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きょうの社説 2009年7月31日
◎ヒミウッド構想 名画のふるさとと呼ばれたい
映画のロケ誘致で地域おこしをめざす氷見市の民間支援組織が、年末をめどにNPO法
人化し、映画による地域活性化に本格的に乗り出す。世界の映画の中心地である米国のハリウッドを意識し、一帯を「ヒミウッド」とする映画の拠点化構想であり、日本の自然を凝縮した北陸の風景が、映画ファンから名画のふるさとと呼ばれるよう、隣接地域も応援したい。近年、北陸でも金沢や高岡で映画やテレビドラマのロケ地誘致に取り組む「フィルムコ ミッション」の活動が活発になり、北陸が舞台やロケ地となる映画が続々と登場している。今年も石川県内では秋に公開される松本清張原作の話題作「ゼロの焦点」のロケが志賀町のヤセの断崖などで行われた。氷見の拠点化構想も、こうした地域団体と連携しながら膨らませていくことが大切だろう。 ヒミウッド構想は、氷見出身の実業家浅野総一郎の作品でメガホンを取った市川徹監督 の発案によるもので、石川ゆかりの化学者、高峰譲吉を描く同監督の「SAKURA SAKURA」のロケが今秋、氷見から始まるのに合わせて、ロケを受け入れる施設やスタッフの滞在拠点の確保など、中長期的な映画製作に耐えうる基盤整備をスタートさせる方向だ。 市川監督は、氷見出身の藤子不二雄(A)氏の自伝漫画「まんが道」の映画化構想も持 っており、実現すれば地元ロケも期待できる。実績を積み重ねていくことで、映画のまちとしての認知度を高めたい。 地方における映画ロケのメッカとしては山形県庄内地方が知られ、地元出身の作家・藤 沢周平の代表作「蝉しぐれ」をきっかけに誘致が本格化し、今年に入って、米アカデミー賞を射止めた「おくりびと」のロケ地として一躍脚光を浴びたことは記憶に新しい。 関係者の間では、庄内地方に決めた理由として、物心ともに地元の全面的な協力が得ら れることを挙げている。大都市圏と近くなくても、支援体制が充実していれば、映画関係者にアピールできる証明であろう。氷見のみならず誘致に取り組む北陸各地も官民挙げて映画への熱意を訴えていきたい。
◎外国人旅行者急減 韓国、台湾重視は変えずに
世界的な不況と新型インフルエンザのダブルパンチで、今年の上半期に日本を訪れた外
国人旅行者数が前年同期より3割近くも減少したことが、日本政府観光局(JNTO)のまとめで分かった。特に、石川、富山県が重点的に誘客に取り組んできた韓国、台湾からの旅行者の落ち込みが際立っており、立山黒部アルペンルートで外国人の団体の入り込みが半減するなど、足元でもその影響が出始めているようだ。それでも、韓国や台湾が、日本にとっても石川、富山県にとっても大口の「得意先」で あることに変わりはない。上半期に限って言えば、国・地域別の旅行者数で中国が台湾を逆転したものの、いずれ台湾の旅行需要が回復期に入れば、再逆転する可能性が大きいのではないか。当面は、両県の「韓国、台湾重視」路線を変更する必要はあるまい。 JNTOによると、上半期に韓国から来日した旅行者は前年同期比48・5%減で、減 り幅はビジット・ジャパン・キャンペーンの重点12市場の中でも最悪となっている。台湾の37・1%減がこれに次ぐ。マイナス要因の多くは、自治体レベルで有効な対策が打ちにくいものであり、しばらく厳しい状況が続くかもしれない。だとしても、ここで息切れしてはこれまでの積み重ねが吹き飛びかねない。 金沢市などはちょうど今、台湾で人気が高いブログを開設している「ブロガー」を招聘 し、市内の観光名所を紹介している。台湾の人々は団体で旅行することが多いとされるが、この取り組みは、ブログで金沢の魅力を発信してもらい、個人旅行を増やすのが狙いである。落ち込みを最小限に食い止めるために、これまで比較的手薄だった層をターゲットにしてみるのもいいだろう。 海外からの誘客をめぐっては、中国人の日本への個人旅行が今月から解禁されて、話題 となっている。だが、中国人旅行者は「初来日率」が高く、訪問先も関東や関西に集中する傾向がある。地方で韓国や台湾に取って代わる存在となるまでには、もう少し時間がかかると思われる。
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