【ラクイラ(イタリア中部)高塚保】麻生太郎首相は10日夜(日本時間11日朝)、ラクイラ・サミット閉幕を受け、帰国の途につく。ロシアのメドベージェフ大統領との首脳会談で北方領土交渉を前進させ、政権浮揚につなげる思惑が外れたばかりか、オバマ米大統領との正式な首脳会談もかなわなかった。求心力を失った首相は諸外国からも足元を見透かされ、傷心の初サミットに終わった。
自民党役員人事の失敗などで窮地に立たされた首相にとり、サミットは政権浮揚を果たす最後の機会だった。開幕前々日の6日深夜にローマ入りし、7日はローマ法王ベネディクト16世、地元イタリアのベルルスコーニ首相との会談のほか、2国間会談を精力的に入れる予定だった。だが、その他の会談は入らなかった。
オバマ大統領とは9日の会談も模索したが、8日の夕食会前後に、非公式で行った意見交換に終わった。日中首脳会談は、胡錦濤国家主席の帰国で中止となった。結局、実現した2国間会談は、イタリア、ロシア、ブラジル、カナダ、インド、オーストラリアの6カ国。9日のブラジルは当日、10日のインド、オーストラリアは前日にセットされるドタバタぶりだった。
また、首相は7日に予定していた同行記者団との「内政懇談」を「サミット準備」を理由に中止。時間的余裕はあったことから、「政治状況について質問を受ける余裕さえないほど追い込まれているのでは」(自民党関係者)と受け止められ、指導力の低下ぶりを一層印象付けた。
毎日新聞 2009年7月10日 20時37分(最終更新 7月10日 22時19分)