処方せん記載変更は「最低でも5年かかる」
厚生労働省は7月29日、「内服薬処方せんの記載の在り方に関する検討会」の第3回会合を開き、病院内の情報システムに精通した委員らからヒアリングを行った。この中で、筑波大附属病院医療情報部の大原信部長は、処方せんの記載を1日量から1回量に変更する場合の移行期間について、「最低でも5年かかる」との見通しを示した。
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電力中央研究所上席研究員の佐相邦英委員は、内服薬の処方せんの記載について「1回量記載が世界標準」「注射薬などと同じ表現方法になり、ルールがシンプルになる」と指摘し、将来的には1回量記載に統一することが望ましいとした。
一方、1回量記載に切り替えた場合は、医師や病院に負担が掛かるため、現時点での解決策として1回量、1日量の両方を記載し、「薬名」「1回量」「1日回数」「1日量」「日数(回数)」を正確に書き込ませるよう処方せんの書式を変更することを提案した。
その上で佐相氏は、1回量、1日量の両方が記載された処方せんの使用と並行して、1回量ベースのシステムに順次更新していくべきとした。
また大原氏は、1日量から1回量に記載を変更した際のシステムの対応について、▽処方オーダシステムの変更▽看護支援部門や医事会計システムなど部門システムとの連携の変更▽過去の患者の薬歴が1日分、1回分のどちらで記載されているかの整理―が必要とした。
その上で、記載の変更時期について、「病院情報システムの更新の機会が唯一、変更するチャンス」と指摘し、多くの施設が時期を統一して変更を実施することは困難との見通しを示した。大原氏は移行期間について、病院の場合は「最低でも5年かかる」と指摘し、「この間に複数の医療機関から処方せんが集まる調剤薬局では混乱する」などと述べた。
大原氏は現時点で早急に対応可能な対策として、「医師の処方オーダについては1日量を維持しつつ、用法として1回服用量を処方せんに明示する」「紛らわしい用法用語の使用をやめる」などを提案。その上で、あるべき姿として佐相氏と同様に、1回量記載に統一して運用することを示した。
ヒアリング後の意見交換では、東京慈恵会医科大附属病院の森山寛院長が「(1日量か1回量の)どちらを優先するかであって、片方がなくなってもいいという話ではない」と強調。「ほとんどの医師は、1日量の上限をかなり気にするので、それはどこかで押さえておかないといけない」と述べた。
社会保険中央総合病院の齊藤壽一名誉院長は、「大学で処方せんについて教えようにも、教える中身が決まっていない。医師の国家試験でも、処方せんに関する問題を出そうとしても正解がない」と述べ、処方せんの書式が決まっていないことが医師や薬剤師の教育面でも悪影響があると強調した。
更新:2009/07/29 22:49 キャリアブレイン
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