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きょうの社説 2009年7月29日
◎北陸新幹線の認可 3県知事が新潟の説得を
北陸新幹線長野−金沢(白山総合車両基地)の線路や駅舎などの整備に必要な建築認可
をめぐり、新潟県の泉田裕彦知事がまたぞろ受け入れに難色を示している。今度は北陸、上越両新幹線の間に取り残されるような形になる信越線への配慮を、同意の条件に挙げているという。建築認可が遅れれば、せっかくの今年度補正予算の一部の執行が滞る恐れがあり、20 14年度の金沢開業に向けて、マイナス要素にはなっても、プラスになることはあり得ない。そうした事態を回避するためにも、ここは北陸3県の知事が泉田知事の説得に乗り出すときではないか。 政権交代が次第に現実味を帯びてきているにもかかわらず、民主党の北陸新幹線につい ての考え方は、まだ明確ではない。ほどなく実現するかもしれない民主党政権の下でも、新幹線の整備を遅らせないためには、沿線自治体が連携してその有用性を強く訴えていくことが必要だろう。大事な時期だからこそ、足並みをそろえることが肝要であり、新潟県を早く結束の輪に引き戻したい。 北陸新幹線の開業後、北陸線はJRから経営分離される。泉田知事は、これに伴って信 越、北陸線経由で新潟や長岡と直江津、糸魚川を結んでいる特急列車などが廃止され、新潟県内の南北の交通が分断されることを懸念しているという。ただ、そうなる可能性があることは、ずっと前から予想されていたはずである。 新潟県も、それを承知した上で県内区間の着工に同意したのではなかったのか。県が県 民の利益のために国に意見を述べるのは悪いことではないが、今回の要望については「なぜ今になって」という思いを禁じ得ない。 加えて、要望を国に認めさせるために、肝心の北陸新幹線の整備を「人質」にとるよう な泉田知事の手法を、北陸3県としては認めることはできない。同知事は先ごろも、新幹線建設費の地元負担分の予算計上を留保して、早期開業を期待する3県の住民らに気をもませたばかりであり、3県の意思を知事が代表してはっきりと伝えてもらいたい。
◎最低賃金の改定目安 金額も制度も見直したい
中央最低賃金審議会の小委員会が決めた今年度の地域別最低賃金の改定目安は、最低賃
金が生活保護費の給付水準を下回っている12都道府県に対しては「引き上げ」を、石川、富山など給付水準を上回っている35県については「現行水準の維持」を基本とする異例の形になった。最低賃金の引き上げ見送りは、世界的不況による企業業績の悪化に配慮したものであるが、引き上げの是非の議論だけでなく、都道府県によって異なる最低賃金のあり方自体についても根本的に考え直すときにきているのではないか。民主党はマニフェストの中で、全労働者に適用する「全国最低賃金」(時給800円を 想定)を新設する方針を示している。これも一つの方法であろう。最低賃金法は地域別最低賃金に関して「地域の労働者の生計費や賃金、事業者の賃金支払い能力」に加え、「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営める」ことに配慮して定めるよう求めている。 現行制度では、所得水準の違いなどで都道府県をA〜Dの4ランクに分け、例年、ラン クごとに改定目安が示されることになっている。現在の最低賃金額は例えば、Aランクの東京都が766円、Dランクの沖縄県は627円と100円以上の差が付いている。 しかし、憲法に則した最低賃金法の理念や、「働く貧困層」の解消が経済・社会の重要 課題になっている現状を考えれば、まず「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する全国共通の最低賃金を定め、その上で地域事情などを加味するのが妥当ではないか。 中央最低賃金審議会の答申を受けて今後、都道府県ごとの最低賃金審議会で具体的な金 額を決定することになるが、生活保護費の水準より低い「逆転」現象は速やかに解消する必要がある。 石川、富山の現行最低賃金は各673円、677円で共に生活保護費水準を上回ってい るとはいえ、全国平均(703円)とはなお開きがあり、決して十分な額とは言えない。地域の中小零細企業の経営環境は厳しいが、さらなる引き上げ努力が望まれる。
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