【第25回】 2009年07月27日
拉致問題、もはや萎縮などしている場合じゃない
僕はそう思っている。ずっとそう思ってきたし、そう発言してきた。数年前に『たかじんの何でも言って委員会』という番組に出演したとき、北朝鮮に対してはどのような対応をすればよいかと訊ねられて「国交正常化だ」と答えたら、「今どきこんなことを言う人がいるのねえ」と、隣に座っていた金美齢さんに冷笑された。
毎日新聞に掲載された中島岳士さんとの対談で、「経済制裁によって苦しむのは北朝鮮の一般国民なのだから、すぐにやめるべきだ」と発言したら、ネットで「非国民」、「金正日の手先」、「北朝鮮に帰れ」などと罵倒された。
特にダメージはない。まったく気にしない。だって自分の主張に自信がある。どう考えても、強硬な経済制裁は間違いだ。
だからこそ不思議だった。家族会が経済制裁を強硬に主張することが。いちばん他人事ではないはずの人たちだ。自分たちの家族の命がかかっているというのに、どうしてこれほどに声高になれるのか、それがずっと不思議だった。
この5月、蓮池さんは1冊の本を発表した。拉致問題についての彼の総括だ。その冒頭部分から、一部を以下に引用する。
「(略)しかし同時に、複雑な気持ちも持っていました。以前から、そういう取り組みには、ついていけない部分があったのです。
たとえば集会参加者の中には、日章旗を持っている方が大勢います。そうして、誰かがしゃべるごとに、そういう方々が、旗を振りながら、「そうだ!」とか「けしからん!」とか、「朝日新聞出て来い!」「NHKはいるのか!」とか、激昂するのです。
よく見ると、ゲートルを巻いた旧日本陸軍人そのままのような、変わった衣装の方もいます。「怖いなあ」と思って外へ出たら、右翼の街宣車の隊列があり、がなり立てているのです。そしてその街宣車から流れている演説と、私たちが主張していることと、内容がまったく同じだということに気づき、愕然としたこともあります。(中略)これが私たちの運動だったのか、これはおかしいなと思いました。」
「拉致~左右の垣根を超えた闘いへ」(かもがわ出版)
彼のこの文章を読んで、(ちょっと変な表現だけど)僕はほっとした。家族会の中にも、この運動のあり方や日本政府の方針に、違和感を持つ人がいた。もしかしたら他にもいるかもしれない。だって拉致問題は2004年の被害者帰国以降、まったく何も進展していない。そしてこの経過は、日本政府が強硬策を取り始めた時期とも一致する。
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著者プロフィール
- 森達也
(テレビディレクター、映画監督、作家)
1956年生まれ。テレビディレクター、映画監督、作家。ドキュメンタリー 映画『A』『A2』で大きな評価を受ける。著書に『東京番外地』など多数。
この連載について
テレビディレクター、映画監督、作家として活躍中の森達也氏による社会派コラム。社会問題から時事テーマまで、独自の視点で鋭く斬る!
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