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拉致問題、もはや萎縮などしている場合じゃない

　誰だって思うはずだ。このやりかたはおかしいと。でもその違和感を表明しづらい何らかのメカニズムが、拉致問題の周辺には働いている。

　北朝鮮への制裁に反対し始めた蓮池さんは、家族会からパージされ、メディアの表舞台から姿を消した。前述のインタビューが掲載された雑誌は、岩波の『世界』と、『週刊金曜日』、そして『実話ナックルズ』だ。明らかに傾向がある。テレビ出演はほとんどない。

　その意味では脱力するほどにわかりやすい。松本サリン事件の被害者で、事件発生時には警察とメディアから犯人であるかのように報道された河野義行さんとこのあいだ会ったとき、「インタビューで、麻原や幹部信者たちに死刑を執行してほしくないと語っても、メディアはこの箇所をカットしてしまう」と苦笑していた。理由は想像がつく。犯人を憎まない被害者や遺族という構図がわかりづらいからだ。読者や視聴者が困惑するからだ。

　メディアはわかりづらさを避ける。事象や現象を単純化する。なぜならそのほうが、視聴者や読者のニーズに合う。つまり売れるからだ。蓮池さんがマスメディアから姿を消した背景にも、同じメカニズムが働いている。

家族会と救う会から送りつけられた抗議文

　今年の4月25日、テレビ朝日で放送された「朝まで生テレビ」で田原総一郎さんが、「横田めぐみさんと有本恵子さんはもう死んでいる可能性がある」との発言をした。

　この発言に怒った家族会と救う会は、田原さんとテレビ朝日社長宛に、抗議文を送りつけ、さらにＢＰＯ（放送倫理・番組向上機構）に提起した。以下にその抗議文を引用する。