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安井行生のロードバイク徹底インプレッション
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安井行生プロフィール
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TREKの非OCLVカーボンバイク、その実力は?
あれほどOCLVとmade in USAの優位性を強調するトレックの「TAIWANメイド・非OCLVカーボンバイク」は果たしてどうなのか。狼の皮を被った○○か、それとも…?今回も安井はちょっと意地悪視点で眺め、考え、走り、感じ、もう一度考え、そして評価の仕方に悩み悶えながら、愛と偏見に満ちた楽しく正しい自転車評論を目指す。メーカー担当者よ、怒るなかれ。
(text:安井行生 photo:我妻英次郎/安井行生)
2006年、トレックのロードラインナップに5000というバイクがあった。姿かたちは5900、5500、5200などの名車たちとソックリだったが、素材が違った。TCTカーボン。TCTカーボン?トレックのカーボンフレームなのにOCLVじゃねぇの?当時の僕は思ったものだ。
TCTとはなんぞや?マドン4.7というバイクを評する文章は、そこからスタートしなければならない。TCTとは、「トレック・カーボン・テクノロジー」 の略らしい。資料によると、「高い開発力と技術力を誇るトレックUSA社の定める独自の厳しい品質管理基準をクリアした」 素材なのだそうだ。もちろんこれではなんのことかサッパリ分らないし、他のメーカーも 「ウチのだって厳しい品質管理基準をクリアしているさ!」 と反論するに違いない。要するに普通のカーボンということなのだろう。

その5000が上位機種とそっくりに進化し、マドン4シリーズとなった。OCLV系マドンのフルモデルチェンジにともなって、TCTカーボンも上位機種に倣ったというわけである。
モールドはOCLVフレームと同一かと思っていたが、よく見るとBBはノーマルになっているし (OCLVフレームのBBはインテグレーテッド)、OCLVのシートマストに対して4シリーズはノーマルタイプになっている。BB幅が違うということは、ダウンチューブもチェーンステーも全く違うということである。ということはわざわざ4シリーズ用にモールドを用意したのだろうか。内蔵されていたブレーキケーブルも通常タイプになっているし、フォークも違う。No90という設計思想によりクラウンにキャップが被せられるOCLVに対して4シリーズは通常のインテグラルフォークだ。
といっても、よほど詳しい人が見ない限り違いを見つけ出せないほど、フレーム全体のシルエットは5や6シリーズのマドンと酷似する。上手い販売戦略だとも言えるだろう。グラフィックも素晴らしい。シャープで洗練されており、清潔で上品で、いかにも最新モデルという感じでカッコいい。ゴツゴツしたところや凹凸をできる限り少なくしたロードバイク・モダンデザインの完成近し。最近のトレックのグラフィック・デザイン部門はいい仕事をする。

スペック
BRAND LOGO 1
3 2
良い悪いは別にして、OCLV系とは全くの別物
いまさらソツのない無味無臭無害な文章で誤魔化す愚は避けたい。正直に言わせていただくと、あまりにも僕の好みと駆け離れているので評価に困った。こういった場合、ライターとして最もスマートでクレバーな方法は、もちろんしっかりと "分別をわきまえて"、「快適性に優れているが性能も決して悪くなく、レースからロングライドまで幅広く使えるコストパフォーマンスに優れたオールラウンドな一台」 とでも書いて済ませておくことである。どこにも波風が立たず、自らの保身の面から見ても有利であり、一部方面 (それが読者ではないことは確かだが) からはありがたがられたりもするだろう。

しかし、それでは僕がここでこうして文章を書いている意味がない。
「僕らはいつまで、この欺瞞に充ちた文章を書き続けなければならないのか?」
この自転車ジャーナリズムに身を置く人が一度は抱えた疑問ではないだろうか。断っておくが、インプレッションなんてものは純粋なる主観の塊である。僕は 「快楽主義車」、「走りの求道車」、「刺激に満ちた自転車」 が好きなのだ。

といっても、それはあまりに個人的な感想であり、決してこのマドン4.7を否定するものではないので、難しいところだ。一くくりに 「ロードバイク」 というにはあまりに性格が違いすぎる、それだけだ。単純に、カーボンという素材によってロードバイクという乗り物の幅が大きく広がった、ただそれだけのことだ。
それに、今回トレックが用意してくれたのは、50という小サイズの試乗車である。それが、以下で僕が厳しく評価するハンドリングをはじめとするライドフィール全般に影響を与えている可能性は否定できない。以前、6.9から4.5までマドンの全ラインナップを同時に試乗するという企画の撮影に同行したことがある。そのとき、担当のベテラン自転車ジャーナリスト氏 (長身) は、「OCLV redはピーキーすぎる。4シリーズは剛性も十分で、これならレースにも使える。オレみたいな脚力の持ち主は4シリーズが一番乗りやすい」 と絶賛していた。僕が受けた印象とは真逆である。インプレッションなんて、所詮そんなものだ。僕のような人間が4.7のようなバイクを評すること自体間違っているのかもしれないが、今回はそのあたりを前提に置いて読んでいただけるとありがたい。

とにかく僕は、マドン4.7にシリアスさは全くない、と感じた。現代のカーボンフレームの基準で判断すれば、柔らかいということになる。フレーム全体がフニャフニャとたわむ感じはさすがにしないが、加速はそれなりでキビキビした感じには乏しい。表面がソフトなのだ。
価格差があるので当然といえば当然だが、見た目そっくりのOCLV系とは全くの別物である、と言ってしまっていいと思う (しかしこれは、決して4.7を否定するものではない)。レースを視野に入れているのであれば、少し無理をしてでもマドン5.2を勧める。あれほど完成されたロードバイクにはなかなかお目にかかれない。性能差を考えれば、12万円の価格差は決して大きいものではない。

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