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卓上四季

アイヌモシリ(7月31日)

明治政府の目が東アジアに向かうのは、維新から間もない1870年代だった。朝鮮への侵略を図る征韓論が台頭し、最初の海外派兵とされる台湾出兵が行われた▼日中両国に従っていた琉球王国(沖縄)が、日本の単独支配になるのもこのころだ。「琉球処分」である。明治政府の威圧により、最後の琉球王・尚泰が首里城を明け渡す。現地では不服従運動も続いた▼琉球王国が、外務省管轄の「琉球藩」になるのと同じ年、北海道に「地所規則」「土地売買規則」がつくられた。アイヌ民族が狩りや漁をし、木の実や枝を得ていた土地の多くが国家のものになる。和人の移住者などに払い下げられてゆく▼入植は急増した。アイヌ民族独自の文化は否定され、日本化が求められた。こうした流れから、〈北海道「開拓」は(明治政府の)東アジア侵略の第一段階となった〉。北大名誉教授の井上勝生さんは、著書「幕末・維新」(岩波新書)で指摘する▼アイヌ民族への総合政策を示す有識者懇の報告書が出た。「同化政策でアイヌの文化は深刻な打撃を受けた」「圧倒的多数の移住者の中で被支配的な立場に追い込まれ」−ここにも書かれている▼アイヌモシリ(人間の大地)を奪った歴史は重い。文化復興に国の責任を認め、生活支援を求める報告書は当然として、それで十分か。「移住者」の流れをくむ者には、考える責任があろう。

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