オマケSS『お月見とあしゅかちゃん』
書いた人:しおしお
秋……。
数々のイベントが行われる季節。
暑い夏も過ぎさり、虫の鳴き声がセミから移り行き…幾日か…。
今日は中秋の名月と呼ばれる日…。
そう十五夜なのです。
「まぁ〜んまぁるぅ、お〜つきさぁ〜ま〜」
アスカちゃんは、積まれたお団子の前で嬉しそうに歌っています。
その視線の先には、準備をしているシンジくん。
ススキにお団子を並べて、お月見をすると言う意欲は十分にある模様です。
「ね〜ね〜、チンジ〜、食べちゃダメなの〜?」
「まだダメだよ」
「ぶぅ〜。けちなの〜」
アスカちゃんは頬を膨らませて抗議を試みますが、シンジくんは見るそぶりをしません。
テーブルの上にて準備していたお団子をリビングへと持って行きます。
「にゅにゅ? どこにもってくの〜?」
興味深そうにアスカちゃんも付いていきます。
すると、リビングのテーブルの上にお団子などを置きました。
「ここでお月見をするんだよ」
「お月見?」
アスカちゃんはお月見をまったく知らない様子です。
無理も有りません。日本語が出来るとは言え、元々外国暮らしだったアスカちゃん。
日本の文化を知ってるほうが不思議なのです。
「お月見って、な〜に〜?」
「お月見って言うのはね……。旧暦の8月15日に月を見ながらお団子などを食べるんだよ」
「きゅ〜れき?」
「ええ〜っと、太陰暦って言ってね。昔の日本は月を中心にした暦だったんだよ」
「にゅにゅ? でもそれだとおかしくなるの〜」
「ま、まあ……そうなんだけどね……」
アスカちゃんの突っ込みにシンジくんは言葉を無くしてしまいます。
たしかに月を中心にした太陰暦は、4年に1度に閏月という面倒なものがあるためです。
シンジくんはそこまで詳しくないのでアスカちゃんの問いかけに困ってしまったのでした。
「でも、8月15日にお団子たべほ〜だいなの〜」
「そ……そうなのかなあ……」
二人はリビングの電気を消して、真っ暗な空にぽっかり浮かんでいる満月を眺める事にしました。
時折、流れる雲が月を隠したりしますが、満月と言う事もあって雲の向こう側にも月の輪郭が薄っすらと写っています。
「お月さん大きく見えるの〜」
「うん。そうだね」
「ねえねえ。チンジ。お団子食べて良いの〜?」
「え? うん。良いよ」
「わ〜い」
アスカは飾っている団子の山から一つ取出して口の中に放りこみます。
パクッ
もぐもぐ……
「うにゅ〜。味が無いの〜」
「あはは、じゃあきな粉とアンコを持ってくるから待っててね」
「は〜い」
やっぱりアスカちゃんにとっては、お月見よりもお団子なのかも知れませんね。
シンジくんがもってきたきな粉とアンコを団子の上にまぶすと、二人は仲良く食べ始めました。
食べる事に夢中になっているのか、アスカちゃんの口の周りにアンコがべっとり付いてしまっています。
「おいし〜の〜」
「アンコ拭かないと……」
「うにゅ?」
<おしまい>
(2001年9月15日公開)
(2001年10月3日:移転させました)