乳がんで闘病中だった歌手・川村カオリさん(本名・かおり)が28日午前11時1分、都内の病院で亡くなった。38歳だった。04年に乳がんで左乳房を摘出。昨年1月にリンパ節など3カ所への転移が見つかったが、すでに手術ができない状態だった。がん細胞に全身をむしばまれながらも抗がん剤治療を続け、5月には都内でデビュー20周年記念ライブを行うなど、最後まで闘う姿をファンに見せ続けた。葬儀告別式は親族、友人のみで行う。喪主は弟・忠(ただし)さん。
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がんと闘い続けた川村さんが、ついに力尽きた。今月1日には自身のブログで、新たながんが発見されたことを告白。入退院を繰り返しながら抗がん剤治療を続けていたが、6月に再入院。そのまま退院することなく、最後は親しい友人らに見守られながら息を引き取り、壮絶な闘いに幕を下ろした。
命の炎が消えるまで川村さんはミュージシャンであり続けた。ラストステージは今年5月5日のデビュー20周年記念コンサート。舞台裏で点滴を打ち、座ってのパフォーマンス。デビュー曲「ZOO」を歌った時だけはいすから立ち上がり熱唱、ファンから喝さいを浴びた。
抗がん剤の副作用で1週間寝たきりになることもあったが、それでも創作を続け、同月27日にはアルバム「K」を発売。スタッフの心配をよそに、気力で最後の作品を完成させた。
最初にがんが発覚したのは04年。乳がんで左乳房を切除した。ロシア人の川村さんの母も乳がんで98年に47歳で亡くなっており、当時は複雑な思いにさいなまれた。しかし、05年に復帰してからは「がんは虫歯みたいなもの。早く治せば大したことない」「年に一度はマンモグラフィー検査を」と、女性にがん検査を受けることを積極的に訴えた。
その後、仕事復帰したが、昨年1月にリンパ節、肺、骨にがんが転移。すでに手術での切除はできない状態で、抗がん剤治療に希望を託した。同年9月に「アーティストの自分が、何か発信することで、勇気を届けることができたら」とあえて病状を公表した。
闘い続けた川村さんを支え続けたのは長女(7)の存在だった。「娘のために生きたい」と闘病もありのままに見せた。自身のステージを間近で見せ、故郷のロシアをともに訪ねるなど、親子の時間を積み重ねた。母の強い愛は、天に召されても消えることはない-。