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<先望鏡>大商のサービス精神を疑う――大阪検定と会員3万社割れ2009/07/01配信
6月21日、大阪初のご当地検定「第1回なにわなんでも大阪検定」(大阪商工会議所主催)の試験が大阪市内の2大学であった。大阪の文化や歴史、地理、産業、大阪弁などを問う100問に全国29都道府県からやってきた約6000人が挑戦。3級と2級があり、8月5日に合否を発表する。1級は来年度からで、2級の合格者が受験できる。
□ □ ご当地検定で先べんをつけた「京都・観光文化検定試験(京都検定)」はすでに5回実施済み。大阪検定が出遅れたのは「単なるご当地検定にしたくない」という野村明雄・大商会頭らの思いがあったからだ。関西以外の人が「大阪」の2文字から連想するイメージは「たこ焼き」「阪神タイガース」「お笑い」などステレオタイプが多い。これを覆すための仕掛けが大阪検定だった。 ユネスコの世界無形遺産である「文楽」について2級と3級の両方で触れたのはその典型。2級では名優、3代目中村鴈治郎が231年ぶりに襲名した上方歌舞伎の大名跡「坂田藤十郎」、町人が設立した学塾「懐徳堂」なども取り上げた。「文化・歴史」は京都の専売特許ではない。 大阪らしい笑いのセンスが光ったのは地下鉄の駅名「四ツ橋」の語源を問う2級の設問。4つあったうち実在した橋の名前をたずね、選択肢は「(1)中卯橋、(2)松屋橋、(3)吉野屋橋、(4)数寄屋橋」。牛丼を扱う店名との語呂合わせで遊んだ。ちなみに正解は(3)だ。 1931年の3代目・大阪城天守閣再建費に占める市民の寄付金の比率をきく問題は「100%」が正解。「大阪人=どケチ」という決め付けが正しくないのが分かる。加藤誠・大商副会頭は3級ボーナス問題の出題範囲だった大阪市内の熊野街道沿いを秘書3人と回った。途中の有名レストランで食事したところで“試験勉強”は終わったが「店の場所はよく分かった」。これらも大阪検定の立派な効用である。 □ □ 出題範囲のバランスについては一考を要する。2級で選択式の地域別問題を除く共通問題の90問中7問が堺市関連だった。地域別問題には「堺・泉州」の10問が別途ある。いくら共催団体に堺市と堺商工会議所が名を連ねているとはいえ、やり過ぎだろう。 残念なのは正解が合否発表と同じ8月5日まで明らかにならないこと。公式テキスト「大阪の教科書」を読み返せば大体は分かるが、自己採点ではあやふや。せっかく大阪に関心を持ってくれた受験者に不親切だ。さっさと大商のホームページに掲載すればよいものを、「インターネットを使えない人に不公平」という理由で見送った。ネット環境が不十分な受験者向けに、正解を府内商議所の掲示板に張り出すとか、希望者に実費で郵送するなどの手を打っておけば「不公平」との批判は回避できたはず。大阪商人が誇るサービス精神と工夫はどこへ。 大阪検定の実施に先立つ6月19日、大商は「会員数が2008年6月以来、1年ぶりに3万社を割り込んだ」と発表した。理由は景気低迷だけではないかも。「一事が万事」という言葉もある。 (編集委員 竹田忍)
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