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「無呼吸症」1審無罪 死亡事故、逆転有罪

名古屋高裁判決 居眠り認めず

 愛知県豊橋市で2008年3月、大型トレーラーを運転中に赤信号を無視して死亡事故を起こしたとして、危険運転致死罪に問われ、1審・名古屋地裁豊橋支部が睡眠時無呼吸症候群を理由に無罪とした、名古屋市中川区、会社員荒浪裕之被告(45)に対する控訴審判決が27日、名古屋高裁であった。片山俊雄裁判長は「赤信号を認識したうえで、故意に無視して交差点に進入した、とする捜査段階の供述調書は信用できる」として、1審判決を破棄し、荒浪被告に懲役5年(求刑・懲役8年)の実刑判決を言い渡した。

 被告が同症候群だったかどうかは、判断しなかった。弁護側は上告する方針。

 1審は、起訴事実を認めた供述調書について、残された走行記録に加速した形跡がないことなどを理由に、「交差点の約100メートル手前で、赤信号になる前に進入できると考えたという内容は不自然」と指摘し、「交差点直前で同症候群の影響で急に眠りに落ちた可能性を否定できず、故意に赤信号を無視したと証明できない」と判断していた。

 これに対し高裁は、調書について〈1〉事故後間もない時期から内容が一貫している〈2〉走行記録とも符合する――と指摘し、「十分信用できる」と判断。その上で、「被告は事故までの経緯を間断なく説明しており、睡眠に陥っていないことを示している」として、弁護側の主張を退けた。

 判決によると、荒浪被告は昨年3月5日、大型トレーラーを運転して豊橋市の国道1号交差点に時速50キロで進入し、横断歩道を自転車で渡っていた男性(当時46歳)をはねて死亡させた。

 弁護人の野呂汎弁護士は、「同症候群か否かという肝心の判断を避けている。運転手を処罰するだけで、病状への理解とケアを怠っては同種の事故は防げない」と話している。

 名古屋高検の松井巌次席検事の話 「適正妥当な判決だ」


自白調書の信用性 1、2審判断正反対

 名古屋高裁が逆転有罪としたのは、捜査段階の自白調書の信用性について、1審とは正反対の判断をしたためだ。

 危険運転致死罪は裁判員裁判の対象事件。「赤信号を認識して交差点に入った」と起訴事実を認めた調書と、「わずかな時間眠っていたかもしれない」とした法廷での主張のどちらが正しいのか。裁判官でさえ判断が分かれた今回のようなケースでも、裁判員は数日で結論を出さねばならない。

 取り調べや自白についての著書もある名城大法科大学院の小早川義則教授(刑事訴訟法)は、「人命を奪ってしまい動転している被告が、密室で捜査官に“言い訳”をすることは困難だ。裁判員に自白調書がどのように取られたのか分かるようにするためにも取り調べの可視化が必要だろう」と話す。いかに、自白調書の信ぴょう性を高めるか。検察側に残された準備期間は、わずかだ。

(松田晋一郎)


2009年7月28日  読売新聞)
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