食いしん坊なのは多分、戦後の食糧難時代に育ったせいだ。子供のころ、食事に不平を言うと「食えるだけでありがたいと思え」という父の怒声が待っていた。
今でも食べ物を残すと「もったいない」というより、罪悪感を覚える。好き嫌いはまずない。珍しい物には、挑戦したくなる。地元でも食べられない人がいる滋賀のフナずしは大好物。めったに口にしないのは財布の問題だ。
今、こだわっているのは野菜。これまで鮮度が大事と感じたのは、海の貝類、イカ、陸のタケノコ。塩を控えるようになってから、野菜もそうだと知った。薄味だと食材自体の良し悪しが問われる。知って何か得をしたような気持ちだ。(栗栖)
毎日新聞 2009年7月30日 地方版