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「ワッハ上方を作った男たち」への書評 5

 

 

井上宏 WEBサロン(6月22日より)   

    井上宏 関西大学名誉教授・日本お笑い学会々長     

  

 「ワッハ上方」の名で知られる大阪府立上方演芸資料館が、どのようにして誕生したのかについて、実名入りで物語風に綴られている。日本に一つしかない、まさに大阪でしか誕生しようのない上方演芸資料館が作られるに至るプロセスが、物語風にまとめられていてとても読みやすい。実名入りの証言は貴重で、資料的価値を持っていると言える。著者が関係者から収集した証言集は膨大なものになったと思われるが、「ワッハ上方」を作り出した男たちの理念と意気込みに焦点を合わせていて、「ワッハ上方」の存在意義がよく理解できる本となっている。上方の演芸を愛する多くの人たちに読んで欲しいと思うと同時に、この施設を生んだ大阪府知事はじめ府庁の関係者には、是非とも読んで欲しいと思う。

 物語は、「ワッハ上方」が平成8年11月にオープンするところで終わっているが、実はオープン以後順風満帆というわけにはいかず、多くの課題をかかえ前途多難の道を歩んでいる。そのことを憂慮して、著者は「あとがき」のなかで次のように書いている。「今一度、上方演芸発祥の地である大阪府が、大阪を象徴する文化の保存と振興に意義を感じ、設置した「ワッハ上方」について、その設置目的を原点に返って議論し、事業のあり方とその事業の実施方法について長期的な方針を打ち出すべきではないか」。
 私自身、「ワッハ上方」創立に当たっての基本構想を提出した「上方演芸保存・振興検討委員会」の委員長をしていた関係で、「作った男たち」の一人として、物語のなかに登場しているが、今回の著書を読んで、私は自分の知らないことをずいぶんと教えられた。府庁のなかで関係した職員の方々の熱情と努力、吉本興業と大阪府との交渉経過など、まさに上方文化のために燃えた人々が手を取り合ったからこそ「ワッハ上方」が誕生できたのだということを再認識することになった。
 著者が紹介してくれている私の言葉を書き記しておきたい。今もこの考えは変わらない。
「「ワッハ上方」が持っている大阪にとっての意義や文化的価値について、大阪府が自信と誇りを持って認識しておくことが、なによりも大切です。「ワッハ上方」は、「大阪の個性」であり、「大阪の誇り」であり、地域文化を内外に発信できる「大阪の情報源」であることを、知事はじめ府のスタッフが深く認識し、そのことを内外に知らしめる努力をする必要があります。何はともあれ、「ワッハ上方」を存続していくことが大切です。「ワッハ上方」は基本的には資料館で、50年、100年と後世につないでいく使命を持った施設ですから、難局にあっても、その点をしっかり押さえておくことが大切です。原点を風化させると、やがて人々の支持を失いかねません。」

   


「ワッハ上方を作った男たち」への書評 4

 

◆読売新聞(6月19日付朝刊)でも報道

 

「ワッハ上方」本 霊前に報告    きよしさん「火付け役」服部さん宅訪れ

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霊前に報告する きよし師匠

本を開き典子夫人と思い出を語るきよし師匠

   「府立上方演芸資料館」

  構想を提案した前参議院儀員でタレントの西川きよしさんらが18日、同館建設に携わり、4年前に亡くなった元府教育長・服部正敏さん宅(高槻市)を訪れ、ワッハ上方が完成するまでの舞台裏を描いたドキュメンタリー小説「ワッハ上方を作った男たち」(毛馬一三さん著)の出版を霊前に報告した。
 同館は、漫才や落語など上方演芸の資料を集め、ミナミに1996年にオープン。
 きっかけは、西川さんが府東京事務所長だった服部さんに、漫才師・砂川捨丸さん愛用の鼓を展示保存する方法がないか、相談したことだったという。
 こうした経緯を綴った小説は5月に出版。後に同館の担当部長にもなった服部さんを「『火付け役』から『見届け役』に収まった」と表現している。

 仏壇に向かい、手を合わせた西川さんは、「公務員、サラリーマン、芸能人らが一つのロマンに集結した姿を知ってもらえたら」と話し、服部さんの妻・典子さんは本を手にとり、「主人が西川さんからお話をいただいて喜んでいたのを思い出す」と懐かしんでいた。

 「ワッハ上方を作った男たち」への書評 3

 

◆「読む」・「笑いの殿堂誕生の内幕」   日経6月6日夕刊
 
「ワッハ上方を作った男たち」(毛馬一三著)

                  (西日本出版社・1,500円=税抜き)


  大阪の庶民文化、上方演芸の資料を保存・展示し、生の「お笑い」の発信基地ともなっている「ワッハ上方」。

 その誕生の内幕を描くドキュメンタリーだ。
 上方漫才界の先駆者、砂川捨丸の鼓を保存、展示する場所探しから始まった。 捨丸は、音頭から万歳(まんざい)、さらに漫才になっていく1900年から71年まで、その第一人者として舞台に立ち続けた功労者だ。その貴重な小道具の鼓が

放置されていた。
 参議院議員を務めていた漫才師の西川きよしがもらした「捨丸の話」から、「資料館」の話へ発展。大阪府、テレビ局、興行界を巻き込み、現実化していく。
 その課程が、当事者の言葉で生々しく再現される。”笑都”大阪の演芸の過去、現在、未来をつなぐ拠点が出来あがるまでのドタバタ劇は、下手な漫才を見るより興味深い。

 

 「ワッハ上方を作った男たち」への書評 2

   

   ◆「ワッハ上方の大切さ」 上方演芸ファンA(大阪在住)
 
   文化を高尚なものから低俗なものというランクづけをして、それに親しむ人たち

  の数をかけると、圧倒的に大衆芸能に軍配が上がるでしょう。

   それ故、そうした大衆芸能の痕跡を残すことにとても意義があると思います。
   その大衆芸能のメモリアルを残そうとした人達のドラマを目の当たりにしてとても

  感動しました。

   「ワッハ上方」の設立に向け、思いある人達の出会いと、それを仕事として実現さ

  れた方々にエールを送ります。

 
   あらためて「ワッハ上方」の大切さを再認識いたしました。

 「ワッハ上方を作った男たち」への書評 1

 

 ◆書評 「読ませるねぇ」 石岡荘十(東京在住) 

 元NHK記者で筆者と友人の石岡荘十氏からのメッセージである。
 同氏は、昨年11月自らの体験に基ずいて綴った「心臓手術〜私の生還記〜」を「文芸春秋」から出版、医学界・患者会の話題をさらった”時の人”。
 
 『昨日、貴兄の新著「ワッハ上方を作った男たち」を入手、今日一気に読了した。

 読ませるねぇ。
文体は短文の積み重ねで文章のスピード感がなんともいいねぇ。

 拙著「心臓手術〜私の生還記〜」についても、明かせば「文芸春秋」の編集者からそんな過分な評価を頂いている。

 テーマは違うけど、何故か文体は似てるねぇ。
小説というより、ノンフィクションとして秀逸だと思う。
NHK「プロジェクトX」も真っ青といったところだな。

 こんなに名文を書く男だっけ? と感銘。就中、160〜161ページの6行は気に入った。

 もともと取材と執筆が本業だった同士だから取材が緻密なのは当然としても、いま思えばお互いに、(NHKの)ニュース原稿では、持ち前の実力を存分に発揮出来なかったわけだ。

 最近の「上方のお笑い」の、あのドタバタについては、正直好みではないが、貴兄の新書を読んで見直して見ようかなという気になったよ。
 ほんとのところ、「ワッハ上方」ってのは初耳だったから、今度大阪に行った時は、必ず足を伸ばしてみる。

 貴兄が何でまた大阪に腰を落ち着けたのか、かねてから不思議に思っていたが、あれだけの取材ができる人脈があれば、無理もない。

どうせ貴兄のことだからまたなにか新しい作品を目論んでいるに違いない。
 ご健闘を祈ります。

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