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メディアの恣意的な取材に対する最大の防御策は、自分のブログを持つと言うこと?

 「日本人がiPhone嫌いな理由」米誌報道に日本人有識者が訂正要求 : Gizmodo Japanを読んで。

 完全に二週ぐらい周回遅れのニュースですが、今日日経メディアラボさんにお邪魔してマスメディアとブログの関係について議論したこともあり、思い出してしまったのでメモを兼ねてご紹介しておきたいと思います。

 ざっくり話をまとめてしまうと、2月末にWiredのブログで書かれた記事で、林さんと平田さんの昔の記事のコメントが改ざんして引用され、それに対して二人が反論し、最終的にWiredが炎上したという話。


wired_iphonehate.png

 まぁ、こうやって書くと、よくあるメディアの取材がらみの話なわけですが。
 今回は日本から英語のメディアに反論しているというのが実に印象的な出来事です。

 詳細は、こちらの林さんの振返り記事をご覧いただければと思いますが、簡単に流れをご紹介すると。
 
2/26 まずWiredのブログで記事が書かれ
Why the Japanese Hate the iPhone | Gadget Lab from Wired.com
 (yebo blogさんによる翻訳記事はこちら

2/27 その後Twitter等で状況を把握した林さんが自身の英語ブログで反論
nobilog returns: My view of how iPhone is doing in Japan by Nobi

2/28 平田さんも反論のために特別に英語ページを作成して反論
About "Why the Japanese Hate the iPhone." : Daiji Hirata

 併行してこれらの反論を受けてApple Insider等でも騒動についての総括記事が掲載
AppleInsider | Japanese "hate" for iPhone all a big mistake

 そんなこんなでWiredは上記の記事に見られるように異例の謝罪コメントを追記する羽目になり、その謝罪自体がGizmodo等で取り上げられてさらに認知が広がるという流れのようです。


 先日のGoogleペイパーポスト騒動も、日本語のブログ圏からAsiajin経由で英語圏に伝播した事例でしたし、過去にもGoogleストリートビューについて樋口さんが書いた記事が、Global Voices Onlineに翻訳されて国境を越えたり、みたいな事例もありましたし、いわゆるメディアの記事の内容に対してブログから反論するみたいな話は日本でも増えてきている気がするので、それほど珍しい話ではないのかもしれませんが。
 やはり、日本から英語のメディアに謝罪させてしまった、という意味では印象的な出来事だったと思います。

 
 ちなみに、個人的に今回の騒動で思い出したのが、去年ぐらいにブログスフィアの共著者でもあるシェル・イスラエルのビデオキャスティングで聞いた、GMのCEO(たしか)がなぜブログをやっているかという理由の話。

 うろ覚えなので正確ではないですが。
 そのインタビューでは「これまでは、メディアがいい加減な取材をして、GMに対して批判的な記事を書いても反論することもできなかった。それがブログを通じて記者が間違っていることを指摘できるようになり、いい加減な記事を書く記者は恥をかくようになったので、良い緊張感を生むようになった」というようなことを言っていたと記憶しています。

 なんでも彼曰く、米国のメディアはGMを叩きたくて仕方がないので、GMのある車種と、ホンダの一回り小さいサイズの車種の燃費を比較したりと言うことをするそうです。

 つまり、彼にとって、ブログを書くという行為は、GMの記事を書いている記者に対する牽制の意味もあるわけです。
 そのビデオキャスティングを聞いたときは、そんなもんかなーとか、大企業の社長は大変だなーとか、のんきなことを思ったりしましたが。

 実はこれって、個人にとっても同じなんだな、と感じたのが今回の出来事です。


 メディアを通じたコミュニケーションって言うのは、間に人が入る以上、いろんなバイアスがかかったり、誤解が発生したり、情報の要素が抜け落ちてしまうこともあり得ます。
 でも、これまでは、取材をしてもらった後に、思わぬ形で自分の発言が使われたことに気がついても、泣き寝入りするか、報道内容の訂正を直接記者に要求するぐらいしか、取材される側には選択肢が無かったわけです。
 実際、報道内容の訂正に成功しても、小さな謝罪記事とか修正記事を書いてもらうことができるぐらいで、報道内容の認知度に比べれば、挽回できる度合いというのは小さかったと思われます。


 それが、現在のようにブログなりウェブサイトなり、自分なりのメディアを持っていれば、マスメディアの報道に対する反論を個人が行うことも物理的には可能になっているわけで。

 今回のWiredの騒動のように、記者が自分が書きたい記事を書くためにコメントを取りに来たというケースでも、報道内容に対して的確に反論することで、ある程度ダメージを回復することができる可能性があるわけです。

 あらためて考えると、これって凄い大きな変化ですよね。
 

 最近は芸能人がメディアを通じてではなく、ブログを通じて結婚や交際を発表したり、引退を発表したりということも増えているように思いますが。 

 それも、こういった企業のメディアと個人のメディアがフラットになっているネットならではの一つの現象なのかもしれないなーと、そんなことを改めて感じたりしています。

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