米国と中国が外交・経済分野の問題を閣僚級で話し合う初の「戦略・経済対話」が2日間の日程を終えて閉幕した。
ブッシュ前政権時代に始まった経済限定の定期的な閣僚級会合が、4月の米中首脳会談の合意に基づき外交・安全保障分野にも拡大された。両国は気候変動やエネルギー問題などで協力強化をうたった覚書に署名。会合を通じ、北朝鮮問題や経済危機への対処、核不拡散対策など広範な分野に協力関係を広げることで合意した。
超大国・米国も単独で問題を解決できる時代ではなく、国際社会で存在感を増す中国と協調して2大国「G2」で課題解決を主導する構図を打ち出した。力のある両国が真摯(しんし)に諸課題に挑むなら、日本をはじめ国際社会にとって意義は大きい。
北朝鮮核問題では、両国が6カ国協議再開と国連安全保障理事会決議に基づく制裁の着実な履行に取り組むことで一致したという。事態打開につながることが期待される。
覚書では、気候変動など環境問題を両国にとって「最も困難な課題」とし、この分野での協力を「米中関係の柱」と位置づけた。温室効果ガス排出量で世界1、2位の両国が積極的に削減に取り組むなら世界の温暖化対策は大きく進もう。
だが、中国は6月の気候変動枠組み条約特別作業部会で「先に高い水準の削減へ政治的意思を示すべき」と先進国をけん制したばかりだ。米国もオバマ大統領は前向き姿勢を示しているものの、まだ具体的行動には乏しく、京都議定書にも復帰しなかった。両国の国内産業に密接に絡む問題だけに、楽観することはできまい。
ブッシュ前政権時代の経済対話は米側が人民元レートなどをめぐり中国に圧力をかける場だった。衣替えした米中対話では米側が中国に協力を要請する場面が目立ったという。
中国が8千億ドル(約75兆円)を超える米国債を保有し、最大の債権国であることが影響しているようだ。オバマ大統領は、米国内の中国脅威論をぬぐい去ることに力を入れている。
今回、経済対話では米国が経常赤字圧縮や貯蓄率向上、中国は内需拡大や規制緩和に努めることになった。世界経済の本格回復には、米中のこうした取り組みが欠かせない。
影響の大きいG2である。互いの利害だけでなく、ともに国際的に重い責任を担っていることを踏まえた対話と、それによる協調促進が望まれる。
会場使用契約の一方的破棄で集会や言論の自由を侵害されたとして、日教組などがプリンスホテル(東京)や役員らに約2億9千万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は全額の支払いと全国紙への謝罪広告掲載をホテル側に命じた。
問題は2008年の教研集会に絡んで起きた。日教組は07年3月以降、グランドプリンスホテル新高輪の大宴会場を全体集会の会場に使用することなどでホテル側と契約した。ところが、同11月になってホテル側が「右翼団体の街宣活動などで宿泊客や周辺住民への危険が予想される」と契約の破棄を通告した。日教組の仮処分の申し立てを認めて使用させるよう命じた東京地裁、東京高裁の決定にも応じず、全体集会は初の中止に追い込まれた。
判決は解約について「法的根拠のない一方的なもので、債務不履行は明白」と厳しく指摘。裁判所の決定に従わなかった姿勢を「司法制度無視で違法性が著しい」と断じた。その上で、集会を「意見や情報を交わして思想や人格を形成、発展させる場」と位置付け、参加は法律上保護されるべき利益に当たるとして損害賠償責任を認めた。
「集会の自由」は憲法で保障されている。不当に奪われることは民主主義の根幹を揺るがす問題である。今回の判決からは、その危機感とともにホテルの公共性を問う裁判所の姿勢がうかがえる。
ホテル側が言う拒否理由は契約前から予想されたはずだ。日教組や警察と打ち合わせて対策を講じることにこそ力を入れるべきではなかったか。ホテルが企業として負う社会的責任は重い。にもかかわらず、集会・言論の自由の軽視や法令順守意識を欠いた一連の行為は残念だ。社会の理解も得られまい。
(2009年7月30日掲載)