1月13日、腫瘍(しゅよう)が良性であってほしいと祈りながら、国立病院機構大阪医療センターに向かう。入院生活が始まったのだ。
3日後、ドリルで左大たい骨に穴を開け腫瘍組織を取り出した。検査の結果、「良性の可能性も」との見立てに気分は楽になった。手術は1月30日と決定。良性ならば骨から腫瘍をかき出し、人工骨を埋めるだけですむ。
風向きが変わったのは手術日の5日前。担当医は「嫌なものがあるかもしれない」と言った。27日には、病名が確定した。悪性だった。国内では多くても年間数人しか発症しないという毛細管拡張型骨肉腫。骨肉腫の特殊型なので悪性か良性かの特定が難しかったと説明を受けた。
「助かるんですか」と聞くのがやっとだった。「5年間は油断できないが、8割は治る」と担当医。転移阻止のための化学療法も半年間かけて行うことになった。「死なないのだから現実を受け止めろ」と自分に言い聞かせるしかない。
私は、どのような困難にも打つ手があると信じてきた。ただ、今度ばかりは、その思いだけではどうしようもないと気が沈んだ。<社会部・佐々木雅彦(43)>
毎日新聞 2009年7月28日 地方版