「市民の生活と安全のために」中国資本進出を拒否した仙台市長梅原克彦氏の英断
「わが故郷に中華街は作らせない」
(SAPIO 2008年8月20日・9月3日号掲載) 2008年9月12日(金)配信
1万6000平方メートルの土地に、地上9階建てのビルを建設、中華料理店や商店を運営するという計画だった。
「こういうケースは、前例がなかった。横浜や神戸に昔からある中華街とは別に、東京の立川市の駅ビルやお台場のように、ビルの中でテナント方式の中華街を作るというケースは、全国にいくつかありました。しかし、中国の投資集団が、新規に日本国内の土地を購入し、一つの建物丸ごと中華街を作る、という例は他にない。だから判断は難しかったのですが、市内に一大繁華街・歓楽街が出来るわけですから、市長として慎重な判断が必要だと思いました」
最初に梅原は、仙台中華街の派手な景観に疑問を呈した。「美的価値観は人それぞれだから主観を押しつけるつもりはないが、このような派手な施設は長町の景観にそぐわないと思う」と周囲の市議などに対して見解を述べ、反対闘争≠フ狼煙を上げた。
仙台中華街構想では700人から800人の中国人が新たに就業・居住する計画だった。むろん、中国人が投資話を持ち込むこと自体に問題があるわけではない。市長として民間レベルのビジネスに介入することは大変な賭けでもあったが、梅原はいまも、「チャイニーズコミュニティに土地の所有権が移れば、その人脈でテナントが回り始める。そうなると手がつけられなくなる可能性が高い」と、なかば中国人進出は市にとって良くない≠ニ公言する。
梅原の念頭には、増加する中国人犯罪があった。
その頃、仙台周辺では、04年に起きた偽造クレジットカード詐欺事件、05年のドラッグストア集団強盗事件や偽造クレジットカードの原版密輸事件など、中国人が絡む事件が頻発していた。05年、宮城県内で犯罪検挙された外国人122人のうち、中国国籍は89人に上り、全体の約7割を占めていたのである。
梅原は当時の心境をこう振り返る。
「これは全国平均の約4割から見ても高い数字です。県外から来た中国人が犯罪を起こしているケースも少なくない。このような時に中華街が出来たら、どんな影響を及ぼすのか。市長には、街づくりを考える上で、現在の、あるいは将来生まれてくる子供たちを含めた、市民の生活や生命を守る使命と責任がある。これが大事な視点だと思いました」
しかし当時、構想を好意的に受け止めた関係者のなかには、「長町に賑わいを取り戻してくれる良いプロジェクトなのに、なぜ梅原市長は反対するのか」という声も少なくなかった。梅原はこう語る。
「日本の地方経済は、どこも疲弊していますから、海外からの投資話にすぐに飛びついてしまう傾向がある。私も他の首長から投資をしてくれるのだから、アメリカでも中国でもいいじゃないか≠ニ言われました」
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