民主党、衆院選マニフェストを発表 外交安全保障面で現実路線への転換をにじませる
民主党は27日、「子ども手当」の支給などを柱とした衆議院選挙のマニフェスト(政権公約)を発表した。外交安全保障面では、現実路線への転換をにじませ、従来の路線との矛盾点などを突かれかねない要素もはらんでいる。
民主党の鳩山代表は「目的は、国民の皆さんが主役になる政治をつくり出していくこと」と述べた。
27日、民主党は、衆議院選挙のマニフェストを発表した。
「政権交代」と題された国民が主役となるための政策。
1つは、中学卒業まで、子ども1人あたり年に31万2,000円支給するという「子ども手当」で、公立高校の授業料は、実質無償化を実施するとしている。
また、官僚主導から政治主導で政策決定をするため、事務次官会議を廃止し、閣僚委員会を活用するとしている。
そのほか、ガソリン税などの暫定税率の廃止や高速道路の無料化など、国民の生活に直結した政策が掲げられている。
これらを実現するための予算は、その額16兆8,000億円にのぼる。
財源をどこから生み出すのかについて、鳩山代表は「各役所に対して、事業仕分けというものを行って、9兆円ほどの財源というものを見いだすことができる。必要ならば、『埋蔵金』などの手当ても行いたいと思っております」と述べた。
これに対して、麻生首相は「財源が無責任、極めてあいまい、ここが一番の問題です」と述べた。
自民党の細田幹事長は「手品じゃないですから、そして夢を売るだけではありませんから」と批判した。
しかし、鳩山代表は「公約が実現できなかったときは、政治家としての責任を取ります」と述べた。
会見で意気込んだ鳩山代表だが、あまり多くを語らなかった政策もあった。
2007年9月9日、当時の安倍首相は「民主党をはじめ、野党の皆さまのご理解をいただくために、職を賭して取り組んでいく考えでございます」と述べた。
自衛隊のインド洋での給油活動は、かつて時の首相が、自らの進退を懸けて延長を求めた。
一方、2007年10月2日、当時の民主・小沢代表は「戦争そのものなんですよ、油を供給するっていうのは」と述べた。
民主党は、憲法違反だとして、これに反対した。
給油活動を定めた新テロ特措法は、野党が過半数を占める参議院で否決され、あえなく期限切れとなり、海上自衛隊は一時撤収を余儀なくされた。
その後、衆議院で再可決され、給油活動は再開したが、民主党は反対姿勢を崩さず、2008年の政策集にも、新テロ特措法の延長反対を明記していた。
ところが、今回発表したマニフェストでは、この記述はない。
25日、麻生首相は「今は憲法違反じゃないんですか? おかしいとは思われませんか?」、「こういうのを『ブレた』っていうんです」と述べた。
26日、民主・鳩山代表は「ブレてはいません。わたしたちは、ある意味で進化はしているかもしれません。政権を取った翌日にですね、『全部、帰ってこい』なんていうむちゃなことができるはずもない」と語った。
外交政策で、現実路線にかじを切った形だが、ほかの野党の反応は冷たい。
社民党の福島党首は「野党がみんな反対をした法律です。なぜ、マニフェストからこのことを落とされたのか、理解はちょっとできません」と述べた。
自民党マニフェストは、31日にも発表するということだが、アピール合戦ではなく、政策論争に火がつくことになるのか注目される。
(07/28 00:24)