ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹さんが量子力学に興味を持ったのは、旧制三高時代に読んだ「量子論」との出合いがきっかけだ。
「それまでに読んだどの小説よりも面白かった」「これほど大きな刺激、大きな激励を受けたことはなかった」と自伝で記している。17歳で英語やドイツ語の原書を読みこなしているのは驚きだ。栴檀(せんだん)は双葉より芳しである。
最近は高校生の理科離れが言われるが、頼もしい双葉が育ってきている。メキシコで開かれた国際物理オリンピックで、日本代表は金2、銀1、銅2と全員がメダルを獲得。国別では11位となった。
岡山から初めて出場した朝日高3年難波博之さんは銀メダルと活躍した。昨年10月ごろから、大学の物理の専門書で毎日平均5時間勉強したという成果が表れたのだろう。
高校生の「科学オリンピック」は未来の科学者を育てようと世界各国で毎年開かれる。物理のほか数学、生物学など理科系5分野がある。ドイツで開かれた数学は、5人が金、1人が銅で、国別で2位という快挙だ。日本初開催の生物学も全員メダルと健闘した。
しかし、安心はできない。中国や韓国などアジアの高校生の躍進が目立っている。科学技術立国を目指す日本としては研究や人材育成の環境づくりに力を注ぎたい。