イランの核疑惑研究所から東北大に留学生
東北大学の原子力工学の研究室が、核兵器開発に関与する恐れがあるとして経済産業省の規制リストに載ったイランの研究所からの留学生に対し、使用済み核燃料の再処理に関連する研究を指導していたことが30日、わかった。国際社会が核拡散に神経をとがらせる中、日本の高度な技術の流出を防ぐ法規制の不備や、大学によるチェック機能の甘さが問題になりそうだ。
同省は、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づいて「外国ユーザーリスト」を2002年から作成、現在は大量破壊兵器の開発が疑われるイランや北朝鮮などの約250機関を掲載している。リストに載った研究機関から留学生を受け入れる際には、大量破壊兵器開発への関与の有無などを「判定」することが求められている。
留学生は02年9月に来日し、同10月に東北大大学院の量子エネルギー工学専攻に入学した。04年3月になって、留学生が来日直前に所属していた「ジャッベル・イブン・ハヤーン研究所」がリストに載った。
留学生の研究内容は、使用済み核燃料の再処理で発生する放射性廃液から銀などの有用金属を回収する技術。プルトニウム抽出には直結しないものの、核爆弾製造のために再処理システムを構築する際、重要な役割を果たす可能性がある。
しかし、外為法は自由な貿易や技術提供の確保を目指す法令で、来日から半年たった外国人を日本人と同等に扱う規定があるため、リスト掲載時には留学生は「判定」の対象外となっていた。留学生は研究を続け、2年半後の06年9月に博士号を取得して帰国した。
経産省は「技術流出を防ぐ法の趣旨からは、04年のリスト公表後、大学は研究指導の是非を再確認する必要があった。東北大から事情を聞きたい」としている。
米国は1998年以降、大量破壊兵器の開発が懸念される国からの留学生に対してビザ発給を規制している。早稲田大学の山本武彦教授(安全保障論)は「米国では、リストに載った研究機関出身の留学生が入国することは考えられない。日本も法的な入国規制の仕組みが必要だ」と指摘する。
これに対し、東北大量子エネルギー工学専攻の長谷川晃・専攻長は「留学生の研究課題は、核物質を使わないので問題がないと判断した」と話している。
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