インドネシア史上2回目の直接投票による大統領選は開票作業が終了し、ユドヨノ大統領の再選が確定した。任期は5年で、長期政権となる2期目のユドヨノ政権が指導力を発揮できれば東南アジア諸国連合(ASEAN)など国際社会で存在感を増すことになろう。
選挙管理委員会によれば、三つどもえの戦いとなった今回の大統領選でユドヨノ大統領の得票率は60・80%に達し、第1回投票で過半数を獲得した。返り咲きを目指したメガワティ前大統領は26・79%、ユドヨノ氏と決別したカラ副大統領は12・41%にとどまった。
有権者は約1億7600万人で、国民の直接選挙で選ばれる大統領選としては世界最大規模だ。世界最多のイスラム教徒人口を擁しているだけに、民主主義がしっかりと根付けば国際社会の安定にとって喜ばしい。
ユドヨノ氏は、国軍改革派のエリート軍人だった。2004年の大統領就任後、アチェ独立紛争の解決やテロ対策を進めて治安を回復させた。汚職撲滅にも積極的に取り組んだほか、原油高騰や金融危機に対応して貧困家庭に現金直接給付を繰り返した。
圧勝での再選理由は、独裁的なスハルト政権が1998年に崩壊した後の政情不安を取り除いたことが大きかろう。清廉なイメージでも支持を広げた。
豊富な労働力と石油・天然ガスなどの地下資源に恵まれたインドネシアは潜在能力が高い。国内政治が安定し、経済発展が加速すれば、近い将来にはブラジル、ロシア、インド、中国の新興4カ国(BRICs)の仲間入りをするとの見方もある。
政権2期目の課題は、世界的な景気低迷にも負けない力強い経済成長だ。ユドヨノ氏は、副大統領にエコノミストでインドネシア銀行(中央銀行)総裁だったブディオノ氏を指名している。経済対策への意気込みがうかがえる。日本も一段の連携強化が欠かせない。
懸念されるのは、テロの再燃だ。大統領選後、インドネシアの首都ジャカルタで米国系高級ホテル連続爆弾テロが発生し、政府は東南アジアのイスラム地下組織ジェマ・イスラミア(JI)系が関与したと断定した。JIは2002年のバリ島爆弾テロ後、厳しい摘発によって壊滅状態とみられていたが、組織再建の可能性が指摘される。
テロは再選のユドヨノ政権に対する挑戦状との見方もある。治安が悪化すれば経済発展は困難になろう。
外資系保険会社アリコジャパン(東京)から保険料をクレジットカードで支払っている顧客の情報が大量に流出し、カードが不正使用された可能性が高いことが明らかとなった。
流出の可能性のある契約は当初発表の11万件から13万件へ、不正使用の可能性のあるカード会社からの照会件数は倍以上の約2200件に達した。警視庁は報告を受け、事実関係を調べている。
アリコは、内部から情報が漏れたか、外部からコンピューターに不正アクセスをされた可能性があると説明している。再発防止策を講じるとともに流出経路の解明を急がねばならない。
7月上旬から不正使用が始まったとみられ、家電製品など換金しやすい商品が購入されたケースもあった。不正使用が確認されたのは、2002年7月から08年5月までに通信販売で保険契約を申し込んだ顧客のうち、カードで保険料を決済し、証券番号の下1けたが2か3の契約者である。
アリコが設けた電話相談窓口には契約者の問い合わせが相次ぎ、一時は電話がつながらない状態となった。カードの情報さえ手に入れば他人の名前で何でも購入できるだけに、顧客の不安は当然だろう。解約を申し出る人もいる。信用が第一の保険業で起きてはならない事態だ。
企業を舞台とした個人情報の流出は後を絶たない。4月には三菱UFJ証券の元部長代理が148万人分の顧客情報を持ち出し一部を名簿業者に販売する不祥事が発覚したばかりだ。昨年はファイル交換ソフトを介しての流出も起きている。
アリコの情報流出は単なる一企業だけの問題ではない。大量の個人情報を扱う企業や自治体は常に点検を怠らず、厳重な管理が必要である。
(2009年7月28日掲載)