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「利息返還金」で債務整理トラブル多発 「手数料高い」「広告と違う」

7月30日23時1分配信 産経新聞

 年間1兆円規模で推移している消費者金融からの「利息返還金」をめぐり、債務整理を請け負った一部の弁護士や司法書士に、「手数料が高過ぎる」などといった苦情やトラブルが相次いでいる。事態を重く見た日弁連が異例の弁護活動指針を打ち出したほか、消費者金融から「法曹の正義はどうした」という批判まで飛び出す事態になっている。巨額市場に目がくらんだ一部の弁護士や司法書士が、ずさんな活動をしていることが原因のようだ。

 大都市圏の電車やバスに最近、「債務整理の無料相談」「いますぐ整理」「借金苦を解決」といった弁護士や司法書士事務所の活字が目立つ。地方テレビ局を中心に月1千本ものCMを流すところもあるという。

 弁護士、司法書士が掘り起こしに躍起となっているのが、過去に高い利率(グレーゾーン金利)で消費者金融を利用したため、当時の利息の返還請求ができる人たちだ。

 日本貸金業協会によると、平成19年度に業界から返還された利息金は、利用者の借入金の元本返済に充当されたのが約4200億円、現金で還元されたのが約5200億円の計9400億円。20年以降は1兆円を超えているという。

 消費者金融にとって経営の根幹を揺るがす事態になる一方、返還手続きを請け負う弁護士や司法書士にとり“返還金バブル”となっている。手数料20%と仮定すれば、2千億円もの市場ができた計算だ。

 突如出現した大市場に、日本弁護士連合会(日弁連)、日本司法書士会連合会(日司連)ともに「統計はない」というものの、依頼者との間でトラブルが増えていることを認める。

 「面会もなく勝手に手続きを進める」「高い手数料を取られた」「広告に書いてある内容と違う」といった声が多いという。派手な広告で事務所の処理能力を超えた数の依頼を受け、事務が滞っているケースもあるようだ。債務整理で稼いだ2億4千万円もの所得を隠していた司法書士の存在も明らかになった。

 6月には、中堅消費者金融のネオラインキャピタル(東京都港区)が司法書士団体などに、「弱者保護の実現のため業界全体で(安価な)手数料体系の統一を検討してほしい」と、法曹の正義感に訴えた要望書を提出。「高利息などで批判されっぱなしだった消費者金融が“逆襲”に出た」と金融界で話題になった。

 相次ぐ苦情に日弁連は23日、債務整理を受任する弁護士に向けて「指針」を打ち出した。弁護活動に関する指針ができるのは、極めて異例なことだ。

 指針では、「債務処理の目的は債務者の経済的更生にある」と明記。「依頼者(債務者)と直接面談する」「『家を残したい』といった依頼の趣旨を尊重する」「再度の融資が難しくなるなど、リスクを告知する」ことなどを求めた。

 指針作成にかかわった宇都宮健児弁護士は「弁護士として当たり前のことが行われなくなっているケースがある」と話す。日司連でも「広告表現に関するガイドラインの策定作業をしているほか、報酬や手数料についても全国的な調査に乗り出す」(担当者)という。

 ただ、弁護士も司法書士も基本は個人業。「最後はそれぞれのモラルを信用するしかない」(日司連)という声が出ている。

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最終更新:7月30日23時1分

産経新聞

 
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