<先望鏡>「新しい大阪像」地道に発信を――お笑い・コナモンだけじゃない

 
              
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<先望鏡>「新しい大阪像」地道に発信を――お笑い・コナモンだけじゃない

2009/07/29配信
 知り合いから最近、こんな話を聞いた。関東の親類を大阪・中之島に案内したところ、感嘆の声を上げたという。水と緑と歴史的建造物……。「大阪にこんないい所があったなんて」

 大阪に来るのが初めてではないという関東人が目を見張った光景は、来月から開かれる「水都大阪2009」を機に全国に認知される期待もあるが、現状で中之島周辺が大阪のシンボル的な景色として全国に紹介されることは少ない。

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 風景では通天閣や道頓堀のにぎわい。そしてたこ焼き、お笑い。これらはもちろん大阪が誇るべき景観的、文化的資産なのだが、大阪について語られるとき、つきまとうのは「ステレオタイプ」という問題だ。

 関西大社会学部の黒田勇教授は「大阪人はせっかちといったステレオタイプ化は、メディアなどを通じて東京目線で発信されたものだが、以前はそれに反発する若者も少なくなかった。だが、いつの間にか受け入れてしまうようになった」と話す。

 そして黒田教授は最近、事態はさらに深刻化していると指摘する。サイズを表す「でかい」という言葉があるが、これを関西弁だと信じている若者がいたことに驚いたという。「『でかい』は元々は主に東京周辺で使われていた言葉。だが『大きい』に比べ粗野な語感だから大阪の言葉、と思ったのだろう」

 整った街並みの映像を見せると「大阪じゃないようだ」という声が出ることもある。ネガティブなステレオタイプのイメージが若者に内在化しつつあることを黒田教授は憂慮する。

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 一方で、こうしたステレオタイプの傾向を打破しようという動きも始まっている。大阪府が府内の優れた景観、文化、祭りなどを紹介する「大阪ミュージアム構想」などはその一例だ。

 府の担当者は「古都の京都、港町の神戸などと比べ、大阪は多様で、一つのカラーにまとまらない。そのため、特徴的なものがピックアップされ、ステレオタイプ化していったのではないか」と分析。「それなら逆手にとって『様々なものがあるのが大阪の魅力』と売り込んでいこう、という考えだった」と話す。「公募した学芸員の間にも、悪い面ばかりクローズアップされがちな大阪のいい所を発信していきたい、という思いがある」という。

 また市民レベルでもこうした思いを基にしたイベントが増えている。先日、大阪・難波で開かれた「LOVE大阪」ではプロアマ問わず、約60人が自分の好きな大阪を撮った写真を展示。仕掛け人の建築家、竹山通明さんは「かつて大阪は類型的でない、懐の深い街だった。写真を撮り、見ることで、それを再発見してもらえる場にしたい」と思いを語る。

 参加者の一人からは「大阪人自身が大阪人に向けて思いを訴えかける試みであるように感じた」といった趣旨の感想が寄せられたという。

 大阪の魅力の地道な掘り起こし。その積み重ねが、「コナモン、元気なおばちゃん」だけでない「新しい大阪像」をいつかは結んでいく。様々な試みに期待したい。
(編集委員 岩沢健)
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