「市民の生活と安全のために」中国資本進出を拒否した仙台市長梅原克彦氏の英断
「わが故郷に中華街は作らせない」
(SAPIO 2008年8月20日・9月3日号掲載) 2008年9月12日(金)配信
「移民政策は、フランスやドイツなどヨーロッパの例を見ても、歴史的に大きな社会問題になり、見方によっては失敗しているわけです。いくら世界的な流れといっても、歴史や地政学的な立場の異なる日本が、アメリカやヨーロッパの移民政策を真似する必要はどこにもない。ヨーロッパで外国人犯罪が起き、治安悪化が深刻な社会問題になっている現実を直視すれば、なぜ移民なのか、という明確な理由が日本にはない。むしろ、いまはフリーターなどワーキングプアの雇用問題こそが、大きな課題になっているはずです」
また、東北大学経営協議会のメンバーでもある梅原は、教育現場の無防備な情報管理にも警鐘を鳴らす。
「私は東北大学の経営協議会で、技術漏洩の懸念を再三口にしています。アメリカがそうであるように、日本企業のセキュリティは以前より高まってきました。しかし、大学は、はなはだ不安です。技術革新によって、基礎研究が軍事的に転用されるリスクがものすごく高まってきた。そういった汎用性の高い軍事関連技術が大学のキャンパス発、第三国経由で、テロ支援国家に流れる危険性は十分ある。アメリカの大学や研究機関のように審査を厳しくし、法規制を強める必要がある。大学の経営陣や教授陣も、日本の国益を考え、意識を改めなければならないと思います」
すべての局面で国益を前面に押し出してくる中国に対しては、今後も「友好一辺倒外交」では通用しない。仙台中華街構想を挫いた梅原はいま、「これから地方分権の時代を迎える日本では、首長こそ、確固たる国家観に基づき、中国を含めたアジア情勢や世界情勢がどう動いているかを行政に活かす識見と問題意識が必要だ」と説き続けている。
【梅原克彦PROFILE】1954年生まれ。東京大学法学部卒業後、通産省(現・経産省)入省。通商政策局地域協力課長、在米日本大使館公使などを経て、05年退官、仙台市長選へ立候補し、初当選。
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