おまけSS『海とあしゅかちゃん』
書いた人:しおしお
「海、海〜」
アスカは嬉しそうに飛び跳ねる。
そう、何故か海に来ている。
海に来た目的はこれと言ってない。
アスカがシンジに駄々をこねたからに過ぎない。
シンジとて海に行ってみたかった事もあり、アスカの提案はあっさりを受け入れられる事になった。
アスカの準備は、海に行く事が決った数日前から始まっていた。
数日前
「ん〜っと…。ん〜っと…。うきわに〜、メガネに〜……。あと何がいるの〜?」
アスカはマンションのリビングにて、海へ行くための道具を広げていた。
「そうだね。水着とか?」
シンジは、アスカにそう答える。
シンジの準備はこれと言って無く、アスカの準備をしている様子を見守っていた。
「水着はちゃんと用意してるの〜」
アスカはスクール水着をシンジに見せる。
アスカが見せているのは、第壱中学指定の水着である。
本来なら、中学生用のサイズに合わせて用意されているのだが、アスカ専用と言う事で、サイズもアスカの為に合わされていた。
「スクール水着じゃなくて、もっと可愛い水着とか用意しないの?」
シンジは、色気もそっけもないスクール水着を見ながらアスカに聞いて見た。
「にゅ〜? かわいい〜?」
アスカはシンジに聞かれ、首をかしげる。
周りから見れば、アスカが可愛いから何を着てもOKと言う人が居るかもしれない。
しかし見慣れているシンジにとっては、アスカはアスカである。
「じゃあ、水着はそれで良いの?」
「うん。これでいいの〜」
「そ、そう? それなら良いけど……」
アスカはニパッと微笑んで見せる。
シンジは若干納得が行かないものの、アスカの提案を飲むことにした。
そして、海にきた当日
アスカは浮き輪を膨らませると、海へ向かって走り出す。
「アスカ。貝殻とか、ガラスの破片に気をつけるんだよ」
「は〜い」
シンジの忠告を守っているのか、アスカは裸足で走り出した。
そう……。
夏の陽射しで暖められた砂浜の上を走るのである……。
それが、どう言う結果になるかと言うと……。
「にゅ〜。熱い〜、あついの〜」
アスカは半べそをかきながら、シンジの元へ戻ってきた。
「アスカ。大丈夫?」
ビーチパラソルの下にて様々な道具を用意していたシンジは、アスカが叫びながら戻ってきた事に気づいた。
そして、アスカを気遣い声をかける。
「うにゅ〜。あついの〜。砂がい〜っぱい、あつくなってるの〜」
アスカはビーチパラソルの下のビニールシートの上にて、足をばたばたさせながら、シンジに説明する。
「まあ、時間が時間だしね。仕方無いといえば仕方無いかもね」
「ぐずぐず〜。あしゅかちゃんが、泳げなくてもいいの〜?」
「泳ぎに来たんだからそりゃあ、泳ぎたいよねえ」
「うん。泳ぎたいけど、熱いの〜」
アスカは少し泣きながらシンジに訴える。
アスカの訴えにシンジも考えを巡らす。
そして周りをみて、シンジは隣にて寝そべっている人に声を掛ける。
「僕はアスカと泳いできますから、留守番御願いしますね。ミサトさん」
「は〜い。楽しんできてね〜」
そう、ここまで忘れられているが、一応保護者である葛城ミサトも引率と言う形で付いてきていた。
ミサトは水着の上にTシャツを着て、サングラスをかけている。
そして、午前中にもかかわらずビールのボトル缶を片手に横たわっている。
「ミサトさん……」
「ん? な〜に〜?」
「お酒飲んだら、泳いじゃだめですよ」
「わ〜ってるって。お姉さんは、いつだって平気よ」
「……それが一番心配なんですけど…」
「うう、心配してくれるのね。ありがたいわ〜」
ミサトは、ワザと大げさに泣いているようなポーズをして見せる。
そのポーズを見ていたアスカがミサトに近づく。
「ねえねえ、ミサトさん」
「な、なあに? アスカちゃん」
「リツコさんが言ってたけど、ビール飲むとお腹が、お〜っきく、ふくらむってほんと〜?」
「う、うぐっ……」
ミサトは、アスカのセリフに顔を引きつらせる。
そしてとどめと言わんばかりにアスカは、言葉を続ける。
「とくに〜、この暑い中だと〜、もっと飲むって〜。そして大きくなれば〜って言ってたの〜」
「ぐ……」
アスカのとどめと言わんばかりのセリフにミサトの顔はさらに引きつっていた。
しかし、アスカは全くもって悪気は無いのである。
「あ、アスカ。行くよ」
流石にそこまで言うと、シンジも何かしらの危機感を感じたのか、アスカを海へと連れ出そうとする。
「は〜い」
アスカは悪びれる様子を全く見せず、シンジについていく。
「にゅ〜、やっぱりあついの〜」
「ははは、じゃあこうしようか?」
そう言うとシンジはアスカの前でかがむ。
何の事か判らないアスカは首をかしげていると、シンジは振り向く。
「ほら、肩車するからのって」
「かたぐるま〜?」
「うん。それだったら、足は熱くないでしょ?」
そこで、シンジの言ったことが理解できたアスカは、喜び勇んでシンジの肩に乗った。
「わ〜い。たかいの〜たかいの〜」
アスカは喜びをめいいっぱい身体で表現する。
「あ、アスカ暴れないでよ…」
「うにゅ〜。でもたのし〜の〜」
「あはは、じゃあ海に行くよ」
「は〜い」
アスカとシンジはまるで兄弟と言うよりも、親子の様に海へと入っていった。
そのころ、砂浜の上にいるミサトは……。
「くっそー。リツコだって婚期遅れてるくせに〜。ちっくしょ〜。こうなったらヤケ飲みよ〜」
ミサトはどんな口実でも、結局飲みたいらしい……。
「うみ〜、なみしぶき〜。たのし〜の〜」
「アスカ、波には気をつけるんだよ」
「は〜い」
アスカとシンジの二人は海を満喫しましたとさ。
「わ〜い。海って、しょっぱいの〜」
「だめだよ、飲んだら」
「うにゅ〜。なみしぶきに負けそうなの〜」
「あはは、あんまり流されないように、気を付けなきゃね」
アスカは波しぶきに揺られながら遊びましたとさ。
<おしまい>
つまらない蛇足
飲み続けたミサトは、感覚が麻痺したのか、ビーチパラソルを倒して飲み続けた為に……。
数日後……。
ネルフ本部
「あら、おはよう…。ミサト」
リツコはいつものように軽く声をかけて肩を叩いた。
肩を叩かれたミサトは異常なほどの反応を見せる。
「いったーーーい! 触らないでよー!!」
「……何をしたの?」
UVカットをロクにせずに肌を焼けっぱなしのミサトは、思いっきり焼けてしまい炎症をおこしたとさ……。
<ほんとにお終い(笑)>
(2001年7月28日発表)
(2001年8月8日:移転させました)