オマケSS『雨とあしゅかちゃん』
書いた人:しおしお
夕方になる頃に、第3新東京市は雨のカーテンに包まれてしまいました。
急いで走って行く学生や主婦の姿が、あちらこちらと見えます。
そんな雨の中を歩いている少女がいました。
「る〜るら〜らら〜ん」
赤いカッパに、赤い長靴姿のあしゅかちゃん。
雨の日だというのに楽しそうに歩いています。
大きな傘を回しながら歩くアスカちゃん。
果たしてどちらへ歩いているのでしょうか?
「あしゅかちゃんの〜、おむかえ うれしいな〜。ぴちぴち〜、ちゃ〜ぷちゃ〜ぷ、らんらんら〜ん」
アスカちゃんの歌から察するに、どうやら誰かを迎えに行く様子ですね。
商店街の真ん中を唄いながら歩くアスカちゃん。
お店の人達も、アスカちゃんを微笑ましく見ているようです。
そしてアスカちゃんは、あるお店の前で立ち止まりました。
「チンジ〜。あしゅかちゃんがやってきたよぉ〜」
アスカちゃんは、大きな声でシンジを呼び出します。
すると、お店の中から慌てるようにシンジくんが出てきます。
「そんなに大声出さなくても聞こえるよ〜」
「うにゅ〜。あしゅかちゃんが来たら迷惑だったの〜?」
アスカちゃんは、少しだけ泣きそうな表情を見せる。
シンジくんはその姿に弱く、慌てたように笑顔でアスカちゃんに話しかけます。
「そ、そう言うわけじゃないよ。助かったよ」
「よかった〜。じゃあ、かえろ〜」
鳴いたカラスはすぐ笑うの言葉通りに、アスカちゃんは笑顔を見せてシンジくんを店の外へ出します。
「う、うん。帰ろうか…」
「はい、カサ」
アスカちゃんは、自分がさしてきた傘をシンジくんに差し出します。
驚く顔をするシンジくん。
「1本だけなの?」
「うん、この大きいカサなら、あしゅかちゃんとチンジ入れるの〜」
「そ、そうなんだ……。でも濡れたら大変だからフード被ろうね?」
「うん!」
真っ赤なフードを被ったアスカちゃん。
そして、カサを片手に持ち、買い物したビニール袋を持つシンジくん。
アスカちゃんは、透明なビニール袋の中身を見て、今晩の食事を想像しながらシンジに話しかけます。
「今日の夕食は〜?」
「今日は、カレーライスだよ」
「辛いの〜?」
「大丈夫だよ。ちゃんと別に作るから」
「特別は、いや〜。チンジと一緒のたべた〜い」
アスカちゃんは、特別扱いされる事を嫌っているご様子です。
そんなアスカちゃんを見たシンジくんは、笑いながらアスカちゃんに一応忠告をする事にしました。
「ははは、だったら、ちょっと辛いよ」
「あしゅかちゃん、大丈夫だもん」
「ホントに〜?」
「ほんとだもん!」
アスカちゃんは、ニパッと微笑みました。
仲の良い二人は、雨の中を一緒に家路につきました。
<おしまい>
(2001年6月15日発表)
(2001年7月15日:移転させました)