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訪ねたい:旅・まち・発見 番外 「ものがたり観光シンポ」

 ◇お宝を掘ってファイトを我が街に--人づくり進め楽しく感動を

 「ものがたり観光シンポジウム」(大阪千代田短大物語観光情報研究センター主催、観光庁・毎日新聞大阪本社など後援)が6月27日、大阪府河内長野市の市立文化会館で開かれた。連載「旅・まち・発見」の旅をプロデュースしてもらっている「ものがたり観光行動学会」(設立準備中)のメンバーが参加して、言葉だけではようわからん「ものがたり観光」の意味や可能性について話し合った。その模様を報告する。【松井宏員】

 ◇「わからん」から出発

 まず、シンポの仕掛け人で、「ものがたり観光」の言い出しっぺ、李有師・大阪千代田短大准教授が登場。司会者に「ものがたり観光とは?」と問われ、「ようわかりません」。会場を埋めた約400人の聴衆をコケさせる。

 ◇誇りや愛着が原点

 続いて石森秀三・北海道大観光学高等研究センター長が基調講演。「観光を核にしたニッポンの地域再生」をテーマに熱弁を振るった。地域活性化の一策が交流人口を増やすこと、つまり観光にあると指摘。観光とは「地域に対する誇りや愛着が原点」と定義し、地域を元気付けるものがたり作りの必要性を説いた。学会に対しては「わけわからんのがいいですね」と笑わせ、「市民が幸せを見いだせるものがたりを」と結び、会場を一気に引き込んだ。

    ◇    ◇

 芝田啓治・河内長野市長、大黒伊勢夫・観光庁観光地域振興部長の報告に続いて、いよいよ学会メンバーによるパネルディスカッション。私もパネリストとして登壇し、ものがたり観光を実践している「旅・まち・発見」の連載についてひとくさり。それはともかく、「皆さんが考えるものがたり観光とは?」と問われ--。

 ◇旅自体ドラマ生む

 高田公理・佛教大教授「旅に出ると、けったいな風景あったよとか、みやげ話をする。ちょっとかっこええ自慢話が俳句や紀行文。旅それ自体がものがたりを生み出す」

 ◇天ぷらの衣うまく

 加藤晃規・関西学院大教授「その地ならではの環境条件を使って、いかに特色あるまちづくりをするか。おいしいものを食べたり、美しいものを見たり。ものに天ぷらの衣を付けたようなもの」

 ◇動く好奇心広めて

 白幡洋三郎・国際日本文化研究センター教授「旅というのは動く好奇心。各人が、ここがいいなあ、こんなに面白かった、と語れるものを広めていったら」

 それぞれに定義、できたような……。旅人それぞれでものがたりは異なる。自分のものがたりを見つければいい、ということか。

 加藤さんがイタリア・ベネチアについて語る。「都市の色を聞かれて、地元の人は『金色』という。水面に反射する太陽の光が、建物の壁にキラキラ輝く。確かに金色なんです。そんな発見に至る喜びを見続けてきた人たちの積み重ね。天ぷらの衣がおいしくできあがっている」

 シンガポールのマーライオン、コペンハーゲンの人魚姫、ブリュッセルの小便小僧を「世界三大バカバカしいテーマ」とした白幡さん。「このものがたりはどっから生まれてきたんやろ」と逆説的に語りながら、「でも、小便小僧の角にいい喫茶店があった。私だけのものがたり」。街の発見だ。

 高田さんは「土地の魅力を見付けるのは、よそ者、若者、大バカ者」と歯に衣(きぬ)着せぬ表現で会場を沸かせる。日常や常識にとらわれない視点が必要だというわけだ。

 最後に提言。加藤さんは「ものがたり観光は多様なものがたりが許され、多文化社会の性格を持っている。人が主役だから、地域のリーダーとか、人づくりが求められる」。高田さんは「わが体が楽しい、おいしい、をきちんと評価しよう」。

 白幡さんが「観光というと、名所、観光地に行ってみる。そんな慌ただしいにぎわいを作るよりは、品のいい停滞を。来る人が深い感動、体験ができるようなあり方を考えていくのが大事」と締めくくった。

 地方にとって、観光の重要性は増している。観光コースにのっていないお宝を掘り起こして新たなものがたりを語り、地域を元気付けることにつながれば--。それが学会の役割であり、この連載が一助に、と思った次第。

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 「ものがたり観光行動学会」HP=http://narrative‐tourism.org/

毎日新聞 2009年7月27日 大阪夕刊

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