自民、公明両党は7日、地球温暖化対策の指針となる「低炭素社会づくり推進基本法案」を衆院に提出した。民主党も「地球温暖化対策基本法案」を今国会に提出しており、与野党の案が出そろった。ただ、28日の国会会期末が迫り、審議する時間は限られている。衆院解散・総選挙に向けた環境マニフェスト的な色彩が強い。
政府は、地球温暖化対策の柱となる温室効果ガスの削減目標について、長期目標は「50年までに現状比60~80%減」、20年までの中期目標は「05年比15%減」に据えている。
民主党案は、長期目標とともに、「90年比25%以上減(05年比30%減)」という踏み込んだ中期目標を示すことで環境重視をアピール。その実現のため、地球温暖化対策税の導入や、太陽光発電など新エネルギーの固定価格買い取り制度創設を掲げた。
これに対し、与党案は「環境保全と経済発展の両立を図る」と明記し、安易な削減量拡大にクギを刺した。長期目標では政府方針を踏襲する一方、中期目標については「国際交渉に基づき設定」と具体的な数字を盛り込まず、「政府の政策決定の手足を縛ることがないよう配慮した」(与党幹部)。
中期目標が注目されるのは、13年以降の主要国の排出削減目標を決める国際交渉(ポスト京都議定書)が大詰めを迎えているためだ。各国は12月に開かれる「気候変動枠組み条約第15回締約国会議」(COP15)での合意を目指している。日本は中期目標を軸に交渉に臨むが、さらに踏み込んだ削減を求められる可能性もある。
目標の達成には、企業や家計の負担増は避けられない。20年を目標とする中期目標でさえ、太陽光発電を現状の20倍▽新車販売に占める電気自動車など次世代車の割合を50%に高める--などの高いハードルを越えなければ到達できないのが現状だ。
経済界は「中期目標ですら達成は厳しい。国際交渉で欧米や新興国に比べ不利な削減目標を強いられれば、日本の国際競争力の低下を招く」と訴えており、削減幅の上積みを伴う民主党案に警戒心を募らせている。
一方、「国際社会をリードするためには、踏み込んだ目標設定が必要」と主張してきた環境団体などは、政府・与党の対応を「不十分だ」と批判しており、国内の賛否は割れている。環境対策は国民生活や経済活動に直結する課題だけに、「総選挙の大きな争点になる」(自民党幹部)との見方も出ている。【赤間清広】
毎日新聞 2009年7月7日 20時58分(最終更新 7月7日 23時20分)