『Music in My Life』プロダクションノーツ
2ndアルバム『Music in My Life』の制作にあたってまず考えたのは、Kの自作曲をなるべく多く収録すること。というのも、デビュー・アルバム『Beyond the Sea』の表題曲で証明したKの作曲能力に私は大きな可能性を感じたからだ。Kの紡ぎだすメロディはそれが鼻唄であろうと掛け値なしに美しい。またキャッチーでもある。あと必要なものはリズムの解釈能力と構成力のみであった。私はそこに主眼を置き、多忙を極めるKのスケジュールの中から数日間を確保、二人きりでスタジオに篭って曲を作る時間に充てた。
この「作曲集中期間」は大きな効果をあげ、今回のアルバムには表題曲「Music in My Life」をはじめとして、シングル「ファースト・クリスマス」を含む3曲を収録することができた。また、その延長線上の作品とも呼べる自作曲「BLUE」も従来のKのレパートリーにはなかった楽曲。ヒップホップ・シーンを代表するスーパー・エンジニアD.O.I.氏との共作曲「Thirsty」ではエロ・モード全開の新しい顔を見ることもできる。
もちろんアーティストや作曲家からの提供作品もハイ・クオリティな楽曲が目白押しだ。前作にも参加してくれたゴスペラーズの黒沢 薫さんは提供曲「Again」では本格的デュエットの援護射撃。やはり前作に引き続いての参加となるシンガー・ソングライターの川口大輔さん、和田昌哉さんは美メロを提供。加えてノーナ・リーブス西寺郷太さん、そして松井寛・松本俊明・松原 憲の「松」トリオ各氏(いずれもMisiaへの作品提供で有名)も初参戦。さらには平井 堅、CHEMISTRYの仕事で知られる実力派サウンド・プロデューサーMaestro-Tも3曲でバックアップ、自らボーカル・ディレクションまで担当する力の入れよう。たまらない…。夢のような顔合わせがここに実現した
そう、これは夢のアルバムである。J-POPシーン最高の男性ソロ・ボーカル・アルバムが完成した、と言い切ってしまおう。これもファンの皆さんと音楽業界の皆さんにKを強く支持していただいたからこそ。プロデューサーとしてアルバム制作の全作業に関わり、Kの美声とボーカルの可能性に限界はないと確信した。自信をもっておすすめしたい。

2006年11月 松尾 潔
KIYOSHI“KC” MATSUO for Never Too Much Productions

01 _ Music in My Life
Lyrics:K&立田野 純 Music:K&福原将宜&松尾 潔 Arranged by 福原将宜

作曲集中期間の産物その1。ツアー・メンバーであるギタリストの福原氏を迎えてのジャム・セッションでできた曲。歌詞はKが発案したアルバムのキーワード”Music in My Life”をモチーフに世界観を広く展開させたもの。結果、スタジオ・ライブ的な緊張感に満ちた1曲となった。Kワールドの新機軸であり、自信作でもある。

02 _ ファースト・クリスマス
Lyrics:小山内 舞 Music:K&松尾 潔 Arranged by URU

作曲集中期間の産物その2にして、7枚目のシングル。映画『7月4日通りのクリスマス』の主題歌ゆえ、映画本編のロマンチックな雰囲気を大きく反映させた曲調と詞世界を心がけて作った。ここではKの伸びやかな歌声を存分にお楽しみいただきたい。作詞は「Only Human」の小山内舞、アレンジは「I Like It」のURU氏

03 _ Again feat. 黒沢 薫(ゴスペラーズ)
Lyrics:立田野 純 Music:黒沢 薫  Arranged by 宇佐美秀文

前作でも「Friends before Lovers」という素晴らしいミディアムを提供してくれたゴスペラーズの黒沢君が再びKにプレゼントしてくれたスロー・ジャム。作詞も「Friends…」の立田野純。黒沢君自ら「アイズリー・ブラザーズを強く意識した」と語る同曲とは異なり、今回は「JOEあたりの雰囲気」である。しかも客演まで!美声共演となった。

04 _ Together Forever 〜album ver.〜
Lyrics:小山内 舞 Music:James  Arranged by 二宮英樹

もとは「Only Human」のCDシングルにカップリング曲として収められていた小品。ライブでも人気の高かったこの曲を今回はロング・バージョンで再録音した。Kの声が「美しい音の出る楽器」であることを、これほど雄弁に物語る曲もないだろう。彼の声を誰よりも知るディレクターの二宮英樹氏が施したアカペラ調アレンジが心地よい。

05 _ Brand New Map
Lyrics:立田野 純 Music:和田昌哉  Arranged by Jin Nakamura&和田昌哉

6枚目のシングル。前作のオープニング・ナンバー「Cover Girl」の作曲者であるシンガー・ソングライター和田昌哉さんが再び楽曲を提供、「Beyond the Sea」のアレンジャーJin Nakamura氏が編曲した。特筆すべきはミックスをD.O.I.氏が担当していること。ここでのKとの出会いが次の曲「Thirsty」誕生のきっかけとなる。

06 _ Thirsty
Lyrics:立田野 純  Music:K& D.O.I Arranged by D.O.I.

人気エンジニアD.O.I.氏の提供したトラックにKがメロディをつけた異色作。名実ともに日本のヒップホップ・シーンの「音の番人」であり、CHEMISTRY、中島美嘉、SMAPといったビッグネームとの仕事でも知られるD.O.I.さんは、また優れたトラックメイカーでもある。タイトなリズム、ナスティな詞の世界をKも十分に楽しみながら歌っている。

07 _ Last Love
Lyrics:西寺郷太  Music:川口大輔 Arranged by 松井 寛

前作収録の人気曲「陸の上の舟」の作曲者であるシンガー・ソングライター川口大輔さんの心弾むメロディに、ノーナ・リーブスの西寺郷太さんが捻りのある歌詞をつけ、Kの大好きなMisia「INTO THE LIGHT」の作編曲者・松井寛氏が目の覚めるようなアレンジ…この黄金のトライアングルから生み出されたのは、ずばり、キラーチューン!!

08 _ Stay Right Here
Lyrics:小山内 舞  Music:松本俊明  Arranged by Maestro-T

そのMisiaの最大のヒット「Everything」の作曲者として有名な松本俊明氏の超絶美メロ。小山内舞が作詞したこの曲は、実は昨年春からデモ制作に着手しつつも改良を重ねてきたもの。今回のアルバム収録を機にMaestro-T氏がアレンジのみならずボーカル・ディレクションも担当し、バージョンアップした形で収録することができた。

09 _ 朝の光、風の匂い
Lyrics:立田野 純 Music:K&松尾 潔  Arranged by Maestro-T

作曲集中期間の産物その3。Kと私がスタジオのキーボードに向かいシャッフル調のリズムと戯れている間に、この曲の原型がまずできあがった。ちなみにその時の仮タイトルは「天使と悪魔」(!)というもの。その後いくつかのスタジオをハシゴしながら構成を練り直し、Maestro-Tの手でハイクオリティなサウンドに仕上がった。

10 _ The Day
Lyrics:小山内 舞  Music:tetsuhiko & tomoji sogawa Arranged by Jin Nakamura

5枚目のシングル。デビュー・シングル「Over…」以来3枚のシングルの作曲を手がけたtetsuhiko氏と十川知司氏の提供楽曲。Kの得意とするタイプのバラードであり、安定感は抜群である。Jin Nakamuraさんの丁寧なアレンジもKの伸びやかなボーカルを引き出している。エバーグリーン感に満ちた一曲。

11 _ Blue
Lyrics:田中花乃  Music:K  Arranged by Maestro-T

Kの単独作曲。彼が自宅で録音したシンプルなデモを受け取った私がまず意識したのはスペンサー・デイビス・グループやスタイル・カウンシルといったUKのブルー・アイド・ソウルのヒーローたちだ。オルガンの中西康晴さんの起用が肝となった。目を凝らして中西さんのプレイを観察していたKの真剣な表情が忘れがたい。これもMaestro-T編曲。

12 _ 星の想い
Lyrics:小山内 舞  Music:松原 憲  Arranged by 松原 憲

これも「Stay Right There」と同時期から制作に取りかかっていた曲。Misia、平井堅等への楽曲提供で知られる松原憲さんの作編曲。彼特有の美麗なストリングス・アレンジが壮大なイメージを喚起し、まさに星空の下で深呼吸しているような印象の音世界となった。Kの声にもどこか夜露に濡れているような艶が。