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飲酒運転事故が増加傾向 甘い認識違反後絶たず

繁華街近くで一斉検問を実施する警察官=仙台市青葉区国分町

 宮城県内で飲酒運転の違反が後を絶たない。社会の要請で厳罰化が進む一方、飲酒による人身事故は昨年を上回るペースで推移している。その背景には、ドライバーの「自分は運転しても大丈夫」という認識の甘さが浮かんでくる。罰則や行政処分が厳しくなったことを知らない人も多く、県警は、広報活動と徹底した取り締まりに力を入れる。(報道部・古賀佑美)

<聴聞の場で哀願>
 「3時間寝たし、アルコールが残っているなんて深く考えなかった。お願いですから免許を取り消さないでください」

 県運転免許センター(仙台市泉区)の聴聞室。太白区の20代の会社員男性がうなだれながら訴えると、県警の交通聴聞官は「飲酒運転は故意犯。厳しい目で見られるのを覚悟しておいてください」とくぎを刺した。

 重い交通違反を犯したドライバーから意見を聞く聴聞は、週3回行われている。違反時の状況を聴聞官が聞き、免許取り消しや停止処分を出す県公安委員会に報告する。行政処分が強化された6月以降、違反の累積から、酒気帯び運転でも免許取り消しになるケースが増え、聴聞に訪れる人が絶えないという。

 県警運転教育課は「『ほかに運転する人がいなかった』『むしゃくしゃしていた』など、軽い気持ちで飲酒運転をしている」と頭を抱える。

<巧みに検問逃れ>
 県警によると、今年1〜6月の飲酒運転の摘発件数は261件に上る。人身事故は前年同期比2件増の59件で、死者は3人増の7人。飲酒運転事故の致死率(死傷者に占める死者の割合)は約8%で、全体の人身事故の約11倍に相当する。

 重大事故につながる飲酒運転について、県警が違反者89人に実施したアンケートによると、約6割が「自分は大丈夫との認識の甘さがあった」と回答。約8割が、過去に飲酒運転をしても捕まらなかった経験があるドライバーだった。

 県内各署は連日、警戒を続けているが、県警交通指導課は「取り締まりをしにくい裏道や高速道を使ったり、郊外で運転代行を降りて自らハンドルを握ったりと、巧みに検問をかいくぐる例も頻繁にある」と説明。飲酒運転の環境をつくった飲食店経営者や同乗者を摘発した例も1〜6月で10件に上るなど、モラルの低下は著しいという。

<飲食店指導に力>
 一方、県警が6月以降に飲酒運転で免許取消処分になったドライバー26人に実施したアンケートで、約7割の18人が行政処分が厳しくなったのを知らなかったことが判明した。

 県警交通企画課は「飲酒運転に対する厳しい罰を知ってもらうことが第一」とし、免許更新時講習での広報などを積極的に行う方針。県交通安全協会は飲食店を訪問し、車での来店者には運転者(ハンドルキーパー)を決めてもらい、酒類を出さないよう指導を強化している。

 「免許を取り消されたことで仕事を失い、離婚された人を何人も見てきた」。交通聴聞官はこんな悲話を漏らしながら、「飲酒運転が悲惨な結果と大きなリスクをもたらすことを忘れないでほしい」と強調した。

[飲酒運転の厳罰化]2007年9月の道交法改正で、酒酔いは「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」から「5年、100万円」に、酒気帯びは「1年、30万円」から「3年、50万円」に引き上げられ、酒を提供した飲食店や同乗者にも罰則が設けられた。今年6月には酒気帯び運転の行政処分が厳格化され、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.25ミリグラム以上は2年間の免許取り消し(改正前は免許停止90日)、0.15ミリグラム以上0.25未満は免許停止90日(同30日)となった。このほか、免許を再取得できるまでの欠格期間が最長5年から10年に延ばされた。


2009年07月28日火曜日

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