『成長のジレンマ』
これは勝手に命名させてもらいました。多くの就活生・社会人が陥いるであろう罠です。
本当に成長する人は周りに貢献し、周りの助けを得ることができる人
まず、僕が内定者だった頃の当社の社長との会話を紹介したいと思います。
「自分の成長を考えている人と他人への貢献を考えている人、どっちが成長すると思う?」
今考えると恥ずかしいのですが、こう答えました。
「自分の成長のことを考えている人だと思います。」
理由は簡単でした。なぜなら就職活動で出会った社会人は、得てして自分に対する成長意欲が非常に高かったからです。私の答えに対して、社長はこう教えてくれました。
「それは違う。恐らく、どちらの人も速度は違えど、成長するはずです。しかし、本当に成長する人は周りに貢献し、周りの助けを得ることができる人です。」
当時「なるほど。確かに。」と納得したことを覚えています。しかし、実際にこの言葉の意味を理解することになるのは、採用担当を始めて半年くらい経った頃でした。その言葉の意味について書いていこうと思います。
成長意欲をアピールする就活生
よく就活生の面接をしていると、「御社で成長できると思ったからです。」「御社でなら新しいビジネスに取り組めるチャンスがあると思ったからです。」という学生が後を絶たない。恐らく「成長意欲があります」ということをアピールしたいのでしょう。
確かに成長意欲が無い人よりは、成長意欲があった方が絶対的に良い。しかし、上記の発言をする人は基本的にNGです。
なぜ成長意欲をアピールするのはNGなのでしょうか?そして、なぜ成長したい人ほど成長できないのでしょうか?
人は分業するという選択をした
まず仕事のあり方についてです。
18世紀のイギリスの自由主義経済学者アダム・スミスが、『国富論』の第一編において分業を論じている。それ以降、人は分業システムを理論的に定式化した。そして人は、信頼と責任をベースに仕事をすることを始めたのです。
分業が確立される前までは、一人で自分のためにでも良かったのかもしれません。しかし、分業を選んだ以上、自分のことしか考えていない人は、そのコミュニティから弾かれる事になります。これを現在のビジネスに置き換えてみよう。
例えば、分業していると多くの人が一つのプロジェクトに携わります。よって仕事を依頼しなければならない。また、仕事を請けなければならない。その中で「自分の成長を考えている人」と「相手への貢献を考えている人」のどちらに仕事を任せたいだろうか。恐らく後者であろう。社内然り、顧客然りである。結局、自分の成長を強く望んだとしても、自分の成長に繋がるような仕事を与えてもらえないのです。
これが、成長のジレンマである。
良い仕事をする人に良い仕事が回ってくる
さらに自分の成長を望む人間は得てして競争を好みます。なぜなら、いかに成長するチャンスを得るか、が目的になってしまうからです。
しかし、相手の貢献を望む人間は競争を好みません。なぜなら、競争をせずとも貢献はいくらでもできるからです。目的が「奪う」ではなく「与える」ということなのです。
さらに、競争心がモチベーションとなって行動する人は、それ以外の人、たとえば克己心などをモチベーションにする人に比べ、いい結果が残せないという研究結果があります。
たとえば七歳から十一歳の女の子を集めてふたつのグループに分け、それぞれにコラージュを作ってもらいます。一方のグループにはこれは競争であると言い、もう一方のグループには何も告げず自由に作らせました。そしてできあがった作品を、プロの芸術家たちに評価してもらいます。 その結果、競争した子どもたちの作品のほうが単純で、自由な発想に欠け、「条件を与えられなかったグループよりも、驚くほど創造性が低い」ことがわかったというのです。
競争はまた、仕事の質も低下させます。テキサス大学のロバート・ヘルムライク教授は、自然科学の分野で博士号を持つ人百人以上の著作を調べました。その結果、専門分野への興味や自分で決めた目標を重んじる研究者のほうが、競争を重んじる研究者よりも、質の高い仕事が多いということがわかったという。
ヘルムライクによると、航空機のパイロット、予約代行業などそのほか九つの職業でも、同じパターンが見られたとのことです。
良い仕事が出来なければ、次に良い仕事は与えられない。これも成長のジレンマです。
企業は組織に貢献できる人を求めている
話を就職活動に戻しましょう。
面接やエントリーシートを見ていてよく出てくる発言が以下の内容です。
「御社ならキャリアを詰めると思ったからです。」
「御社であれば裁量権があり、すぐに成長できると思ったからです。」
「御社の環境なら自分の力が発揮できると思ったからです」
「御社でならMBAが取れると思ったからです。」
改めて言います。こういったニュアンスの発言や質問の類はNGである。
採用担当官は間違いなく、貢献の意識を理解できていない人より理解できる人を採用します。いかに向上心や成長意欲が強く成長した結果その会社に貢献できるとしてもである。
ある程度優秀な人材であれば、そもそも向上心や成長意欲があって当たり前だと我々は考えています。中には優秀さに甘えている人もいますが。
よって、自己の成長意欲をアピールしている人はただのエゴイストにしか見えません。「自分が成長した結果、貢献する」であっても、そもそも自分の成長が目的になっている人は、結局エゴイストとみなされます。結果、成長もできなければ、チームワークも乱すとみなされても仕方が無いのです。これでは、採用したくてもできません。
本来あるべき姿は、チームでビジネスをする以上、自己の成長意欲といった利己主義ではなく、企業への貢献といった利他主義をアピールしなければならないということです。
よって面接やエントリーシートで書くべき事は以下のようになります。
「私の力を使って、御社のメンバーの成長に貢献したいと思ったからです。」
「私の今までの経験で、御社の利益創造に貢献したいからです。」
「より一層学習し、これから入ってくる社員へのナレッジを蓄積します。」
といったことが、企業が求めていることです。これを表面上で共感するのではなく、理解し、実践できるようになることが重要なのです。
最後に
社会人になって学生の頃よりもお会いする社会人の方が絶対的に増えたことも原因かもしれませんが、真のプロフェッショナルなビジネスパーソンと呼ばれる人とお会いするようになりました。そこで気付いたこと、それは真なるビジネスパーソンは、自分の成長に着目はしていませんでした。他者への貢献に着目し、結果成長していたのです。
成長が目的となる人には、周りが成長の機会を与えない可能性があります。そして、成長の機会を自ら逃すことになります。「成長したいのに成長できない」これが『成長のジレンマ』なのです。
※なぜ仕事をするのか -自己成長がすべてではない-
これは勝手に命名させてもらいました。多くの就活生・社会人が陥いるであろう罠です。
本当に成長する人は周りに貢献し、周りの助けを得ることができる人
まず、僕が内定者だった頃の当社の社長との会話を紹介したいと思います。
「自分の成長を考えている人と他人への貢献を考えている人、どっちが成長すると思う?」
今考えると恥ずかしいのですが、こう答えました。
「自分の成長のことを考えている人だと思います。」
理由は簡単でした。なぜなら就職活動で出会った社会人は、得てして自分に対する成長意欲が非常に高かったからです。私の答えに対して、社長はこう教えてくれました。
「それは違う。恐らく、どちらの人も速度は違えど、成長するはずです。しかし、本当に成長する人は周りに貢献し、周りの助けを得ることができる人です。」
当時「なるほど。確かに。」と納得したことを覚えています。しかし、実際にこの言葉の意味を理解することになるのは、採用担当を始めて半年くらい経った頃でした。その言葉の意味について書いていこうと思います。
成長意欲をアピールする就活生
よく就活生の面接をしていると、「御社で成長できると思ったからです。」「御社でなら新しいビジネスに取り組めるチャンスがあると思ったからです。」という学生が後を絶たない。恐らく「成長意欲があります」ということをアピールしたいのでしょう。
確かに成長意欲が無い人よりは、成長意欲があった方が絶対的に良い。しかし、上記の発言をする人は基本的にNGです。
なぜ成長意欲をアピールするのはNGなのでしょうか?そして、なぜ成長したい人ほど成長できないのでしょうか?
人は分業するという選択をした
まず仕事のあり方についてです。
18世紀のイギリスの自由主義経済学者アダム・スミスが、『国富論』の第一編において分業を論じている。それ以降、人は分業システムを理論的に定式化した。そして人は、信頼と責任をベースに仕事をすることを始めたのです。
分業が確立される前までは、一人で自分のためにでも良かったのかもしれません。しかし、分業を選んだ以上、自分のことしか考えていない人は、そのコミュニティから弾かれる事になります。これを現在のビジネスに置き換えてみよう。
例えば、分業していると多くの人が一つのプロジェクトに携わります。よって仕事を依頼しなければならない。また、仕事を請けなければならない。その中で「自分の成長を考えている人」と「相手への貢献を考えている人」のどちらに仕事を任せたいだろうか。恐らく後者であろう。社内然り、顧客然りである。結局、自分の成長を強く望んだとしても、自分の成長に繋がるような仕事を与えてもらえないのです。
これが、成長のジレンマである。
良い仕事をする人に良い仕事が回ってくる
さらに自分の成長を望む人間は得てして競争を好みます。なぜなら、いかに成長するチャンスを得るか、が目的になってしまうからです。
しかし、相手の貢献を望む人間は競争を好みません。なぜなら、競争をせずとも貢献はいくらでもできるからです。目的が「奪う」ではなく「与える」ということなのです。
さらに、競争心がモチベーションとなって行動する人は、それ以外の人、たとえば克己心などをモチベーションにする人に比べ、いい結果が残せないという研究結果があります。
たとえば七歳から十一歳の女の子を集めてふたつのグループに分け、それぞれにコラージュを作ってもらいます。一方のグループにはこれは競争であると言い、もう一方のグループには何も告げず自由に作らせました。そしてできあがった作品を、プロの芸術家たちに評価してもらいます。 その結果、競争した子どもたちの作品のほうが単純で、自由な発想に欠け、「条件を与えられなかったグループよりも、驚くほど創造性が低い」ことがわかったというのです。
競争はまた、仕事の質も低下させます。テキサス大学のロバート・ヘルムライク教授は、自然科学の分野で博士号を持つ人百人以上の著作を調べました。その結果、専門分野への興味や自分で決めた目標を重んじる研究者のほうが、競争を重んじる研究者よりも、質の高い仕事が多いということがわかったという。
ヘルムライクによると、航空機のパイロット、予約代行業などそのほか九つの職業でも、同じパターンが見られたとのことです。
良い仕事が出来なければ、次に良い仕事は与えられない。これも成長のジレンマです。
企業は組織に貢献できる人を求めている
話を就職活動に戻しましょう。
面接やエントリーシートを見ていてよく出てくる発言が以下の内容です。
「御社ならキャリアを詰めると思ったからです。」
「御社であれば裁量権があり、すぐに成長できると思ったからです。」
「御社の環境なら自分の力が発揮できると思ったからです」
「御社でならMBAが取れると思ったからです。」
改めて言います。こういったニュアンスの発言や質問の類はNGである。
採用担当官は間違いなく、貢献の意識を理解できていない人より理解できる人を採用します。いかに向上心や成長意欲が強く成長した結果その会社に貢献できるとしてもである。
ある程度優秀な人材であれば、そもそも向上心や成長意欲があって当たり前だと我々は考えています。中には優秀さに甘えている人もいますが。
よって、自己の成長意欲をアピールしている人はただのエゴイストにしか見えません。「自分が成長した結果、貢献する」であっても、そもそも自分の成長が目的になっている人は、結局エゴイストとみなされます。結果、成長もできなければ、チームワークも乱すとみなされても仕方が無いのです。これでは、採用したくてもできません。
本来あるべき姿は、チームでビジネスをする以上、自己の成長意欲といった利己主義ではなく、企業への貢献といった利他主義をアピールしなければならないということです。
よって面接やエントリーシートで書くべき事は以下のようになります。
「私の力を使って、御社のメンバーの成長に貢献したいと思ったからです。」
「私の今までの経験で、御社の利益創造に貢献したいからです。」
「より一層学習し、これから入ってくる社員へのナレッジを蓄積します。」
といったことが、企業が求めていることです。これを表面上で共感するのではなく、理解し、実践できるようになることが重要なのです。
最後に
社会人になって学生の頃よりもお会いする社会人の方が絶対的に増えたことも原因かもしれませんが、真のプロフェッショナルなビジネスパーソンと呼ばれる人とお会いするようになりました。そこで気付いたこと、それは真なるビジネスパーソンは、自分の成長に着目はしていませんでした。他者への貢献に着目し、結果成長していたのです。
成長が目的となる人には、周りが成長の機会を与えない可能性があります。そして、成長の機会を自ら逃すことになります。「成長したいのに成長できない」これが『成長のジレンマ』なのです。
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真のビジネスパーソンは、
そんじょそこらの他人に腹の内を見せません。
他者への貢献、社会への貢献を謳ってみせるのを見て
「成長」したのだと受け取ったとすれば、
それは筆者が傲慢であり騙され易いということでは。
成長コンプレックスの名残ですかね。
会社側の情報発信に、問題があると思います。
会社側は成長志向の人材を求めている。という情報に騙され、就活生は自分を成長志向に見せようと、成長志向に傾けた発言をしているからです。
この先にあなたに面接される就活生のために、言わせてください。
『その人の成長したい発言を聞いたとき、本当にその人が、そう考えているのか確かめてあげて欲しいと思います。』
コネとか権力のある人が成長するようになっているが正解