市川海老蔵が安土桃山時代の大泥棒を演じる新作歌舞伎「石川五右衛門」が、8月の東京・新橋演舞場に登場する。五右衛門と天下人の豊臣秀吉(市川團十郎)の対決などを盛り込んでおり、スケールの大きい作品になりそうだ。【小玉祥子】
「金田一少年の事件簿」や「神の雫(しずく)」など、漫画やテレビドラマの作者として人気の樹林伸が歌舞伎の原作に初挑戦。それを川崎哲男と松岡亮が脚本化し、奈河彰輔が監修、藤間勘十郎が振り付け・演出を手掛ける。
石川五右衛門は「楼門(さんもん)五三桐」など、歌舞伎演目にも多く登場する。釜ゆでになったことで知られるが、今回は新しい視点を盛り込む予定だ。
海老蔵は「秀吉と五右衛門の葛藤(かっとう)の肝になる筋を、樹林さんが書いてくださいました。ゆくゆくは古典になりうるような作品にしたい。世界が認める漫画と歌舞伎を融合できたらおもしろいのでは、と思っていました。誇張と飛躍という意味では、似た部分があるかもしれない」。
樹林は「歌舞伎を見たことはありませんでしたが、初めて海老蔵さんの『暫(しばらく)』を見て、普通ではないオーラがあると思いました。彼に恥をかかせたくないと頑張りました」
秀吉と五右衛門の関係を善と悪の対立としてとらえたい、と海老蔵は話す。「悪があるからこそ善は強くなる。市川家の芸『歌舞伎十八番』も勧善懲悪。その美しさが出てくればと思います」
五右衛門と秀吉にかかわりを持つお茶々を中村七之助が演じる。8月8日から27日まで。問い合わせは03・5565・6000へ。
毎日新聞 2009年7月30日 東京夕刊