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輸出底打ちと経済回復

2009年7月31日0時2分

 日本経済の現状は企業収益が大幅に落ち込み、設備投資が大幅に減少している。また、失業率は近年で最悪の水準にあり、個人消費も1年以上もマイナスが続いている。一方、輸出は戦後最悪の水準ではあるが、2月を底にやや落ち込み幅を狭めており、再び日本経済の救世主となるかが注目される。

 我が国輸出の3割を占める欧米市場経済は、個人消費、設備投資、輸出が最悪期からやや脱した感があるが、回復には時間がかかりそうである。一方、輸出の5割強を占めるアジア市場経済は、中国の固定資産投資、個人消費が高水準を維持し、インドの内需も回復傾向がはっきりしてきた。

 かかる経済状況を反映して、わが国の6月の輸出は、アジア向けは前年比30%減と落ち込み幅が比較的小さくなり、北米、西欧向けも38%減、37%減と急速に落ち込み幅を縮小した。ただし、このペースで縮小するかは、欧米経済の先行きを見ると難しいと思われる。

 我が国輸出が減少幅を縮めた要因は、船舶が前年比プラスで推移したこと、化学品、半導体、電力設備、自動車部品が回復し始めたことにある。これに自動車、一般機械が加われば輸出は一気に回復に向かうが、現状では期待薄である。

 気になる数字がある。経済が最悪期にありながら米国のIBM、アップルなどの進取改革企業は4〜6月期に高収益をあげた。韓国のサムスン電子、台湾のエイサーも液晶パネル、半導体、携帯電話、パソコンが好調で高い利益率となった。その国の輸出を支えているのは企業の国際競争力である。この経済危機を企業がいかに克服し、次なる成長の基盤を築くかが国の盛衰を決める大きな要因となる。(創)

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 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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