あしゅから元気!
書いた人:しおしお
その2.5「とある日のあしゅかちゃん」の巻
朝日が昇りはじめると、窓から覗いてくる光に誘われるようにアスカちゃんは目を覚まします。
眠い目をこすりながらも、ベッドの上でぼけ〜っとしたいます。
「うにゅにゅ〜。朝なの〜」
ベッドから降りると、とことこと歩き出す。
一緒のベッドにて寝ているシンジをそのままにして部屋をでます。
朝ゴハンの当番はアスカちゃんがすることになっており、今日もその当番をこなそうとします。
ただ、お弁当に関してはシンジの方が手馴れているのか、まだアスカちゃんの領域にはなっていません。
「ん〜っと、ん〜っと、今日のゴハンは〜」
アスカちゃんはちっちゃいエプロンを身につけて食事の支度をはじめる様子です。
「んっにゅにゅ〜。たまご〜たまご〜たまごさん〜」
どうやら、今朝のメニューはベーコンと目玉焼きに決った様子です。
「おはよう……アスカ」
ようやく目の覚めたシンジくんもキッチンへと来たようです。
まだ眠いのか、寝ぼけた様子がありありと判ります。
「あ〜、チンジ〜。おはよ〜」
アスカちゃんは、嬉しそうにシンジに駆け寄ります。
朝からアスカちゃんの笑顔が見れるのですから、シンジくんはある意味幸せ物かも知れませんね。
そしてもうひとりの住人は、まだ夢の中のようです。
「もっと飲め〜。ぐふふ〜」
枕を抱きしめながら、どんな夢を見ているのか想像しやすいかもしれません。
ようやく朝ゴハンの準備が終わると、テーブルの上に数多くの皿が並んでいます。
今朝のメニューは、コーンポタージュスープにベーコンと目玉焼き、そしてバターロールパンが並んでいるようです。
「わ〜い、わ〜い。出来たの〜」
「じゃあ、食べようか」
「うん。たべるの〜」
アスカちゃんもシンジくんも席につくと、御互いに合掌します。
「いただきます」
「いただきますなの〜」
そして2人は楽しい朝食を過ごしましたとさ。
しかし、もう一人の住人は未だに起きる気配が無い様子です。
起きることの無い住人を放っておいてアスカちゃんとシンジくんの2人は学校へと向かう様子です。
アスカちゃんは見た目小学校低学年の様に見えますが、なぜか立派にシンジくんと同い年なので中学2年生になってしまいました。
最初は授業についていけるのかと心配していたシンジくんですが、アスカちゃんの実力が凄いのか、授業にはなんとかついて行っているようです。
ふう……。
アスカったら、いつもはしゃいでるよ……。
そんなに慌てて行くことも無いのに……。
「アスカ。あんまり走ると危ないよ」
「うにゅ〜。あしゅかちゃんは大丈夫なの〜」
「だめだよ。手を握ってあげるから」
「わ〜い、おてて繋ぐの〜」
嬉しそうな笑みを浮かべながら、アスカは戻ってくる。
待ってれば良いのに、あわてんぼうだな……。
アスカは……。
でも、そこが可愛いかも……。
「にゅ? どうちたの〜?」
「え? な、なんでもないよ。あはは……」
シンジくんは、何故か慌てた様に返答するのでした。
その様子がわかって無いアスカちゃんは小首を傾げた物の、シンジくんと手を握っている事が嬉しいのか、気にした様子を見せる事はありませんでした。
体育の時間
もちろん中学校であるアスカちゃんは、周りの女子生徒に混じって体育の授業をうけます。
どうしても手足のハンディがある為なのか記録はやや劣りそうです。
今日の競技は、走り幅跳びのようです。
「幅跳びって砂が体操服に入るから面倒よね〜」
「ブルマに入ったらもっといやだよね〜」
周りの女子生徒が口々に様々な事を言っている様子ですが、アスカちゃんは男子の体育の方を見ている様子です。
「ねえねえ。アスカちゃんはやっぱり碇くんを見てるの?」
「にゅ? うん、チンジをみてるの〜。ヒカリちゃんは?」
アスカちゃんに話しかけてきたのは、クラスの委員長 洞木ヒカリである。
アスカちゃんの問いかけにヒカリは頬を紅くしながら男子の方を見ているようです。
「え? わ、わたし?」
「うん。ヒカリちゃんは、な〜に〜?」
アスカちゃんの純粋な疑問に流石の委員長もたじたじになりそうです。
「お〜い、惣流さ〜ん。順番ですよ」
「あ、アスカちゃん呼ばれてるよ」
「ふみゅ……。は〜い、いきますの〜」
体育の先生に呼ばれてアスカちゃんはスタートラインへ向かって行きました。
てくてくてくと言うような走っているのか歩いているのか良く判らないアスカちゃん。
ヒカリは、アスカちゃんが離れて言ったのでちょっとだけ安心した様子を見せます。
「は〜い、あしゅかちゃん行きま〜す」
アスカちゃんは砂場へ向かって、全速力で走り出しました。
いつものんびりしているアスカちゃんからは想像できそうにもない程の走りです。
誰もが『もしかして』と一瞬おもいました。
そして足が踏み切り線手前にかかった時……。
アスカちゃんの足は見事に着地しました……。
砂場までは届くこと無い場所に……。
「うにゅ〜。足が痛いの〜」
アスカちゃんは振動が足に来たのか、思いっきり痛そうです。
綺麗な目には涙さえ浮かんできます。
やっぱり、まだまだなのでしょうか。
放課後
「あしゅかちゃんね〜。今日は砂場まで行かなかったの〜」
「残念だったね」
アスカちゃんは今日の様子をシンジくんに報告している様です。
体育の授業だけは別々なので、アスカちゃんは嬉しそうにシンジくんに話します。
「うん。でもでも〜。今度はちゃんと飛んで見せるの〜」
「じゃあ、頑張ったから、今日はアスカの好きなものを作るよ」
「にゅ〜。だったら〜、エビのてんぷら〜。ピョンピョン飛び跳ねるの〜」
アスカちゃんは身体全体を飛びあがらせながらシンジくんに説明をしてみせます。
シンジくんもアスカちゃんの意図するものを理解したのかニッコリ笑って見せます。
「そう? だったら、エビを買いに行こうか」
「うん!」
今日も嬉しそうに2人は、商店街へと向かって行きます。
アスカちゃんの楽しい日々はこうして終わりを迎えようとしているのでした。
<おしまい>
(2001年10月29日発表)