」
「そうだね。ミサが始まるのかな?」
「にゅ〜。だったら、早くすわろ〜」
「そうだね」
アスカはシンジの手を引っ張りながら2人分座れる場所を探していた。
背がちっちゃい為に、なかなか見つけるのに時間がかかってしまったが、なんとか座る場所を確保した。
ミサはあっという間に終わり、シンジとアスカは一緒に帰っていた。
「神聖な気持ちになるね」
「にゅ〜。でも日本人の人は少なかったの〜」
「仕方無いよ。日本人は祭りとして捕らえてるから」
「うにゅ〜、そうなんだ〜」
確かにアスカの言う通り、日本人は少なかった様な気がする。
何処を見ても外国系の人が多かった事を僕は思い出した。
「だから今日と言う日を大事に過ごしている人は少ないかもね」
「ん〜。なんか寂しいの〜」
「そうかもしれないけど、そればっかりは人それぞれだから……」
「にゅ〜」
話し終えたアスカは、何処と無く寂しそうであった。
大事なクリスマスの日をただの祭りと同等に受けられている事を寂しいと感じたんだろう。
「じゃあ、早く帰って暖かいご飯食べようか?」
「にゅ?」
「鳥の丸焼きを用意したよ」
「わ〜い、まるやき〜」
さきほどまで寂しそうな顔から一転してアスカは楽しそうな表情を見せた。
やっぱりアスカはこうじゃないとね。
「あ、そういえば、チンジにプレゼント用意してるんだよ〜」
「え? そうなの?」
「うん」
「じゃあ、早く帰らないとね」
「うん!」
僕とアスカは楽しそうに歩いてマンションを目指した。
確かに、クリスマスは神聖な物として捕らえる人もいるし、祭りと考える人も居る。
だけど、それで争いが無くなるなら僕はそれでも良いと思う。
「とり〜とり〜」
「そんなに急がなくても無くならないよ」
「でも、いっぱい食べたいの〜」
「ははは、じゃあ、マンションまで競争だ」
「まけないも〜ん」
アスカと一緒にマンションまで走り出す。
僕が本気で走ったら多分、アスカをおいて行くかもしれない。
短い手足で一生懸命走っているアスカ。
幸せを求めるのはアスカとかなあ……。
で、でも、僕は小さい娘に興味があるわけじゃなくて、アスカに興味があるんだから……。
この先も……。
<おしまい>
(2001年12月25日発表)